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    百合菜

    遙かやアンジェで字書きをしています。
    ときどきスタマイ。
    キャラクター紹介ひとりめのキャラにはまりがち。

    こちらでは、完成した話のほか、書きかけの話、連載途中の話、供養の話、進捗なども掲載しております。
    少しでもお楽しみいただけると幸いです。

    ※カップリング・話ごとにタグをつけていますので、よろしければご利用ください

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    百合菜

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    遙か7・幸七
    「華胥之夢(かしょのゆめ)」
    七緒と再会した幸村。
    そこには予想もしなかった者たちもいて!?

    ※再録です

    #幸七
    #遙か7
    far7
    #遙かなる時空の中で7
    harukanaruTokiNoNakade7
    ##幸七
    ##遙か7

    蒼い空。
    そしてあたり一面に青い花の絨毯が広がる神域。
    会いたいと、抱きしめたいと、そして、想いを伝えたいと願ってやまなかった人の姿がそこにはあった。
    どんなに想いを伝えても、どんなにくちびるを交わしても、胸の奥底から溢れてくる想いは留まることを知らない。
    空白のときを一刻でも早く埋めてしまいたい気持ちと、ここには永遠のときが流れているから焦らなくてもいいと自分に言い聞かせる気持ち。
    ただ、いずれにせよ、『独り』でないことが今はただただ嬉しかった。

    「そろそろいいかな……」
    「待ちくたびれたぜ」

    ふたりしかいないと思っていた神域の静けさを割るような声。
    現れたのはふたりの子どもたち。男の子と女の子がひとりずつ。
    男女というにはまだ年が満ちていないが、背格好からすると童というにも無理がある。
    この者たちは……?
    そういぶかしげな視線を向ける幸村の目の前で七緒はふたりに呼び掛ける。
    知り合いなのだろうか。
    そう思う幸村の前で七緒は信じられないようなことを口にする。

    「ほら、ふたりとも、ちゃんとお父さまにご挨拶して」

    おとう…さ…ま……?
    私には子どもなんて、そんな……
    そう心の中で思いながら幸村はあるひとつの可能性について浮かぶ。
    七緒が人の姿をしていたとき、一度だけ肌を重ねたことがあった。
    それからの地上の年月を照らし合わせると、目の前の子どもくらいの年齢に達していてもおかしくはない。
    子どもたちも急に現れた「お父さま」の存在が恥ずかしいのであろうか。頭をペコリと下げるとどこかへ行ってしまった。
    隠れる場所なんてなさそうなものなのに、あっという間に姿が見えなくなる。
    そのことを不思議と思いつつも、幸村は七緒に視線を向ける。
    すると、七緒は頬を染めながら言葉を紡ぎ出す。
    それは地上でともに戦っていたときの純粋無垢な彼女を彷彿させてしまう。

    「幸村さんが思う通りです…… そのときに赤ちゃんができちゃって……」

    今までこのことを知らなかったことを自分は恥じるべきだろう。
    あのときは七緒と想いが重なったのが嬉しく、本人の承諾のもととは言え、肌を重ねてしまった。
    彼女に少しでも自分の痕跡を残したい。そんな想いで放った精がもたらす可能性について考えなかったわけではない。
    ただ、そのときは都合よく「大丈夫だろう」ととらえていた。そのことに根拠はないにも関わらず。
    しかし、幸村の身勝手な願いとは裏腹に七緒の胎内には赤ちゃんが宿ったらしい。それも男女の双子の。
    嬉しい気持ちがないわけでないが、七緒に対しては詫びて済むなどの域を遙かに越えている。そのため、幸村は七緒に合わせる顔がない。
    しかし、七緒は首を横に振る。
    そして、幸村の身体をそっと抱き締めてくる。

    「そんな顔しないでください。私は嬉しかったのです。幸村さんを感じる存在がすぐ近くにいましたから」

    七緒の話によると、神域に帰って間もなく懐妊が判明したらしい。
    もっとも神域での七緒は白龍の形をとっており、産まれるというよりも、体内から分かれるような感覚だったらしい。
    そして、自分のものとも他のものと混ざった存在ともはっきりしない中、神域を漂っていたらしい。

    「私が何度も人としての意識を失いそうになったときも、それを止めてくれたのは子どもたちでした。
    そして、幸村さんが人間の世界で果たさなければならないこと。そのために戦っている様子も子どもたちと眺めていました」

    そう七緒は話す。そのあとに、眺めることくらいしかできませんでしたが。そう寂しげに付け加えて。
    その表情を見て幸村は悟る。
    寂しい想いをしていたのは自分だけではないと。
    永遠の中に一瞬だけ訪れる再会のとき。それを頼りに彼女も耐えてきたのだと。
    抱きしめられている腕の中から抜け出し、幸村は七緒の身体を抱きしめる。
    もう幾度目になるかわからない抱擁。
    だけど、抱きしめるざるを得ない。
    彼女と、そして自分が抱えていた孤独。それを少しでも埋め合わせたかった。
    そして、次の希望を持てるように。
    そう願いながら彼女の紅いくちびるに自分のくちびるを重ね合わせた。

