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    百合菜

    遙かやアンジェで字書きをしています。
    ときどきスタマイ。
    キャラクター紹介ひとりめのキャラにはまりがち。

    こちらでは、完成した話のほか、書きかけの話、連載途中の話、供養の話、進捗なども掲載しております。
    少しでもお楽しみいただけると幸いです。

    ※カップリング・話ごとにタグをつけていますので、よろしければご利用ください

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    百合菜

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    幸七の「そうだ、カレーを作ろう!」
    2021年2月7日に開催された天野七緒中心WEBオンリーで実施した「エアスケブ」でいたものです。

    リクエストは「炊事をする幸七」。リベンジバージョンです。

    天野家にやってきた八葉に提供するためカレーを作ることになった七緒。
    幸村もそこに手伝いに来るが、七緒はあるひとりの存在を思い出してしまい……

    #幸七
    #遙か7
    far7
    #遙かなる時空の中で7
    harukanaruTokiNoNakade7
    ##幸七
    ##遙か7
    ##エアスケブ

    「この人数でご飯となればやっぱりカレーかな」
    何度目かになる八葉一同による天野家の訪問。
    時間も遅いため、今日はここで過ごし、明日戦国の世へ戻ることにした。
    そんな中、五月と七緒の兄妹は台所で頭を悩ませている。
    七緒を含めて9人の大所帯。
    多少の買い置きはあるが、9人分の食事をいっぺんに用意するとなればメニューは限られてくる。
    「そうだね、それが一番手っ取り早いよね」
    五月の提案に七緒は頷く。
    煮込むのに多少は時間が掛かるが、天野家にある食材でできるものとなれば、カレーが一番早い。
    食べ盛りのものや体格のいいものばかりのため、ルーひと箱で済むかという不安もあるが、仕方がない。足りない場合は買い置きの冷凍コロッケでも出そう。
    七緒がそう考えていると、五月が米を取りにいくため台所から出ていく。

    すると、入れ替わり台所に入ってくるものの気配が。
    「姫、何か手伝いましょうか?」
    爽やかな笑みを浮かべながらそう話しかけてくる。
    なぜだか最近その笑みを見ていると胸が苦しくなるのを感じるが、七緒はあえて気がつかないフリをしている。
    たぶん、これは気がついてはいけない種類の感情だから。
    「あ、幸村さん。じゃあ、にんじんを切ってもらってもいいですか?」
    「はい」
    幸村は嫌な顔ひとつせず頷く。そのことに安心しながら、七緒は幸村の目の前にまな板と包丁、そしてニンジンを置く。
    ピーラーで皮のむき方を教えていると、幸村が話しかけてきた。
    「ところで、今日のメニューはなんでしょうか」
    「カレーです」
    「かれーと言いますと、以前、姫が作ってくださった」
    「そうです」
    そう言いながら七緒は以前、戦国の世でカレーを作ったときのことを思い出す。
    あの世界ではなじみのない味。そのため、八葉の者たちに受け入れられるか不安であったが、杞憂だったらしい。
    武蔵と、そして幸村が匂いにつられやってきたのを七緒は昨日のように思い出す。
    「嬉しいです。また『かれー』を食べられるとは。しかも、今回は姫の力になれるのですから」
    そう言いながら、幸村は少したどたどしい手つきで、でも丁寧ににんじんを切っていく。
    嬉しいという気持ちは本当なのだろう。真剣な目つきであるが、彼の頬がどことなく緩んでいることに七緒は気がつく。
     トン、トン、トン、トン。
    ゆっくりではあるが、包丁がまな板に当たる音が規則正しく、聞いていて心地よい。
    それを聞きながら七緒はたまねぎを水に浸す。こうすると、目に染みにくいというのを母親に教えてもらったのを思い出しながら。
    「母さん……」
    つい、その言葉が零れてしまう。
    自分が本当の天野家の娘でないと知ってからまだ顔を合わせていない母さん。血がつながっていないことを微塵も感じさせず、厳しいときは厳しく、優しいときは優しく接してくれた母さん。
    次に会ったとき、自分が両親にどのような感情を抱くか、不安がないとは言えない。
    だけど、この家で育ってきた十年の月日。それが七緒の中では大切な宝物となっている。
    だから、きっと次に会う日が来ても、その関係は簡単に崩れることはない。そんな自信が七緒の中に生まれていた。
    だけど、やはり今、会えないのは寂しい。それが七緒の正直な気持ちでもある。

