気の長い男 今夜が最後だと思った。
夜も更けてきた時間の飲み屋で、お互い気持ちが良くなるくらいの酒が入っている頃合いだった。できることなら執行人として一緒に働いてくれるなら嬉しいと、無限が風息に言ったのだ。その願いに不快感を覚えない自分がいた。だから、自分と彼との付き合いはこれっきりにしなくてはいけなくなった。
故郷を館に追われてから、風息達はまだ腰を落ち着ける場所を見つけられていない。どこでも良いはずなのに、どこもしっくり行かず転々と場所を変える日々だった。その中で風息は時折街に降りて、情報を集める事もあった。
彼に会ったのは見目と声を変え、街で周囲の開発状況を調べていた時のことだった。気で妖精を探知できる館に対しては気休めでしかなかったが、どうやら人間の彼には有効だったらしい。風息を館とは別のスタンスの妖精であるという理解をしただけで、相手がお尋ね者の風息だとは露とも思わなかったようだった。
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