    ーーーーーー

    「…むら…… ゆき…むら……」

    聞き覚えのある声に目を覚ますと、そこには阿国と大和の姿があった。
    春の日差しに誘われて縁側で眠っていたらしい。

    「久しぶりだな」

    七緒が地上から去って十年はとうに過ぎた。
    阿国と大和のふたりは、全国を旅するがてら時折このように幸村のもとへ顔を出す。

    「なんか幸せそうだったけど、七緒の夢でも見ていたのか?」

    大和の率直な物言いに幸村は頷く。

    「ああ、どこだかわからないが、姫と再会する夢だった」

    さすがに子どもができていた、なんて話はしない。おそらくそれは現在の自分が孤独にさいなまれている証拠。

    「そういえば、豊臣が兵を集めているという話は本当なのかい?」

    阿国が心配そうに幸村を見つめてくる。
    阿国に対しては誤魔化しがきくわけない。
    そう思いながら幸村は頷く。

    「ああ」

    先日、豊臣の使いのものが訪れた。
    是非とも挙兵していただきたいと。
    そして、それに応える形で亡き父の家臣たちに協力願えないか文を出した。返事は思いの外早く来、悪くない内容だった。

    「阿国、頼みがある」
    「なんだい?」

    幸村は阿国の目の前にひとつの包みを差し出す。

    「俺にもしものことがあれば、これを燃やしてほしい」

    目の前の阿国はもちろん、その隣にいる大和も息を呑むのがわかった。
    ふたりには「もしも」という仮定の事項ではなく、確定された未来としてその言葉が伝わったのだろう。
    そう、勝ち目はほぼない。
    ふたりの読みは当たっている。
    だからこそ、信頼できるものに託した。
    上田で七緒と過ごしていたときに彼女に贈った着物を。

    「わかったよ。富士の頂上であんたと神子に届くように舞いながらね」

    阿国の瞳がほんのり潤んでいることに幸村は気がつく。

    「俺もつき合うよ。そんなことねーと信じてるけど」

    かつて富士の登山を誰よりもめんどくさがっていた大和もそう話す。

    「ああ、感謝する」

    神域がどれくらい遠いのか検討もつかない。
    しかし、龍神が人々を見守る存在であれば、どこか高いところからなら届くのかもしれない。
    ましてや、日の本一の高い山、そこに奉納の舞があれば、きっと七緒に届くに違いない。

    「じゃあ、私たちはここで行くよ。幸村、あんたも無理はするんじゃないよ」
    「ああ」

    最後だとわかっているからか、挨拶は簡潔なものとなる。
    ふたりの姿が見えなくなるまで幸村は後ろ姿を見送る。


    目を瞑ると見えてくるのは年月を経ても色褪せない愛しい人の姿。
    姿を感じることすらできないが、彼女はどこか遠い空の向こうから見守ってくれているに違いない。
    あとは己の信念に向かって真っ直ぐ生きた彼女に恥じないよう、自分もやるべきことを果たすのみ。

    「見ていてください、私の姫。もうすぐあなたのもとへ参りますから」
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    百合菜

    DOODLE地蔵の姿での任務を終えたほたるを待っていたのは、あきれ果てて自分を見つめる光秀の姿であった。
    しかし、それには意外な理由があり!?

    お糸さんや蘭丸も登場しつつ、ほたるちゃんが安土の危険から守るために奮闘するお話です。

    ※イベント直前に体調を崩したため、加筆修正の時間が取れず一部説明が欠ける箇所がございます。
    申し訳ございませんが脳内補完をお願いします🙏
    1.

    「まったく君って言う人は……」

    任務に出ていた私を待っていたのはあきれ果てた瞳で私を見つめる光秀さまの姿。
    私が手にしているのは抱えきれないほどの花に、饅頭や団子などの甘味に酒、さらにはよだれかけや頭巾の数々。

    「地蔵の姿になって山道で立つように、と命じたのは確かに私だけど、だからってここまでお供え物を持って帰るとは思わないじゃない」

    光秀さまのおっしゃることは一理ある。
    私が命じられたのは京から安土へとつながる山道を通るものの中で不審な人物がいないか見張ること。
    最近、安土では奇行に走る男女が増えてきている。
    見たものの話によれば何かを求めているようだが、言語が明瞭ではないため求めているものが何であるかわからず、また原因も特定できないとのことだった。
    6326

    百合菜

    MAIKING遙か4・風千
    「雲居の空」第3章

    風早ED後の話。
    豊葦原で平和に暮らす千尋と風早。
    姉の一ノ姫の婚姻が近づいており、自分も似たような幸せを求めるが、二ノ姫である以上、それは難しくて……

    アシュヴィンとの顔合わせも終わり、ふたりは中つ国へ帰ることに。
    道中、ふたりは寄り道をして蛍の光を鑑賞する。
    すると、風早が衝撃的な言葉を口にする……。
    「雲居の空」第3章~蛍3.

