また、会えたらまだ朝霧の残る静かな日。
小川のせせらぎと蝉の声、遠くの鳥のさえずり。それらすべてが心をくすぐるような、まるで絵本のような風景。
「これが……本物の温泉旅館!!」
当時9才のウシミツが目を輝かせながら見上げたのは、木造三階建ての歴史ある日本家屋。
数寄屋造りの屋根、石畳の玄関、そして浴衣を着た仲居たちの出迎え。
ウシミツは貴族の子ではあったが、日本の忍者、そして日本という地に強い憧れを抱いていた。
両親は旅客船でしばらく家を空けており、当時ウシミツはその期間、執事と使用人数人、そして彼の「友人たち」である同世代の子どもたちを連れての滞在だった。
「ねえ、温泉っていうのに行ってみよう」
「先にアイス食べようよ」
「それよりゲームした方が楽しいよ」
賑やかに笑い合う中、中心にいるのは朗らかに微笑むウシミツだった。
皆に気を配り、ちょっとだけズレた忍者ごっこを真面目に提案して、みんなを困惑させたり、笑わせたり、誰が見ても幸せな男の子だった。
⸻
事件は二日目の夕方だった。
宿に届いた一報。
「旅客船の沈没事故」「安否不明者多数」「ご両親の生存は絶望的」
言葉の意味が、理解できなかった。
執事が書面を読んでいる横で、金髪の少年は呆然と立ち尽くしていた。
膝から力が抜けて、畳に崩れ落ちる。
「……え?…………そんな……」
宿の女将が心配そうに駆け寄ろうとしたそのとき、
「――お気遣い無用です」
と、冷たく遮ったのは執事だった。
「この子には、もうお金も後ろ盾もありません。給料が払えぬなら、我々が仕える理由もない」
まるで機械のような口調で、執事は荷物をまとめるよう使用人たちに指示する。
そして、「友人たち」も、それに同調するようにウシミツに冷ややかな目を向けた。
「……貴族じゃなくなったら、ただの変な子だね」
「正直、忍者ごっことか本気でやってるの引いてた」
「親に言われたから付き合ってただけだし」
ウシミツ1人が残され、皆帰り支度をし始める。
「……うそ、………行かないで………!」
ウシミツが伸ばした手は届くことはなく、数分後にはウシミツは独りきりになった。
ウシミツは、人気のない庭園の脇にある灯籠の脇にしゃがみこみ、独り絶望の中静かに涙を流し続けた。
「………どうして……」
⸻
虫の声すら静まり返った深夜の庭。
ぽたり、ぽたりと、敷石に止まることなく涙が落ちる。
「……おとうさん……おかあさん……」
手も口も震えて、声にならない。
昼まであった世界が、全て夢だったように思えた。
「なんで……みんな……いなく、なっちゃうの……?」
その時だった。
「……おい」
声が、ふいに闇を裂いた。
ウシミツが顔を上げると、
そこには当時10才のシンヤが、月夜に照らされ立っていた。
「……泣いてんのか? こんなとこで」
ウシミツは驚き、しかし何も言うこともできず
ただ、涙を止めようとして、口元を押さえて震えた。
「……あー、言葉通ないか」
シンヤは、目を細めた。
旅館の跡取りとして働き見習いをしていた彼は、この時間に宿の外で子どもが独りでいることに気づいた。
(迷子か?いや、金髪の、外国人。今日旅館に泊まってたやつの一人か?)
