また、会えたらまだ朝霧の残る静かな日。
小川のせせらぎと蝉の声、遠くの鳥のさえずり。それらすべてが心をくすぐるような、まるで絵本のような風景。
「これが……本物の温泉旅館!!」
当時9才のウシミツが目を輝かせながら見上げたのは、木造三階建ての歴史ある日本家屋。
数寄屋造りの屋根、石畳の玄関、そして浴衣を着た仲居たちの出迎え。
ウシミツは貴族の子ではあったが、日本の忍者、そして日本という地に強い憧れを抱いていた。
両親は旅客船でしばらく家を空けており、当時ウシミツはその期間、執事と使用人数人、そして彼の「友人たち」である同世代の子どもたちを連れての滞在だった。
「ねえ、温泉っていうのに行ってみよう」
「先にアイス食べようよ」
「それよりゲームした方が楽しいよ」
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