    「蛍…… 綺麗だね」

    常世の国から帰るころには夏の夜とはいえ、すっかり暗くなっていた。帰り道はずっと言葉を交わさないでいたが、宮殿が近づいたころ、あえて千尋は風早とふたりっきりになることにした。さすがにここまで来れば安全だろう、そう思って。

    短い命を輝かせるかのように光を放つ蛍が自分たちの周りを飛び交っている。明かりが灯ったり消えたりするのを見ながら、千尋はアシュヴィンとの会話を風早に話した。

    「そんなことを言ったのですか、アシュヴィンは」

    半分は穏やかな瞳で受け止めているが、半分は苦笑しているようだ。
    苦笑いの理由がわからず、千尋は風早の顔を見つめる。

    「『昔』、あなたが嫁いだとき、全然相手にしてもらえず、あなたはアシュヴィンに文句を言ったのですけどね」
    1381

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    百合菜

    DONE幸七の「そうだ、カレーを作ろう!」
    2021年2月7日に開催された天野七緒中心WEBオンリーで実施した「エアスケブ」でいたものです。

    リクエストは「炊事をする幸七」。リベンジバージョンです。

    天野家にやってきた八葉に提供するためカレーを作ることになった七緒。
    幸村もそこに手伝いに来るが、七緒はあるひとりの存在を思い出してしまい……
    「この人数でご飯となればやっぱりカレーかな」
    何度目かになる八葉一同による天野家の訪問。
    時間も遅いため、今日はここで過ごし、明日戦国の世へ戻ることにした。
    そんな中、五月と七緒の兄妹は台所で頭を悩ませている。
    七緒を含めて9人の大所帯。
    多少の買い置きはあるが、9人分の食事をいっぺんに用意するとなればメニューは限られてくる。
    「そうだね、それが一番手っ取り早いよね」
    五月の提案に七緒は頷く。
    煮込むのに多少は時間が掛かるが、天野家にある食材でできるものとなれば、カレーが一番早い。
    食べ盛りのものや体格のいいものばかりのため、ルーひと箱で済むかという不安もあるが、仕方がない。足りない場合は買い置きの冷凍コロッケでも出そう。
    七緒がそう考えていると、五月が米を取りにいくため台所から出ていく。

    すると、入れ替わり台所に入ってくるものの気配が。
    「姫、何か手伝いましょうか?」
    爽やかな笑みを浮かべながらそう話しかけてくる。
    なぜだか最近その笑みを見ていると胸が苦しくなるのを感じるが、七緒はあえて気がつかないフリをしている。
    たぶん、これは気がついてはいけない種類の感情だから。
    「あ、幸村さ 2299

    百合菜

    DONE2021年2月7日に開催された天野七緒中心WEBオンリーで実施した「エアスケブ」で書いたものです。
    リクエスト内容は、「はっさくを食べる二人」。

    本当は、「探索の間に、幸村と七緒が茶屋でかわいくはっさくを食べる」話を書きたかったのですが、実際に仕上がったのは夏の真田の庄で熱中症になりかかる七緒ちゃんの話でした^^;

    ※スケブなので、無理やり終わらせた感があります
    「暑い……」

    七緒の口から思わずそんな言葉が出てきた。
    富士に登ったものの、呪詛返しに遭い、療養することを強いられた夏。
    無理ができない歯がゆさと戦いつつも、少しずつ体調を整えるため、その日、七緒は幸村の案内で真田の庄をまわっていた。

    秋の収穫を待ちながら田畑の手入れを怠らないものたちを見ていると、七緒は心が落ち着くのを感じる。
    幸村を育んだ土地というだけに穏やかな空気が流れているのだろうか。ここにはいつまでも滞在してしまいたくなる安心感がある。

    しかし、そのとき七緒はひとつの違和感を覚えた。
    呪詛とか怨霊の類ではない。もっと自分の根本に関わるようなもの。
    おそらくこれは熱中症の前触れ。
    他の土地よりは高地にあるため幾分和らいでいるとはいえ、やはり暑いことには変わりない。
    七緒の変化に幸村も気づいたのだろう。
    手を引かれたかと思うと、あっという間に日陰に連れていかれる。
    そして、横たえられたかと思ったその瞬間、七緒は意識を失っていた。


    水が冷たい。
    そう思いながら七緒が目を開けると、そこには幸村のアップの顔があった。
    「姫、大丈夫ですか?」
    そう言いながら自分を見つめる紫の瞳 1386

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