「……まぁ、来いよ。とりあえず、俺の部屋来い」
シンヤはウシミツに手を差し出した。
ウシミツは、ほんの一瞬の迷いのあと、小さく頷き、その手に触れた。
ウシミツの手は、冷たくて、細く、シンヤは一瞬驚いたが、その手を優しく握り、ゆっくり夜道の中で導いた。
⸻
シンヤの部屋に着き、シンヤはウシミツを座布団の上に座らせ、温かいお茶を出した。
時間をかけて少しずつ、ウシミツの震えが治まっていくと、ウシミツはぽつぽつと話し始めた。拙い日本語と、ところどころ英語が混じる言葉で。
「おとうさん、おかあさん……いなく、なった……」
「ともだちも、みんな、……」
「ぜんぶ、なくなった……ぼく、ひとり……」
シンヤは、言葉を失っていた。
何があったかは分からなかったが、この小さい体で抱えているものがとてつもなく大きいことを感じ取った。
だから、何も言わずにゆっくり腕を伸ばし、
細い肩を、静かに抱き寄せた。
「……ここにいる間は、大丈夫だ。」
たったそれだけの言葉で、ウシミツはまた涙をこぼした。
けれど、さっきの涙とは違う、小さな安堵の雫だった。
⸻
小さな身体が、そっと布団に包まれている。
ついさっきまで涙をこぼしていたウシミツは泣き疲れたのか、静かな寝息を立てていた。
その寝顔にはまだ疲れと痛みの色が残っていて、シンヤはしばらくその隣に座り、じっと見つめていた。
(コイツに、何があったんだろう…)
やがてシンヤは立ち上がり、ウシミツが起きないよう、部屋をそっと抜け出す。
両親に、このことを伝えなければ。
宿の息子として。いや、それよりも——
(……あいつを、放っておけない)
⸻
廊下を歩いていると、帳場近くの台所から、女中たちの話し声が漏れてきた。
「——あの外国人のお客さん、みんな突然帰っちゃってさ」
「あの子の両親、まだ見つかって無いらしいけど、生存は絶望的って話だよ」
「でもさ、使用人や執事まで荷物持って逃げるって、ちょっと酷くない?」
「友達だって言ってた子たちも、あの子がお金持ちじゃなくなったからって皆帰ったって……」
「執事が退職金代わりにって、本国にある屋敷の物品全部、使用人が持って帰ったって話してたわ…」
「あの子、これからどうなるのかしら…」
……!!
耳を塞ぎたくなるような言葉が、シンヤの胸に突き刺さった。
(……そんな…全部、本当だったんだ)
目の前で震えていたあの子の涙が、現実のものとして重くのしかかる。
歯を食いしばって、その場を立ち去った。
⸻
シンヤが父と母の部屋を訪ねたのは、それから数分後だった。
すでに話が届いていたのか、二人は深刻な顔をして話をしていた。
「……その子は今どこに?」
「俺の部屋で、寝てます」
「……本当に、酷い話ね。まだ小さいのに、頼れる人がいなくなって…」
母の声は優しくも、どこか痛々しい。
シンヤは拳を握ったまま、言葉を飲み込んでいたが、やがて口を開いた。
「……父さん、母さん、一晩だけでいい。俺、あの子のそばにいたい」
父と母は目を見合わせる。
反対されると思ったが、二人の顔は、どこか穏やかだった。
「……あの子は、きっと今夜が一番寂しい夜になるものね」
「そうだな…歳が近いお前がそばにいてやれ。大使館に相談はする。それまでは、安心させてやってくれ」
「……うん、ありがとう」
頷いたシンヤの顔はまだ幼かったが、その目には、決意の色が宿っていた。
⸻
その夜、部屋に戻ると、ウシミツはまだ浅く寝息を立てていた。
小さな背中を見て、シンヤは思う。
(名前も何も知らない、でも……)
(今は俺が、この子を守る)
そっと布団の横に寝転ぶ。自分の肩に寄り添ってくる気配を感じながら、
シンヤもまた、静かに目を閉じた。
⸻
朝の光が、障子越しに静かに差し込む。
