波打ち際 寄せては返す波の音が響いている。
薄曇りの空はのっぺりとして、それ自体がぼんやりと発光しているようだった。眩しい曇り空の下、アッシュブルーの海から繰り出されるレースのような白い波が、トラウザーズを捲り上げた足首にまとわりついている。
砂浜に投げ捨てられたエナメルの靴も、砂にまみれてしまってその艶を失っていた。
「いつまでそうしてるんだ」
砂浜に置いた椅子に座るスティーヴは、そう声をかけてビールの最後の一口を飲み干した。隣の椅子に置いたもう一本は、結露をたっぷり纏わせてすっかりぬるくなっている。
「ダニー」
「聞こえてるよ」
ちゃぷ、と軽く波を蹴ってからダニーは砂浜を歩くと、スティーヴの隣へ座った。眉間の皺はまだ深く刻まれている。
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