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    pypy_ym

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    pypy_ym

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    両性具有エー様書きたいだけなのに……

     リベリオンのアジトは地上の反抗組織、という物騒な肩書に反して存外、からりとした活気に満ちている。それはリーダーであるリーベルの思想やカリスマ性によるものが強いとロイエは見ているが、それと別にもう一つ。半年前新たなメンバーがそれなりの数入ったことも活気に一役買っているだろう。乾いた空気は好ましいがそれが火薬を呼び爆発しないよう見張らねば、板についた中間管理職の思考回路に自嘲して目当ての扉の前に立った。談話室や廊下の騒がしさから切り離されたように静かなのは、周囲は中で眠る人物の人柄を示していると言えなくもない。ノックを三回、やや乱暴に。返事はない。ため息を吐いて寝室に入る。分厚いノートとペンが置かれただけのシンプルな机とベッドのみの簡素な部屋で、固く狭い布団に潜り込んで寝ている人の目の下には隈が刻まれている。昨夜も、遅くまで眠れなかったのだろう。
    「トワ、朝だ。今日は君も参加する会議がある。早く起きて」
     もぞ、と布団が動くものの、呼吸のリズムに乱れはなく、未だ彼は眠りに包まれている。ロイエは耳をすませ、廊下に人の流れがないかを探る。万が一にも、これから呼ぶ名を知られないように。廊下に人の気配はなく、ロイエは足音を立てて彼の眠るベッドの横に立ち、出来るだけ彼の耳の近くで、低く、小さく、その名を呼んだ。
    「エーテルネーア、朝ですよ」
     薄っぺらな布団を一度頭まで被り、じりじりと布団を下げながら密に生え揃った睫毛の下からルビーのような瞳が顔を出す。
    「おはよう。会議に遅れるとクウラくんに怒られちゃうよ?」
    「……おはようこざいます」
     生来の癖毛を寝癖でさらにひどくして、かつてのナーヴ教会トップ、エーテルネーアはぼんやりと起床した。

     黒縄夜行、ウィダの襲撃を狼煙とした一連の騒動でアークのシステムは一部崩壊。ロイエは上層部に見限りをつけ、リベリオンに加勢し、ロイエについてきたユニティオーダーの隊員とともに地上に降りた。
     アルムによる解呪の説得は成されなかった。しかし、解呪そのものが成功しなかったわけではない。この世で唯一解呪の方法を知るエーテルネーアが生きていたからだ。
     ロイエは上層部に背く前にミゼリコルドとエーテルネーアを見張る意味で、建前は護衛と称して信頼の置けるユニティオーダー隊員を一人向かわせた。彼はエーテルネーアの頼みにより席を外したが、エーテルネーアとミゼリコルドの会話を盗み聞き、アークの真実、そしてエーテルネーアに解呪の意思があることを知った。
     そしてミゼリコルドにエーテルネーアが刺された際、違和感を察知するなり部屋に飛び入り、流れ出るエーテルネーアの血液を的確な処置でもって流れを緩やかにしたのだ。その勇敢な隊員にとっての不運は、彼がナーヴ教会の信者として聖印を身に刻んでいたことだ。激昂し彼を刺し殺そうとするミゼリコルドに反撃する術もなく、最期の瞬間までエーテルネーアの命を繋ぎ止め、かばい続けた。アルムらが部屋に踏み入った際に見たのは、体内の血液を全て出し切ったかのようなユニティオーダー隊員と、失血により気を失ったエーテルネーアが折り重なり床に倒れ伏していた場面であり、ミゼリコルドがエーテルネーアにとどめの一撃を入れようとしていた場面でもあった。
     エーテルネーアとも面識があり、手当の心得があるクヴァルがエーテルネーアと、育て親にも等しい存在が腹から血を流していることに混乱するアルムを宥め、リーベルがミゼリコルドの相手をする。しかしその拮抗も長くは続かず、リーベルの身体を蝕んだ呪詛によりリーベルは次第に劣勢となった。加勢せんとしたクヴァルを薄く意識を取り戻したエーテルネーアが止め、エーテルネーアの意識が戻ったことに気を取られたミゼリコルドの横っ面をアルムが殴ったことにより、劣勢を悟ったミゼリコルドは一時退散した。
     その後、リーベルら一行とロイエら一行が合流したわけだが、そこから地上に降りるまでに筆舌に尽くしがたい面倒が降り注いだ。反逆した天子、解呪法を知るエーテルネーアを抱えるこちらを全力で潰そうとするミゼリコルドの手段は執拗で陰湿だった。手段を選ばないとはこういうことか、と歴戦の戦士であるロイエをもってしても舌を巻かざるを得ない戦いであった。
     しかし、誰一人欠けることなく地上に降り立ち、今はリベリオンのメンバーとして働いている。
     その際に、エーテルネーアは偽名を名乗ることになった。
     ロイエが連れてきたユニティオーダーの面々はもちろん、彼の名は地上でもナーヴ教会のトップとして知れ渡っている。
     地上の民には長く己等を苦しめるアーク、その諸悪の根源として。アークの民には長く己等を騙し続けた、その諸悪の根源として、エーテルネーアは恨まれ、命を狙われるのに十分すぎる理由を持っていた。
     表向きは教会が襲撃された際に命を拾ったロイエの知り合いで学者の、『トワ』ということになっている。トワがエーテルネーアであることを知るのはリベリオンリーダー、リーベル。参謀、クウラ。天子のお付きでありエーテルネーアとも面識のあったクヴァル。天子であったアルムに、中間管理職としてエーテルネーアの素顔を知るロイエ。たったの五人だ。
     エーテルネーアことトワの世間知らずっぷりはアルムと行動を共にしたリーベルやクウラですら呆れるほどであり、アルムという前列があったからこそ、彼の無知や無茶を学者、という職業に無理矢理結び付けて周囲の疑問を解決している。ナーヴ教会トップの顔しか知らなかったクヴァルにロイエ、そして親代わりとして完璧な顔を見せていたエーテルネーアの予想外の天然さに驚くアルムらはそれに乗っかるばかりだ。それも、半年にもなれば慣れたもので今ではトワという人間は一風変わった学者として定着している。

