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    aoritoiki

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    aoritoiki

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    呟いてた箱庭冒頭だけ書いたので中途半端にぽいぽいする。ここまでだけだと柴チヒ同棲話っぽい。

    【柴チヒ】箱庭途中経過そこはひだまりのような場所だった。
    父と二人で住むには十分すぎる広さの家と、父の仕事場である工房。深い森に囲まれ、そこだけがポッカリ空いたように広がる空間に、それだけがあった。時折物資を届けに父の友人だという柴さんや薊さんが来訪するくらいで、あとは父と二人、慎ましやかに暮らしていた。
    森の外には出たことがなかった。外は危ないから、あまり家から離れないよう繰り返し言いつけられていたから。興味がない訳ではなかったが。まだ幼かった頃、兎を見かけて追いかけているうちに、森で迷子になりかけたことがあった。すぐに父や柴さん達が探しに来て、自分を見つけてくれたが、皆泣きそうな顔をしていた。父は自分を抱きしめながら泣いていた。またそんな風に皆を困らせたり悲しませたりするくらいなら、どこにも行けなくても良いと思ったのだ。
    ここが自分の世界の全て。それでも良いと思った。
    「父さん」
    外に何があるか知らなくても。
    「なんだ、チヒロ」
    ここには、笑い返してくれる父がいるから。それで十分だった。十分だと、思っていた。
    ある日、父がいなくなった。
    朝起きたら、どこにも姿がなかった。今までこんなことはなかった。父は時折用事で外の世界に出掛けることはあったけれど、必ず事前に自分に伝えてくれていたから、こんな風に突然いなくなることはなかった。
    家中探したけれど、どこにも見当たらなかった。途方に暮れていたら、柴さんが現れた。
    「柴さん、父さんを知りませんか?朝からずっと、どこにもいなくて」
    「チヒロ君」
    柴さんは膝をついて目線を合わせ、肩を掴んだ。
    「君のお父さんはな、今急な仕事で、遠くに行っているんや。だから、しばらく会えない」
    その時の柴さんにはいつもの賑やかさはなく、やけに静かな声で言った。
    「……急な、仕事?」
    目を瞬かせると、柴さんは頷いてみせる。
    「ああ、やけど、お父さんがいない代わりに……いや、代わりになんかなれんけど、チヒロ君が一人にならんように、俺が傍におるから」
    「……柴さんが?」
    「そうや、俺が、チヒロ君の傍におるから……一緒に、ここにおってくれるか?」
    語りかける声は静かなままなのに、肩を掴む力は少し強くて、その目は揺れているように見えた。まるで泣き出す寸前の、迷子になった幼いチヒロのように。だから。
    「……分かりました、俺はここにいます」
    困らせたくなかったから、悲しませたくなかったから、そう答えた。
    「チヒロ君」
    「俺はここで、柴さんと一緒に父を待ちます」
    そうしたら、言いつけを守ってここにいたら、いつか父が帰ってくるのではないかと、そう信じて。
    「……ごめん、ごめんなぁ……」
    自分を抱きしめながら謝る柴の違和感に、見ないふりをして目を閉じた。
    それから三年の月日が経っても、父は帰ってこなかった。



    森の中にある家には、二人の人間が住んでいる。
    三年前までは、父親と子供の二人だった。今そこにいるのは、残った子供と、その父親の友人である男。
    「チヒロ君、これ今日の収穫な」
    柴が手に持っていた魚(び)籠(く)を渡すと、チヒロは目を瞬かせる。
    「ありがとうございます……すごい量ですね」
    「ちょうど群れが通ってな。一気には食えんやろから、干物にしよか」
    そう言って柴が笑う。
    「そうですね」
    その顔を見て、チヒロも微笑む。
    「今日の夕飯は、煮魚と焼き魚、どちらが良いですか?」
    「んー、チヒロ君の料理は何でも美味いからどっちも捨てがたいけど、採れたてならやっぱり焼き魚かな。煮付けは今からだと時間かかるだろうし」
    「もう腹が減って減って」と、おどけた仕草で柴が言うと、チヒロがクスクスと笑った。
    「分かりました。もう副菜は作ってあったから、そんなに時間はかからないですよ。今支度しますね」
    「結構量もあるし、魚捌くの大変やろ。俺も手伝うわ」
    「ありがとうございます」
    台所に二人並んで、魚籠にたんと詰め込まれた魚を処理していく。
    「チヒロ君の包丁捌き、本当に上手で綺麗やわぁ」
    チヒロの手元を見て柴が言う。
    「そうですか?」
    チヒロは首を傾げた。他の人が料理をする姿といえば、父親のものが思い浮かんだが、あれは論外だろうし比較に入れるべきではないだろう。柴が作ってくれることもあったが、柴の場合はチヒロが気が付くと料理を作り終えた状態で出してきていたから、あまり包丁で具材を切っているところなどは見たことがなかった。そこに思い至り、チヒロは改めてまじまじと柴の作業を見つめる。
    「そんな見んといて、照れるわぁ」
    おどけた口調で柴が言う。
    「柴さんの包丁捌きも手際良くて上手ですよ……多分」
    「え、そう?……多分?」
    柴が顔を綻ばせ、続いた言葉に首を傾げる。
    「……比較対象が父しかいないので、よく分からなくて」
    チヒロは口を濁しながらも正直に言った。
    「……そうやな、六平と比べたらなぁ……」
    柴は何とも言えない表情をしてから、苦笑いを浮かべた。
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    aoritoiki

    PROGRESSめちゃくちゃ中途半端に終わります。途中なんで誤字脱字あるかも。続きがあるなら多分きっとエロ。エロ書けないです。エロを書く文才誰かください。
    【座チヒ】(仮)夢ああ、これは夢だ。
    あまりに荒唐無稽な、あり得ない、馬鹿げた世界。
    目を薄く開けば、瞼が持ち上げられて震えるのが分かった。夢から覚めたのだと実感する。
    「……」
    身を起こすと、何かが頬を伝って零れていった。目を擦る。
    (……どうして俺は、泣いているんだろうか)
    濡れた指先を見つめ、ぼんやりとチヒロは思った。



    始まりはボランティアのようなものだった。偶然知り合って、事情を知り、彼の家に出向いて家事を手伝うようになった。
    彼は目が不自由で、それでも日常生活に支障はないとのことだったが、そうは言われても気になるものだ。目が見えないというだけで、目が見える人に比べたら情報量は圧倒的に減る。他で補うにしても不便は残るだろう。実際、家を訪れてみたら、細かなところまではなかなか手が行き届かないらしく、中は雑多だった。物の位置が分かるようになっているからそれで良いのだと彼は言ったけれども、これではゴミ屋敷一歩手前だし、物に躓いて転びかねない。放っておけなくて、定期的に彼の家を訪れるようになった。
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