薬師の恋仲日記8月30日
朝は少しひんやりしていて風が気持ちよかった。
義経様と互いの熱を分け合って過ごした昨夜。
体にはいたるところに痕がある。
少し気恥ずかしい。でも義経様の深い愛情を感じられた。
散歩にでも出ようと起こさないように褥から思ったら
『由乃……まだ早い』
と義経様に抱きしめられ、しばらく身動き出来なかった。
毎回のことである。
義経様は朝に弱い。
そしていつになく妙な色香をまとい、寝起き特有の少し掠れたような低めの声に毎回ドキドキさせられる。全く慣れない。多分誰も知らない。
私だけに見せる顔だろう。
義経様の腕の中は心地よくて、この世で最も安心出来る大好きな場所。叶うならずっとこのままでもいい。
いい……けど、そうじゃないの由乃!
眠っている義経様を起こすのも大事なお仕事。
恋仲として。
その前に朝餉も作りたいし、勉強だってしたい。
だって義経様に相応しい恋仲になりたいから。
とは言え義経様のあのお姿と声を見たら、なんとも言えなくなってしまう。
どこか甘えるようなあの仕草。
愛しくてもう仕方ないの。
惚れた弱みかな。
今度、弁慶とかに朝の起こし方とか聞いてみようかな。詳しそう。
でもまぁ、結局義経様が元気で幸せで、隣で笑ってくれたらそれでいいのかもしれない。
大好きです。義経様。
今宵もまた、あなたの元に参ります。