ほんの数時間前まで泣き疲れて眠っていたウシミツは、布団の中で目を覚ました。
まだ、現実が夢だったらと願っていた。
でも、夢じゃなかった。
消息不明の両親、
消えた執事、笑っていた「友人」たちの背中。
ウシミツは布団の中で小さく震え始めた、
すると、
「……おはよう」
横にいたシンヤがが、小さな声で言った。
「……っ」
ウシミツは目を伏せる。
喉がひどく乾いていて、胸の奥がずっと苦しいままだった。
言葉にしようとしてもうまく出せず、代わりに――
「……ごめん、なさい」
涙声で、やっと出た言葉はそれだった。
謝る理由なんて、ないのに。
「……なんで謝るんだ」
少年はそっけなく言った。でも、その声は不思議と温かかった。
「お前が悪いわけじゃないだろ、何もかも、全部ひでー話だよな」
⸻
そして、時が来た。
旅館の入り口に立つ、大使館から来たスーツ姿の大人たち。
通訳の女性が丁寧に頭を下げ、旅館の両親に礼を述べる。
「……この子の安全は、私たちが責任をもって対応いたします。両親の安否は現在も確認中ですが、まずは一時的に保護の施設へ……」
ウシミツは、足取りはおぼつかず、身体はずっと小刻みに震えていた。シンヤはウシミツの小さな手を握っていたが、もう離さなければいけない時間だ。
「なぁ」
シンヤがウシミツに呼びかけると、ウシミツが少し顔を上げてシンヤの方を向く。
目は涙で滲んでいて、それでも、ちゃんと聞こうとしていた。
「絶対また、どこかで会おうな」
それは、衝動的に出た言葉だった。
でも、心の底から出た言葉だった。
名前も知らない。国も違う。生きる場所も、環境も、全部違う。
でも、それでもいい。たった一晩のことだったけど、ウシミツが泣いていた夜を知っているのは、自分だけだ。
「約束だ」
そう言って、シンヤは小指を差し出した。
ウシミツは目を見開き、動けなかった。
でも、ほんの少しだけ――震える手を伸ばして、そっと小指を絡めた。
「……うん……やくそく……」
それは、かすかで、でも確かな声だった。
⸻
車のドアが閉まる。
エンジンの音が響き、車は静かに坂を下っていった。
金色の髪が窓の奥で揺れるのを、
シンヤはずっと見送っていた。
(いつか、あいつが笑える日が来るなら…)
その時、胸の奥に何か熱いものが灯るのを、シンヤは感じていた。
それが「想い」なのか、「運命」なのか、
この時はまだ、誰も知らなかった。
でも――あの朝交わされた「約束」は、
確かに二人の人生をつなぐ、最初の糸だった。
⸻
あれから、三日経った。
旅館は再び日常の空気を取り戻し、
常連客の姿が戻りつつあった。
だが、シンヤの胸にはまだ、空いたままの場所が残っていた。
⸻
その知らせが届いたのは、朝食の準備中だった。手紙を受け取ったシンヤの母が、すぐにシンヤを呼んだ。
「……あの子の、ご両親が見つかったって」
「……!」
シンヤの目が見開かれる。
「船は沈没したけれど、ご両親は脱出ボートで無事に救助されてたの。
数日間、安否確認が取れなかったけれど……本国の大使館から、正式に連絡が来たわ」
「……ほんとに……?」
「ええ、あの子も……両親の元に帰れることになったって。本当に良かったわ」
その瞬間、シンヤの胸の奥から、ふっと緊張が抜けた。
まるで、深く張り詰めていた糸が静かにほどけていくようだった。
「……よかった……ほんとに……」
思わずつぶやいたその声は、少しだけ震えていた。
あの晩、庭で泣いていた小さな背中。
誰からも見放されたようにうずくまっていた姿。
あの子が、もう一度「帰る場所」を取り戻せたのだ。それは、本当に心からの安堵だった。
でも——
ほんの少し、胸の奥がひゅっと冷えたような気がした。
(……もう、会えないんだろうな)
名前も知らない。連絡先も知らない。
