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    ruicaonedrow

    エタるかもしれないアレとかコレとか/ユスグラ/パシラン/フィ晶♂/銀博/実兄弟BL(兄×弟)/NovelsOnly……のはず

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    ruicaonedrow

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    わたしのユスグラ感は、父性の顕現というのを推す次第

    #ユスグラ
    yusgra

    おかえり甲板から精一杯身体を伸ばして、遠く消えていく影を見送る。ルリアなどはそれこそ、その影が完全に見えなくなるまで一生懸命手を振り続け、見えなくなっても尚、縁に手を掛けてつま先立ちになって、暫くそのまま景色を眺めていた。
    「行っちゃいましたね」
     もう何度となく繰り返したその台詞に、応えるものだっていつも変わらない。
    「今度も、無事に帰ってくるよ」
     これはある意味で願い、あるいは希望だ。こういったものは口に出せば現実になると聞いたことがある。なので、こうやって、……いつも同じやりとりになってしまうのはある意味、仕方ない。ルリアはそれを聞いて「そうですね」と寂しげに笑い、そこから動けない僕の前を通って、艇の中へと消えていく。ぱたぱたと軽い足音が彼女の後を追い、扉が閉まる音を最後に、はたりと途絶える。
    「……」
     僕は。
     そうして、ひとりぼっちになった後、そうっと縁に近付く。最早影すらも残らず、何事も無かったかのようにひっそりと佇む町並みを、ただ、見遣る。
     ――それは、遠い思い出だ。多分、記憶に残る、古めかしくも色褪せないもの。
     ――大きな、……大きな父親の背中。振り向きもせず、ただ……ただ真っ直ぐに前を見据える父の、
     唐突に吹いた風のあまりの冷たさに、僕ははっと顔を上げた。見れば空は一面灰色に覆われ、周囲はうっすらと暗くなっている。濡れた土の匂い。間違いない、これは一雨くるだろう。濡れてしまう前に、早く艇の中に戻らなくては。
    「彼は、……」
     口に出し、けれどその先をきゅっと噤む。風景から無理矢理に目を引き剥がし、外套の襟元を寄せて、甲板を蹴って駆け出す。ちょうど扉が閉まるか閉まらないかの頃に、待ってましたとばかりに降り始めた雨が世界を覆った。
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    ruicaonedrow

    PASTグラブルくんで「媚薬入りチョコレート」なるものが公式になったと聞いて
    メイズオブルージュ はっと目を開けたら、そこは、いつもの場所だった。
     いつもの――あぁそれは、例えば、くるくる回るシーリングファンであったり、染みの一つ一つが模様に見えるような木目であったりする見慣れた天井の景色。そうして少しばかり目を横へ遣ったのなら、ベッドの横、ちょうど僕の目線の位置に当たる大きな窓の向こうは、紺色のグラデーションが橙色の世界を連れて、今まさに、世界の果てに沈もうとしているところであった。
     ――あれ……?
     起き上がり、目を擦る……けれど、ぱちぱちと瞬いたところで世界は変わらない。その風景は、やはり、僕の中のそれとは全く噛み合わない。
     確か。それは、朝だったはずだ。柔らかな光が差し込む朝。いつも通りに起き上がった僕は、ぐーっと伸びをして……窓の外を、蒼の世界を流れていく雲と、島々の向こうに見える大きな太陽と、その合間を飛んでいく雁の群れにしばし見とれていたはずだ。遙か向こうにはごま粒のような騎空艇の影が幾つも見えて、……あぁ今日もいつも通りの日が始まるなと、欠伸をかみ殺しながらそう思ったんだ。
    20159

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