リベンジ配信で作ったブラウニーは散々だった。何が8歳でも作れる、だ。そんなの嘘っぱちではないか。
付属で付いてきたバニラアイシングを仕上げに可愛くかけたのに、まるでザーメンだと言われる始末。まあ僕もちょっとそう思ったけど……。
中身が2つ分あったから、1つは配信用でもう1つはサニー用として作って食べてもらおうと思っていたのに、結果1つとして出来上がった完成品はとてもじゃないけれど大好きなサニーに渡せるような代物ではなかった。
甘い香りの漂うキッチン。前回と違うキットを使ったからか、器具は散乱して粉物はキッチンの天板に舞い、床にこぼれた砂糖が履物越しにジャリジャリと存在を主張する。浮奇が見たら発狂するような散々たる光景だが、その一切に目を瞑りオーブンから取り出したそれはまるで光輝いているかのように目に映った。
今度はしっかり膨らんでいる。成功だ。
逸る気持ちを抑えて粗熱がとれるのを待ち、バットから丁寧に丁寧に外して、見栄えがいいようにとナイフを入れる度にペーパーで拭いながらカットしてお皿に盛り付ける。生焼けを起こすこともなく、しっかり中まで火も通っているようで安心した。
そして最後は落とさないように、慎重に慎重に階段を上がって目的の部屋へと向かう。
「見て!サニー!今度は上手にできたんだ!」
「わぁ!嬉しいよあぅばぁ〜〜〜〜〜〜ん♡」
部屋に入ってきた僕の顔、次いで皿に盛られたブラウニーを見たサニーの笑顔が少し曇った。
どうしたのだろう。渾身の出来だと思ったのに、他から見たらおかしいところがあったのだろうか。
不安に思ったのが表情に出たのか、サニーが優しく声をかけてくれた。
「とっても綺麗にできてるよ。でも、大事な物を忘れてるんじゃないかな?」
「大事なもの???」
何だろうか。
きょとんとしているとサニーが後ろに周りこみ、鮮やかな手付きでベルトのバックルを外して下肢を寛げられた。そのままするりとディックを撫でられてぞわりと肌が粟立つ。
「ん、ッ…!」
「ね、あぅばーんのミルクソースがかかってないよ」
耳もとで囁かれて体が跳ねる。
持っていたお皿が震えて、ブラウニーと共に皿に乗っていたフォークが カチャリ と音をたてた。
それを見たサニーが落とさないようにと、どこからかローテブル── 確かユーゴから貰ったちゃぶ台?という物を出してきてその上にお皿を置く。
サニーの言動から、それがあのバニラアイシングのことを揶揄しているのだと分かった。しかし今回は前と違うキットを使ったのだ。バニラアイシングは付属されていなかった。ならばどうなるか。
きっとここで僕の搾りたてミルクをかけるつもりなんだろう。
「……変態」
ぽつりと呟いて抵抗してみせるが、サニーに触れられて甘い期待に疼く体は逃げをうつことができなかった。