たった一晩だけ出会って、別れたあの子。
なのに、こんなにも胸を締め付けるのは、なぜだろう。
笑ってほしかった。
もう少しだけ、話がしたかった。
あの「やくそく」が、いつか本当になってほしかった。
けれど、そんな望みも、夢のように遠ざかっていく。
それからシンヤは時々、思い出す。
あの夜、布団の中で小さく震えていた子ども。
言葉にできない痛みを抱えながら、それでも約束を交わしてくれたあの声。
また、どこかで会えたら。
——その願いだけは、まだ胸の中に、静かに灯っている。
薄明かりの部屋の片隅。
大使館の用意した保護施設の一室で、
ウシミツは、膝を抱えて座っていた。
大人たちが何か話している。
「心的ショック」「一時的な拒絶反応」「安全は確保されています」
——そんな言葉はもう、頭に入ってこなかった。
金色の髪が肩に落ち、肌は少し冷たい。
両親も、見慣れた使用人も、優しく笑った“友人”も、今はどこにもいない。
誰の顔も見たくなかった。
声も、言葉も、もう信じたくなかった。
でも——
ふいに、記憶の底から浮かぶのは、夜の灯籠の下、あの少年の手だった。
「また、どこかで会おう」
「約束だ」
小指をそっと絡めてきたその手は、
言葉より先にウシミツの心に届いていた。
布団にくるまり、ふと瞼を閉じたとき、
微かに思い出すのは、あの時、背中を支えてくれたぬくもり。
優しくて、まっすぐで、どこか素朴で。
でも、あの夜だけは確かに、ウシミツの味方だった。
「……また……あえる……かな」
誰にも聞こえないような声で、ウシミツはつぶやいた。
返事はなかったけれど、
胸の中の震えが、ほんの少しだけ、静まったような気がした。
⸻
そして数日後——
「ご両親が見つかりましたよ」
その言葉が耳に届いたとき、
ウシミツは目を見開き、最初に浮かんだのは、
父でも母でもなかった。
(……あの人に……言いたい)
「ありがとう」と。
あの時、名前を聞けなかった。
どこにいるのかも、もう分からない。
でも、もしまた会えるなら、今度はちゃんと—
⸻
名も知らぬ男の子の温もりは、
確かにウシミツの中に残っていた。
それは「信じる」という心が、
まだほんの少しだけ、残っている証だった。
翌日、飛行機から母国の地へ降りた時、ウシミツの心には、希望を取り戻していた。
両親が生きていた。
自分はまた、“家”に戻れる。
きっと抱きしめてくれる、頭を撫でてくれる、
「怖かったね」と、たった一言でも寄り添ってくれる。
……そう、思っていた。
けれど――
「とんだ災難だった」
「まったく、執事どもは何をしていたんだ」
「どれだけこの家に迷惑をかけたか……まったく、情けない」
帰宅して出迎えたのは、疲れた顔をした両親のため息混じりの苛立ちだった。
心配はしてくれたのかもしれない。
でも、目に映るのは**“家の恥”や“管理の不備”**ばかり。
「……ご無事で……なによりです」
ようやく絞り出したその言葉に、
両親は頷いただけで、ウシミツの頭にも肩にも、何一つ触れてくれなかった。
ウシミツは、胸の奥で何かがゆっくりと崩れていくのを感じていた。
⸻
ウシミツを置いていった執事や使用人たちも、いつの間にか元通りになっていた。
「坊ちゃま、お戻りを」
「お食事はこちらに」
普段と同じように振る舞っている。
何もなかったかのように、笑顔で、整然と。
でも——
ふと、廊下の陰から漏れた声を耳にした。
「まったく、日本に行きたいなんて言い出さなければ……」
「結局、あれで俺たちが怒られたんだぞ」
「“金持ちの道楽”に付き合わされたこっちの身にもなれっての」
息を呑んだ。
逃げるようにその場を離れたが、心はどんどん冷えていった。
(……僕が、悪かったの?)
(僕が望んだから、全部、壊れたの?)