    「お母君のことを思い出したのですね」
    先ほどの呟きが耳に入っていたのであろう。幸村が七緒を見つめてくることに気がつく。薄紫の瞳でじっと心の奥を見つめるかのように。
    「ええ」
    幸村の前では誤魔化しても無駄だ。七緒は正直に答える。
    「生まれた家と育った家、どちらも自分の家ではないようで」
    「左様ですか……」
    幸村は少しだけ俯き考え込む様子だった。
    七緒はそれに対し、思う節がある。おそらく以前話していた彼の幼少期。それとかぶるものがあるのかもしれない。
    言ってはいけないことを言ったかもしれない。
    そう思いながら幸村の様子を探っていると、幸村ははっと人を惹きつけるような笑みを見せてくる。
    「どちらも姫の家、どちらも姫が帰る家だと思いますよ」
    迷いのない言い方。そのことに七緒は安心する。
    なぜかはわからないが、幸村の言葉は心の奥に浸透するのだ。
    だからこそ、いつかは来るであろう彼との別れがつらい。
    そう思いながら幸村から目を離せないでいると、彼は声色を変える。
    「でも、もっと本音を言えば……」
    そう言いながら幸村は包丁を置き、両手を七緒の肩に置いてくる。
    その熱い眼差しを見ていると、七緒の中で封じ込めている気持ちが飛び出しそうになるのを感じる。
    ドキドキする気持ちに歯止めはきかず、頬が赤くなっていると、幸村が次の言葉を放とうとしてくる。
    何を話すのだろう。そう七緒が期待した次の瞬間。

    「七緒、遅くなってごめん。米が取りにくいところにあってさ~」
    すると、ふたりの空気を壊すかのような爽快な声が台所に響く。
    ふたりはパッと離れる。そして、何事もなかったかのように、先ほどまで行っていた作業を再開する。幸村はぎこちない様子で包丁でにんじんを切り、七緒は水に浸した玉ねぎを取り出す。
    「あれ? どうしたの」
    本当にふたりの間に起こったことに気づいていないか。
    それとも一部始終を見ていてあえてその言葉を使っているのか。
    その声色からは判断できない。
    だけど、あえて自分の口から説明する気にはなれない。
    「何でもないよ、兄さん」
    「ええ、五月殿。本当に何もないです」
    「そう? 本当に? ならいいんだけど」

    幸村が放とうとした言葉。ー私の家に来ませんか。
    それを七緒が聞くことになるのは、もう少し先のこと。
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    百合菜

    DOODLE地蔵の姿での任務を終えたほたるを待っていたのは、あきれ果てて自分を見つめる光秀の姿であった。
    しかし、それには意外な理由があり!?

    お糸さんや蘭丸も登場しつつ、ほたるちゃんが安土の危険から守るために奮闘するお話です。

    ※イベント直前に体調を崩したため、加筆修正の時間が取れず一部説明が欠ける箇所がございます。
    申し訳ございませんが脳内補完をお願いします🙏
    1.

    「まったく君って言う人は……」

    任務に出ていた私を待っていたのはあきれ果てた瞳で私を見つめる光秀さまの姿。
    私が手にしているのは抱えきれないほどの花に、饅頭や団子などの甘味に酒、さらにはよだれかけや頭巾の数々。

    「地蔵の姿になって山道で立つように、と命じたのは確かに私だけど、だからってここまでお供え物を持って帰るとは思わないじゃない」

    光秀さまのおっしゃることは一理ある。
    私が命じられたのは京から安土へとつながる山道を通るものの中で不審な人物がいないか見張ること。
    最近、安土では奇行に走る男女が増えてきている。
    見たものの話によれば何かを求めているようだが、言語が明瞭ではないため求めているものが何であるかわからず、また原因も特定できないとのことだった。
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    百合菜

    MAIKING遙か4・風千
    「雲居の空」第3章

    風早ED後の話。
    豊葦原で平和に暮らす千尋と風早。
    姉の一ノ姫の婚姻が近づいており、自分も似たような幸せを求めるが、二ノ姫である以上、それは難しくて……

    アシュヴィンとの顔合わせも終わり、ふたりは中つ国へ帰ることに。
    道中、ふたりは寄り道をして蛍の光を鑑賞する。
    すると、風早が衝撃的な言葉を口にする……。
    「雲居の空」第3章~蛍3.

