幼児化ちゅだ案件が一段落して、やっと家で酒を飲めると思っていたら、突然家の呼び鈴がなる。その後もう一度呼び鈴が鳴る事は無く、代わりに扉が叩かれた。暫く無視したが、一向に止む気配が無いので仕方無く玄関に向かい、扉を開ける。扉を開けると、其処には誰も居ない。不思議に思っていると、足元から声が聞こえて来る。
「此方だよ、ちゅーや」
足元に目を向けると、其処には見慣れた姿が見えた。記憶の中よりも身長が縮んでいて、見下ろせる身長差になっている。
「如何したんだよ、手前」
「寒いから、話は中でね」
俺の了承も得ずに隙間を縫って、家の中へと入る太宰に、追い返すのは諦めて扉を閉めた。何時も通りに居間の長椅子に座っているが、床に足は着いておらず、足を揺らしている。
「んで、如何したんだよ。其の体」
「仕事中に怪しげな薬が有ったから死ねるかもと思って飲んでみたのだけれど、効果は見ての通り、と云う訳だよ」
効果も分からない薬を勝手に飲むのは相変わらずなのか。まぁ、恋人の可愛い姿が見れるのは良いが、中身は変わってないらしく、可愛くは無い。探偵社で着せ替え人形にでもされたのか、丁度いい大きさの服を着ていて、死ねなかったのが不満なのか頬を膨らませる様子はあの太宰だと分かっていても矢張り可愛いと思ってしまう。
「…何時戻ンだ」
「ん?えーっと、一週間くらいだったかな。此の体結構不便だから、其の間中也に面倒見て貰おうと思って」
何時もの俺ならば巫山戯んなと断っていたかも知れないが、恋人と会うのは久しぶりであり、久しぶりに会った恋人は幼児化して、可愛い容姿をしているのだ。断わる理由等存在しなかった。