Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    pypy_ym

    @pypy_ym

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 5

    pypy_ym

    ☆quiet follow

    乱読家百くん

    百が作詞を担当することが増え、Re:valeの楽曲の幅が更に大きくなった。その裏で行われている百の、芸能界に入ってから一度も怠ったことがないと言っても過言ではない努力は衆目には晒されない。努力することが当たり前だと考える百は努力そのものを必要以上に持ち上げられると、照れや恥じらいを覚える。千もそういった意味では似たようなタイプだ。常にセンスを磨くことを怠らず、向上心を持ち続ける。Re:valeの二人は表現に対して真摯でストイックであり、それが高じて口論に発展することも少なくない。
     事務所の応接室には時間を潰す百が陣取っている。常に愛嬌たっぷりの彼ではあるが、今の百に近づける人間は千と凛人。後は例外として凛太郎だろう。
     話は簡単だ。誰が真剣な顔をして電子書籍をめくっている人間に気安く近づこうと思うのか。
     作詞を担当しはじめてからの百は大なり小なり、ジャンル問わず表現作品に触れることを日課にしている。映画にドラマ、アニメまで映像作品から、ロックに演歌、童謡まで音楽作品。不朽の名作から話題作まで文学。そのジャンルの問わなさは千が呆れたほどだ。百の努力家な一面をよく知る彼をもってしても、片っ端から、という言葉がぴったり当てはまるようになった百のインプットを極端と言わざるを得なかった。
     千が表現の先駆者として口にしたのは、
    「インプットもいいけど、アウトプットしないと技術は磨かれない」
     ということだ。
     百の鞄には常に測量現場で使われる頑丈なノートが入っている。物を乱雑に詰め込む百の鞄の中で生き残るため、そして片手で持っても書きやすいという利便性から選ばれたノートだ。中身はもはや百にしかわからない言語が並べられている。百の心に残った台詞や一文。そこから生まれた百の言葉。衝動のまま書き連ねられた文字はいずれ歌詞として花を咲かせるのか、それとも種のまま朽ちていくのか、それは百のみが知る。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤❤❤💯👏👏👏👏👏👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    pypy_ym

    MOURNING多分完成させない性癖のやつ
    ユキモモ
    「ただいま」
     久方ぶりの外出だった。
     普段はメールや通話アプリを通してのやり取りで仕事を進める千斗だが、今回の仕事は前々から千斗が尊敬しているアーティスト直々の依頼ということで、いつもは面倒極まりない会議にも積極的に顔を出した。向こう側も千斗を気に入ってくれ、音楽の話でもどうだ、と食事に誘われたのが今日のこと。同居人には遅くなる、と連絡を入れ、酒も食事も放って音楽の話に花を咲かせた。
     帰宅した千斗を冷たい部屋が迎え入れる。
     時計が日付変更線を跨ごうとしているこの時間、一般的な会社員である同居人が帰宅していないとは考えにくく、また、彼の性格上、このくらいの時間ならば起きて千斗の帰りを待っているだろうに、存在するのは暗く冷ややかな部屋。千斗は大股で部屋に入り、同居人の彼を探す。
     彼はリビングのソファに横になっていた。
     常は明るく朗らかな表情はすとんと抜け落ち、瞬きを繰り替えす瞳には生気が見られない。帰宅したその足で倒れ込んだのか、彼はスーツ姿のままだった。
    「モモ」
     屈み込み、彼の視線の上に自分の姿を置いて名前を呼ぶ。瞳がくるりと動いた。モモーー百瀬は手を重たげに上げる。その 1735

    pypy_ym

    MOURNING夫婦漫才のはじまりについて考えてみたやつ。「前から聞きたかったんだけど、君たちのあの路線、どうやって決まったんだ?」
     心の底から疑問だといわんばかりの万理の声が、千と百の鼓膜を刺激する。あの路線、というとまあ間違いなく夫婦漫才ネタのことだろう。万理とやっていた時の千は間違ってもあんなネタに乗る人間ではなかった。それが百と組みはじめて、イケメンだとかダーリンだとか呼ばれて微笑むようになっている。
     千は意地悪くにやにや笑って万理を見据える。
    「万、僕たちが出てるテレビは全部見てたって豪語してなかったっけ?」
    「気付けばああなってたろ。裏話を聞きたいんだよ」
    「へぇ」
     ちらりと百に視線をやった千は、「あれって結局どっちなの?」と百に確認を取るような言葉を発し、百はうーん、と腕を組んで悩みはじめた。
    「原因はオレで、発破をかけたのがおかりん、って感じ? 最終的にゴーサインだしたのもおかりんだったじゃん。ユキが嫌ならやめるつもりだったけど、ユキは乗ってきたし」
    「僕とモモとおかりんの総意だよね」
     おかりん、Re:valeのマネージャーである岡崎凛人の名前が出て万理は目を瞬かせる。小鳥遊事務所のIDOLiSH7のマネージャー、小鳥 3088

    pypy_ym

    MOURNINGユキモモの見た目をこれでもかと描写したかったアイドルにとって見目というのも才能の一種である。
     生まれ持った容姿や体格、そういった努力ではどうしようもないものがオーディションやスカウトで重視され、どれだけ手を伸ばしてもアイドルという夢を掴めない人間はごまんと居るのだ。
     そういった点で、目の前で優雅にワインを口にする千という男は才能に恵まれている。
     メンバーの天から、見た目で得をしていると言われる楽をもってしても、彼が持つ天性の美貌には敵わないだろう。
     切れ長の目に宿ったブルートパーズの瞳は存外に表情豊かで、歌唱、ダンス、演技において華を持たせる役割をしている。左目の下にある泣きぼくろは彼の端麗な顔立ちに色気を添え、高い鼻も、薄い唇も、黄金比としか表現できない配置で千の顔を作っていた。
     しかし、一度口を開けば笑いのツボは浅くて妙な場所にあるし、言動はやや社会性と協調性に欠ける。同じ空気を共有している大和が哀れな犠牲者になる場面を、楽は何度も見てきた。
     立ち上がればモデルのような姿勢の良さと、美貌や長髪に隠れて分かりづらい男らしい体格。外国人さながらの長い脚。しかし、千がその容姿を褒められて喜ぶのはたった一人に限定されてい 2504

    recommended works