アイ光・雨の中のキスある日の昼下がり、急に雲行きが怪しくなったグリダニアにぽつぽつと雨が降る。
「しまった、雨予報だったのか」
隣国の教皇代理を連れてひそひそ木立を歩いていた冒険者リコは、ずぶ濡れになると慌てて拠点のある場所へと急いだ。
いくら走っても雨は待ってくれず、シャワーのように降る水を全身で被りながら走る。すでに装備はずぶ濡れで、髪もぺったりとまるで風呂上りのようになっていた。
「ひどい雨ね」
「あぁ、大丈夫か?ハンカチくらいしかないが…」
顔から流れる水滴を優しく彼のハンカチが拭き取る。
「ふふ、このくらい慣れてるから大丈夫」
拭いてくれるその優しくて、冷たくて大きな掌を優しく手で包むとピクリと跳ね上がり、動きを止めた。
「アイメリクも、風邪ひいちゃうよ」
「そうだな、君も冷えてしまう」
蒼い瞳を見つめていると、その瞳が近づいて、リコを映す。
アイメリクの大きな胸元に手を置いて見上げると、整った顔が、まつ毛の多い瞼が閉じられて近づく。
ぎゅ、と抱きしめられると同時に唇に温かく柔らかいものが当たる。
濡れた髪をかき分けられ、次は額に唇が寄せられる。
雨の降る音に全ての効果音が掻き消され、2人だけの世界のようだ。
熱を帯びた息を吐いて、もう一度、と今にも消えそうな吐息混じりの声が聞こえ、否応無しに唇が何度も重なった。