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    manju_maa

    @manju_maa

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    manju_maa

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    書きたいところをひとまず上げただけのやつ。まだ話は続くと思う。何も思いつかないけど
    「」ないです

    本編獅童編前の療養期間中の話

    ごろうくんシリーズ番外編夢を見る。
    見慣れたダークスーツの後ろ姿が、どれだけ呼んでも、手を伸ばしても、その声が届いてないかのように前だけを見て、そして閉じられたシャッターの向こうに消えていく夢。その越えられない壁を前にして、俺はずっと、立ち尽くすしかできなくて。響いた銃声は、鐘のようにずっと頭の中で反響し続けた。

    だからこそ、たまに寂しそうな顔でこちらを見てくる彼のことが、ずっと気がかりだった。






    ゲホゲホ、という咳き込む声に意識が呼び覚まされる。
    明智のベッドの端に両手を乗せて、それを枕にして突っ伏するような体勢で寝ていたらしい。頭を上げて身体を起こすと、背中に掛かっていたブランケットが床に落ちた。
    これは武見の診療所からここに来るまでに双葉が佐倉の家から「これ使え!」と言って持ってきたものだ。明智の掛け布団の上に掛けたはずだが。

    (起きて、掛けてくれたのか…?)

    そんな明智はこちらに背を向けて横向きの体勢で寝ている。起きたという事は自分の咳がこちらに飛ばないように向きを変えたのかもしれない。
    背中越しで聞こえる呼吸はまだ荒い。顔を覗きこめば辛そうにしている寝顔がそこにあった。
    たたでさえ疲れきっている身体は、高熱による疲労で底に近い体力が尚更削られて、いつまで経っても回復できない。熱が長引く理由はそこにあるのだろう。
    武見の解熱剤を飲んでもここまで長引くというのは相当拗らせている。俺が居なかったらどうなっていたかを考えるとかなり肝が冷えた。

    ………

    先程、目覚めたばかりの明智は俺を見て『あきら』と呼んでいた。
    酷く驚いたような顔をしていた明智は、すぐに目の前の男が『あきら』ではなく俺であることに気づいて寂しそうにしていた。
    あの顔はもう何度も見てる。彼は時折ああやって、俺の顔を見ては寂しそうな顔をする。

    …明智

    『あきら』とは誰なのか。どうしてそんな顔をするのか。
    夢の中のお前は、なんでいつも手の届かない遠くに行ってしまうのか。

    やっぱり俺、お前のこと…放っておけないよ

    汗で少しだけ湿った頭を撫でてやる。
    暗い視界の中。熱に魘される横顔が僅かに安らいだように見えた
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    Replies from the creator

    manju_maa

    PROGRESShttps://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24435026の続き。

    明智先生過去編まとめ。
    『そうはならんやろ』がいっぱいあるけど勢いで読んでください。
    新任教師明智先生と前歴持ちの雨宮君の話⑧────『獅童正義』
    その名前と姿を初めて見たのは、中学生の時だった。
    社会科見学として国会議事堂に行った時に、あろうことか案内役の大人が当時はまだ知る人ぞ知る程度の認知度だったその男を連れて来たのだ。教育側の人間からしたら実際に現場で働いてる人間に説明させる方が子供の学習になるはずだ、という方針だったのだろうし、担任だった女も満足気にその話を聞いていた。周りのクラスメイト達も『へー』だの『すげー』だのと中身のない返事をしながら聞いていた。
    ……僕だけが、その男の顔を焼き付けるように見ていた。話は自分の心臓の音で何も聞こえなかった。
    母は生前に『まさよしさん』と知らない男の名前を呟きながら泣いていることがあった。それが父の名前であるのはなんとなく察していて、母の死後は何処にいるかも分からない『まさよし』をいつか見つけたいと思っていた。見つけて、どうして母を捨てたのか聞きたくて、ずっと迎えに来てくれなかったことを謝ってほしくて。ずっと。ずっと、いつか会いたいと。
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