あなたから幸せを受け取るのが怖くなった。そう告げたら、アイメリクはどんな顔をするのだろう。
「ハツナ?」
イシュガルドの街中を歩く私の足取りが重たいことに気付いたアイメリクが、心配そうに覗き込んでくる。
「……大丈夫、何でもない」
「そろそろ旅立つ頃合いだが、気がかりなことも多いだろう?終末の塔についても、肝心なところは頼りきりだ。本当に、すまない」
「っ、そんな、謝らないでください」
だって、終末の阻止が暁の血盟の、私の使命なのだから。
「私の方こそ。一緒に暮らし始めたのに、すぐ家を空けることになってしまってごめんなさい」
「それこそハツナが謝ることではないさ」
「でも、アイメリク。私は、」
「君がいつ帰ってきてもいいように、家は常に綺麗にしておこう。だから君は、何も心配しなくていい」
「ありが、とう……」
微笑む彼の言葉に、自分でもはっきりと分かるぐらい、ぎこちなく頷いた。わざと言葉を遮られたのは気のせいなんかではない。
アイメリクから結婚を申し込まれて、帰る場所が増えて。二人で私の家族に挨拶をしに行ったとき、「共に幸せになりたいのです」と言ってくれてどれほど嬉しかっただろう。どれほど幸せだっただろう。
私は本当は何よりも誰よりも、アイメリクを喪うのが怖い。けれど英雄と呼ばれる人間が、たった一人のためだけに行動することなど許されない。
だから私は、この気持ちを一人で抱えていく。内に秘めた彼への想いが、世界を救うことにも繋がるはずだと言い聞かせて。