⸻
数日後、招かれるようにしてやってきた「かつての友人」たちは、
明るく無邪気な笑顔を浮かべていた。
「ねえねえ、この前はごめんねー!」
「また遊ぼうよ、今度は庭でバトルごっこしよう!」
「忍者ごっこ、もう一回やってもいいよ?」
まるで何事もなかったかのように。
あの日、冷たく背を向けたあの言葉を、
ひとことも覚えていないかのように。
ウシミツは笑えなかった。
震えそうになる口元を必死で隠し、曖昧に頷くだけで精一杯だった。
⸻
そんな地獄のような日常の中でも、名も知らないあの少年の温もりだけが、まだ心の中にあった。
抱きしめてくれた。
話を聞いてくれた。
手を繋いでくれた。
約束をしてくれた。
……あの時、確かに、「僕を守ろうとしてくれた」。
けれど、今のウシミツは、
誰にも助けを求められず、声も出せず、
金色の檻に閉じ込められた鳥のようだった。
⸻
(会いたい……あの人に)
その夜、ウシミツは枕に顔を押しつけて泣いた。
誰にも聞かれないように、
誰にも気づかれないように、
ひとりきりで、声を殺して。
その涙は、誰かにすがることさえ許されなかった、貴族の子の涙だった。
⸻ ⸻ ⸻
あれから3年後の春。
ある中学校の校門前には、新入生の列が伸びていた。
緩やかな風が吹き、桜の花びらが舞う。
制服の新しい学ランに身を包んだひとりの少年が、いた。
少しだけ背筋を伸ばし、金色の髪を揺らすその姿は、まだ幼さを残しながらも、しっかりと前を向いていた。
(……ここから、また始める)
誰に言うでもなく、小さく心の中で呟いた。
⸻
式が終わり、生徒がぞろぞろと校門の外へ向かうころ。
ふと、ウシミツが立ち止まった。
……あれは。
旅館の前庭に立っていたのは、
黒髪で、背が伸びて、でもどこか変わらない顔をした少年。
「……っ」
目が合った瞬間、お互いに時間が止まった。
シンヤは、金髪のその少年の顔をじっと見ていた。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「……お前……」
その目が驚きに見開かれる。
そしてその目はちゃんと、まっすぐウシミツを見ていた。
「……久しぶりだな」
ウシミツの瞳が、わずかに揺れた。
「はい。……また、会えました」
「……なあ」
シンヤは、あの夜と同じように、手を差し出す。
「今度こそ――マブダチになろうぜ」
ウシミツは、一瞬だけ目を伏せた。
あの夜の“ありがとう”を、ずっと言えなかった“また会いたい”を、
すべて込めて、小指ではなく――掌ごと、しっかりとその手を取った。
「……はい。僕で、よければ」
再び繋がれた手は、あの日の温もりとそっくりだった。
ただ…
「……あの、」
ウシミツが、少しだけ首をかしげる。
「“マブダチ”って、なんですか?」
シンヤ「…………」
風が強く吹き、桜が舞う。
「……マジか」
「……はい」
「……あーー、これ説明すんの、恥いな……」
顔をそむけるシンヤに、ウシミツは首を傾げたままじっと見つめる。
「“ダチ”は、友達、ですよね? でも“マブ”って……まぶしい?」
「ちげぇよ! いや、そういう意味も無くはないけど! えっと……マブってのは、なんつーか……一番の、超仲良しっていうか……」
「いちばん……?」
ウシミツの目が少しだけ丸くなる。
その言葉が、胸の奥をくすぐった。
「特別な、友達ってこと……?」
「……ああ。そう、それ!」
思わず照れ隠しのように肩をすくめるシンヤ。
「そっか……じゃあ、ぼく……」
「……あなたの、マブダチになります!」
そう言って、花が咲いたように笑うウシミツ。
初めて見るウシミツの笑みに
シンヤも釣られない、一緒に笑いあった。
2人の“約束”は、ずっと心の中で生き続けていた。