浅井さんのやつ(一次創作)「お兄さんが絶対犯人捕まえたるさかい、安心しとき」
親が死んで不安やろうにそれを悟らせないよう涙を堪えた少女が俺を見上げて言う。
「お願い、します…」
かつての上司が何を考えてるんか分からない顔をして俺に言う。
「浅井、警察官としてその真っ直ぐな性格は正しいが、時には曲げなきゃいけない時もあるんだよ。分かったらこの件から手を引け」
なんやそれ。事故なんかやない殺人事件やって誰もが分かっとるのに。上からの圧力か何か知らんけど、そんなもんで事故として処理するなんて何の為に警察になったか分からんやないか。絶対犯人捕まえたるってあの子と約束したのに。
「ッ」
またあの夢を見た。犯人を捕まえると約束したのにその約束を守れなかった夢。あの子が今何をしているのか、犯人は未だ見つかって居ないのか。今の俺には何も分からない。世間的には事故として報道されてるから犯人見つかっても報道される事は無いだろう。
「俺は、何の為に警察になったんやろうな」
泣く事も許されないあの子に笑って欲しかっただけなのに。