そうだ、ラブホ行こうある日の昼下がり、シンヤが郵便受けを開けたその瞬間。見覚えのない白封筒が一通。
――差出人:管理会社
(……え? なんかやったか俺)
恐る恐る開封すると、そこにはこうあった。
「最近、夜間に響く不審な物音や声に関して複数の苦情が入っております。近隣住民の方へのご配慮をお願い申し上げます。」
シンヤはその場で凍った。
「………………やっべえ」
目の前にざっとよぎるのは、あの夜のウシミツの声、そして、完全に理性を失っていた自分の姿。
「……終わった……」
⸻
その日の夜、
シンヤは真剣な顔でウシミツを呼び止めた。
「ウシミツ、ちょっと話がある」
「なんでござるか?拙者またお菓子食べすぎたでござるか?」
「いや……あのな……」
静かに、そっと、
例の管理人からの手紙をテーブルに置いた。
目を通したウシミツ、硬直。
「……これ、……………拙者の、声……?」
「いや、俺も……その、最近はやばかったし……」
シンヤはうなだれたまま、続けた。
「この部屋じゃ……もう無理だ。次からやるなら……その……ラブホとか行くしかない。
でも、…いまの俺の財力じゃ月2回が限界だ。ごめん、ちょっと高いし……」
ウシミツは一瞬だけ口をとがらせたが――
「行ってみたいでござる!!!✨」
目を輝かせてガッツポーズ。
「おお……そう来たか……」とシンヤは脱力しながらも、どこか救われたような顔をした。
「では殿、早速週末に予約でござる!せっかくだからスイートルームとかどうでござる?ハッ忍者が英語など…っ!」
「お前、話聞いてたか!?」
──
──
数ヶ月後
鳥の囀りが響く晴天の朝、
シンヤとウシミツは、繁華街から少し離れたラブホテルからひっそりと出てきた。
「おいウシミツ、……きょう声凄かったけど、喉とか大丈夫か?」
耳がまだ痛いシンヤ
「だ、だって……とのが……いつもより、すごかったから、……っ」
こちらは掠れ声のウシミツ
「それは……!お前が……煽るからっ!」
お互いの顔は、ほんのりと赤い。
──そのとき。
近くの通りから、若いカップルの話し声が聞こえてきた。
「ねぇ〜そこのラブホからからめっちゃ声聞こえたよね~」
「そうそう!なんか、“いけませぬ~!”みたいな、時代劇みたいなやつ(笑」
「時代劇プレイ?流行ってんの??あれ絶対アドリブっしょ(笑」
「!?!?!!!!」
バチッと顔を見合わせるシンヤとウシミツ。
そして――
「「…………っ!!!!」」
ふたりの顔が、同時に真っ赤に染まった。
シンヤは下を向いて耳まで真っ赤。
ウシミツは顔を手で覆ってプルプル震えていた。
「と、殿……拙者、もう……この町を歩けないでござる……!!」
「歩け。というか走れ!全速力で帰るぞ!!!」
「ぎょ、御意〜!(条件反射」