    「ロイエさん、トワさん! おはようございます!」
    「やぁ、おはよう」
    「……おは……ようござ……い……ます……」
     エーテルネーアを伴ってリベリオンのアジトの会議室へ向かう最中、元ユニティオーダーの若いメンバーに挨拶を受ける。自分を信じて着いてきてくれた彼らに、恨まれる覚悟すら決めたロイエではあったが存外彼らは地上に馴染み、ライデンなどはユニティオーダーであったころより生き生きしていると囁かれるほどだ。半分以上眠ってふらふらと動くエーテルネーアの手を引いているロイエに彼はジェスチャーでエーテルネーアの寝癖が酷いことを伝えてきた。ロイエは一つ頷き、眼鏡と角を手で作る。彼はカラカラ笑って「急いでくださいよ!」と去っていった。
    「ほら、トワ。クウラくん待ってるから。起きて」
    「起きて……ます……ぅぐ……」
    「いや、寝てるよねぇ!?」
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    pypy_ym

    MOURNING多分完成させない性癖のやつ
    ユキモモ
    「ただいま」
     久方ぶりの外出だった。
     普段はメールや通話アプリを通してのやり取りで仕事を進める千斗だが、今回の仕事は前々から千斗が尊敬しているアーティスト直々の依頼ということで、いつもは面倒極まりない会議にも積極的に顔を出した。向こう側も千斗を気に入ってくれ、音楽の話でもどうだ、と食事に誘われたのが今日のこと。同居人には遅くなる、と連絡を入れ、酒も食事も放って音楽の話に花を咲かせた。
     帰宅した千斗を冷たい部屋が迎え入れる。
     時計が日付変更線を跨ごうとしているこの時間、一般的な会社員である同居人が帰宅していないとは考えにくく、また、彼の性格上、このくらいの時間ならば起きて千斗の帰りを待っているだろうに、存在するのは暗く冷ややかな部屋。千斗は大股で部屋に入り、同居人の彼を探す。
     彼はリビングのソファに横になっていた。
     常は明るく朗らかな表情はすとんと抜け落ち、瞬きを繰り替えす瞳には生気が見られない。帰宅したその足で倒れ込んだのか、彼はスーツ姿のままだった。
    「モモ」
     屈み込み、彼の視線の上に自分の姿を置いて名前を呼ぶ。瞳がくるりと動いた。モモーー百瀬は手を重たげに上げる。その 1735

    pypy_ym

    MOURNING夫婦漫才のはじまりについて考えてみたやつ。「前から聞きたかったんだけど、君たちのあの路線、どうやって決まったんだ?」
     心の底から疑問だといわんばかりの万理の声が、千と百の鼓膜を刺激する。あの路線、というとまあ間違いなく夫婦漫才ネタのことだろう。万理とやっていた時の千は間違ってもあんなネタに乗る人間ではなかった。それが百と組みはじめて、イケメンだとかダーリンだとか呼ばれて微笑むようになっている。
     千は意地悪くにやにや笑って万理を見据える。
    「万、僕たちが出てるテレビは全部見てたって豪語してなかったっけ?」
    「気付けばああなってたろ。裏話を聞きたいんだよ」
    「へぇ」
     ちらりと百に視線をやった千は、「あれって結局どっちなの?」と百に確認を取るような言葉を発し、百はうーん、と腕を組んで悩みはじめた。
    「原因はオレで、発破をかけたのがおかりん、って感じ? 最終的にゴーサインだしたのもおかりんだったじゃん。ユキが嫌ならやめるつもりだったけど、ユキは乗ってきたし」
    「僕とモモとおかりんの総意だよね」
     おかりん、Re:valeのマネージャーである岡崎凛人の名前が出て万理は目を瞬かせる。小鳥遊事務所のIDOLiSH7のマネージャー、小鳥 3088

    pypy_ym

    MOURNINGユキモモの見た目をこれでもかと描写したかったアイドルにとって見目というのも才能の一種である。
     生まれ持った容姿や体格、そういった努力ではどうしようもないものがオーディションやスカウトで重視され、どれだけ手を伸ばしてもアイドルという夢を掴めない人間はごまんと居るのだ。
     そういった点で、目の前で優雅にワインを口にする千という男は才能に恵まれている。
     メンバーの天から、見た目で得をしていると言われる楽をもってしても、彼が持つ天性の美貌には敵わないだろう。
     切れ長の目に宿ったブルートパーズの瞳は存外に表情豊かで、歌唱、ダンス、演技において華を持たせる役割をしている。左目の下にある泣きぼくろは彼の端麗な顔立ちに色気を添え、高い鼻も、薄い唇も、黄金比としか表現できない配置で千の顔を作っていた。
     しかし、一度口を開けば笑いのツボは浅くて妙な場所にあるし、言動はやや社会性と協調性に欠ける。同じ空気を共有している大和が哀れな犠牲者になる場面を、楽は何度も見てきた。
     立ち上がればモデルのような姿勢の良さと、美貌や長髪に隠れて分かりづらい男らしい体格。外国人さながらの長い脚。しかし、千がその容姿を褒められて喜ぶのはたった一人に限定されてい 2504

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