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    obrq二次創作置き場
    ノイユヒちゃん

    噛み癖最近気づいたのだがノイルは色んなものをがじがじ噛む癖がある。
    不揃いでたくましい爪、年季のいってそうなペン、果肉入りのジュースを飲むための太いストロー、パフェを食べるためのスプーン、他にもいろいろ。

    「ん?」

    テラス席のテーブル、向かい側に座るノイルが、私を見て小さく笑う。
    マントを雑に椅子にかけてスプーンをくわえて頬杖をついて。とてもお行儀が良いとは言えない姿なのにどこか品の良さがにじみ出ていて、かっこいいなあと私はいつもしみじみと感じ入ってしまう。

    「何だよジロジロ見て。なんか口についてるか?」
    「ううん。ちがくて」

    つん、と指さすと、ノイルはくわえたままのスプーンをひょいと口から取り出した。

    「あ?これ?」
    「うん。ノイルってばなんでもがじがじ噛むんだから」
    「そうかあ?」
    「めっちゃそうだよ」

    爪とかペンだって噛んでるでしょと指摘すると、ノイルは「マジかぁ」と気の抜けた声で言って大きく伸びをした。大型のネコ科動物みたいな仕草だ。

    「手癖が悪い、とか足癖が悪い、とかって言うじゃん」
    「おー」
    「それで言うとノイルって「口癖が悪い」んだよ。お口のくせがわるいの」
    「…………ふうん?」

    ノイルはまた頬杖をついて、ずい、と身を乗り出してきた。自分で言っておきながら、弧を描いたその厚いくちびるから目が離せなくなって、パフェをつつこうとした指先が止まってしまう。

    ――確かにノイルは、色んなものをがじがじ噛む癖がある。

    不揃いでたくましい爪、年季のいってそうなペン、果肉入りのジュースを飲むための太いストロー、パフェを食べるためのスプーン、それから、それから。
    見下ろした自分の小指、その根元にまるで指輪みたいについた、小さな歯型が目に入る。その一瞬で鮮明に思い出す。思い出してしまう。
    熱っぽい瞳、噛む前に宥めるように舐めてくる舌の感触、口内のあたたかさ、ごめんなあ、って、ごめんなんて全然思ってない熱さで囁かれる声。

    「口寂しいとどうしてもなあ。噛みたくなるんだよ」

    我に返る。こちらを意味ありげに見つめているノイルに今の一瞬の悪考が見透かされてはしまいかと、私は地味に恥ずかしくなり、じわじわ静かに赤面してしまった。
    違う違います、こんな明るい昼間から思い出してしまう私がはしたないわけじゃなくって、いつもいつも決まったとこをがじがじ噛むノイルが悪いのであって、というか前から思ってたけどやっぱノイルが時々言う「オマエってほんと食べちゃいたいくらいかわいいって言葉がよく似合うよな」みたいなのってなんかちょっと本気っぽい気がして怖いっていうか、いや今の嘘、ぜんぜん怖くはないの、仮にノイルに食べられるんなら全然いいよ、だって同位同食っていう言葉もあるもんね、でもでも私はノイルにさわられたりさわったりするのが好きだからひとつになるのはいやっていうか、別々の生き物のまんまがいいっていうか、じゃあやっぱりもしノイルが私を食べたがってもいいよって言ってあげられないかも、ごめんね…。

    「ごめんね、ノイル……」
    「オマエ、そんなわかりやすくて大丈夫かよ?心配だわオレ」

    怒涛の言い訳タイム終了。はたから見れば突然拳を握ってぶるぶる燃えだした謎すぎる私を見てノイルはかなりうけていた。
    こんがらがった思考を解き放って、私もふう、とひとつ息を吐き出す。

    「ノイル」
    「ん」
    「私のこと、噛んでもいいけど、食べないでね」

    私はとても真面目にそう言ったのに、ノイルはしばらく無言でスプーンをがじがじした後、パフェにざくりと突き刺して、いたずらっぽく目を細めて「考えとく」と言った。いくら考えても私の言う「食べる」とノイルが思ってる「食べる」の意味って、ぜったいちがうじゃん。
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    MOURNINGobrq二次創作置き場
    カイユヒちゃん
    ねむりカイゼは眠たいときの私をさわるのが大好き。

    「……君は、眠いとふにゃふにゃするんだな」
    「う〜ん………………」
    「起きてる?」
    「おきてる……」
    「本にしおりをはさんでおくぞ。140頁でいいか?」
    「うんうん………………」
    「ふふ、かわいいな。キスしても?」
    「うんうん………………」
    「全然聞いてないな」

    おかしそうな笑い声。わかってる、ちゃんと聞こえてる。どんなときでもカイゼの声だけはちゃんと聞いてるの、私は。もしもあなたのわるい手が寝巻きのすそから侵入してきたら、まずはちょっとだけだめでしょって怒ってみせるけど、私はそもそも頭のてっぺんから足のつまさきまでぜんぶカイゼのなんだからどこをどうさわるかなんてカイゼの自由で、だから怒るなんてありえない。ただの茶番です。これだけの思考がぎゅっとつまった私の「むにゃむにゃ」みたいな呟きを聞いて、カイゼはまたわらった。さっきのおかしそうな響きとはまたちょっと違う、どうしようもなくなってぽろんとこぼれた、みたいな、やさしいのに心臓がぎゅっと縮むような笑い方。ささいなことなのに、特別でもなんでもないふとした瞬間のことなのに、目の前にいる相手のことが不意にどうしようもなく大事に思えて、ずっとここにいてほしくて、ため息を吐くようにわらってしまう、そんな笑い方。古今東西ありとあらゆる人たちはそういう摩訶不思議な感情を「いとおしい」とかって形容したんだろうな。それってただしいんだろうけどさ、でも納得いかない。だってそんな五文字で完璧に言い表せるなら、私こんなにくるしくなってないよ。
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