〜自分のせいで呪われてしまい眠り続けてしまった彼女に、今日もおやすみを言う五条〜 「遅くなってごめんね」
ドアを開けゆっくりとベッドへと近づく。そばにあるパイプ椅子に腰かけ、いつものように話しはじめた。
「今日ね、お祭りやってたんだ」
大きな花火があがってたよ。
任務帰り、車内で見た何発もの花火。視界を埋めつくしたソレ。
(きっと、大はしゃぎするんだろうな……)
目の前にいる最愛のことを思い出し、息がうまくできなくなったことが蘇った。
“いつか、お揃いの浴衣着ようね!”
自分の瞳と同じ青がいいとリクエストしたっけ。結局着れなかったけど。
「その後、携帯で撮影して生徒達に送ったら仕事しろって返ってきてさー。ほんと、みんな僕をこき使いすぎだよね〜」
……まぁでも、それで救われてる部分もあるんだけどね。
「それでね……!」
ふと、我に返る。
(……まーた、やっちゃった)
話に熱が入り、ハハッとから笑い。
(ごめんね……)
目の前の現実から背けるように目を閉じる。
青い春を過ごしていたとき。まだそこには親友がいて。そして彼女もいて。任務ばかりで億劫だったが、大切な存在がいたおかげでそれなりに楽しく過ごせていた。はじめての親友、同期、後輩。そして、はじめての恋。面倒くさいけど、歩幅を合わせて歩いていきたいと思える存在と出会えた。
“うん。私も……好き”
自分の名を呼ぶ声も、ぱあっと花のように笑う顔も、ただただ幸せだった。ずっと続けばいい。続くんだろうなって思っていた。
でも、実際は……
「そういえば、お前は傑と会うどころか、さよならも言えなかったんだよね……」
なんだかんだ親友のことを心配していたなと思い出す。そして、それをぶち壊したのは自分だと。
「もうさ、いい加減起きてもいいんじゃねぇの……」
名前、呼んでほしいな……。
「おやすみ」
おわり。