    「蛍…… 綺麗だね」

    常世の国から帰るころには夏の夜とはいえ、すっかり暗くなっていた。帰り道はずっと言葉を交わさないでいたが、宮殿が近づいたころ、あえて千尋は風早とふたりっきりになることにした。さすがにここまで来れば安全だろう、そう思って。

    短い命を輝かせるかのように光を放つ蛍が自分たちの周りを飛び交っている。明かりが灯ったり消えたりするのを見ながら、千尋はアシュヴィンとの会話を風早に話した。

    「そんなことを言ったのですか、アシュヴィンは」

    半分は穏やかな瞳で受け止めているが、半分は苦笑しているようだ。
    苦笑いの理由がわからず、千尋は風早の顔を見つめる。

    「『昔』、あなたが嫁いだとき、全然相手にしてもらえず、あなたはアシュヴィンに文句を言ったのですけどね」
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    百合菜

    DONE幸七の「そうだ、カレーを作ろう!」
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    リクエストは「炊事をする幸七」。リベンジバージョンです。

    天野家にやってきた八葉に提供するためカレーを作ることになった七緒。
    幸村もそこに手伝いに来るが、七緒はあるひとりの存在を思い出してしまい……
    「この人数でご飯となればやっぱりカレーかな」
    何度目かになる八葉一同による天野家の訪問。
    時間も遅いため、今日はここで過ごし、明日戦国の世へ戻ることにした。
    そんな中、五月と七緒の兄妹は台所で頭を悩ませている。
    七緒を含めて9人の大所帯。
    多少の買い置きはあるが、9人分の食事をいっぺんに用意するとなればメニューは限られてくる。
    「そうだね、それが一番手っ取り早いよね」
    五月の提案に七緒は頷く。
    煮込むのに多少は時間が掛かるが、天野家にある食材でできるものとなれば、カレーが一番早い。
    食べ盛りのものや体格のいいものばかりのため、ルーひと箱で済むかという不安もあるが、仕方がない。足りない場合は買い置きの冷凍コロッケでも出そう。
    七緒がそう考えていると、五月が米を取りにいくため台所から出ていく。

    すると、入れ替わり台所に入ってくるものの気配が。
    「姫、何か手伝いましょうか?」
    爽やかな笑みを浮かべながらそう話しかけてくる。
    なぜだか最近その笑みを見ていると胸が苦しくなるのを感じるが、七緒はあえて気がつかないフリをしている。
    たぶん、これは気がついてはいけない種類の感情だから。
    「あ、幸村さ 2299

    百合菜

    DONE2021年2月7日に開催された天野七緒中心WEBオンリーで実施した「エアスケブ」で書いたものです。
    リクエスト内容は、「はっさくを食べる二人」。

    本当は、「探索の間に、幸村と七緒が茶屋でかわいくはっさくを食べる」話を書きたかったのですが、実際に仕上がったのは夏の真田の庄で熱中症になりかかる七緒ちゃんの話でした^^;

    ※スケブなので、無理やり終わらせた感があります
    「暑い……」

    七緒の口から思わずそんな言葉が出てきた。
    富士に登ったものの、呪詛返しに遭い、療養することを強いられた夏。
    無理ができない歯がゆさと戦いつつも、少しずつ体調を整えるため、その日、七緒は幸村の案内で真田の庄をまわっていた。

    秋の収穫を待ちながら田畑の手入れを怠らないものたちを見ていると、七緒は心が落ち着くのを感じる。
    幸村を育んだ土地というだけに穏やかな空気が流れているのだろうか。ここにはいつまでも滞在してしまいたくなる安心感がある。

    しかし、そのとき七緒はひとつの違和感を覚えた。
    呪詛とか怨霊の類ではない。もっと自分の根本に関わるようなもの。
    おそらくこれは熱中症の前触れ。
    他の土地よりは高地にあるため幾分和らいでいるとはいえ、やはり暑いことには変わりない。
    七緒の変化に幸村も気づいたのだろう。
    手を引かれたかと思うと、あっという間に日陰に連れていかれる。
    そして、横たえられたかと思ったその瞬間、七緒は意識を失っていた。


    水が冷たい。
    そう思いながら七緒が目を開けると、そこには幸村のアップの顔があった。
    「姫、大丈夫ですか?」
    そう言いながら自分を見つめる紫の瞳 1386