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    百合菜

    遙かやアンジェで字書きをしています。
    ときどきスタマイ。
    キャラクター紹介ひとりめのキャラにはまりがち。

    こちらでは、完成した話のほか、書きかけの話、連載途中の話、供養の話、進捗なども掲載しております。
    少しでもお楽しみいただけると幸いです。

    ※カップリング・話ごとにタグをつけていますので、よろしければご利用ください

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    百合菜

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    2021年2月7日に開催された天野七緒中心WEBオンリーで実施した「エアスケブ」で書いたものです。

    リクエストは「炊事をする幸七」です。
    ……が、実はこれは没案の方です。
    (それを先に書く私も私ですが^^;)

    そもそも「炊事」とは何なのかとか、買い物で終わっているじゃない!という突っ込みはあるかと思いますが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。

    #幸七
    #遙か7
    far7
    #遙かなる時空の中で7
    harukanaruTokiNoNakade7
    ##幸七
    ##遙か7
    ##エアスケブ

    「姫様、こちらは何ですか?」

    何度目になるかわからない八葉たちによる令和の世の天野家の訪問。
    さすがに慣れてきたのか、八葉の者たちは早速手洗いを利用したり、リビングでソファに座りながらテレビを見たりするなど、思い思いのくつろぎ方を見出すようになった。
    その中で、七緒と五月、そして武蔵の三人は八葉に茶と軽い食事を出すために台所へいた。

    「これは、電子レンジって言うんだ」
    「でんし…れん……じ、ですか?」

    水道水の出し方や冷蔵庫の扱いには慣れてきた武蔵であったが、台所の片隅にある電子レンジの存在は使ったことがないこともあり認識していなかったらしい。
    七緒もそのことに気がつき、武蔵に説明する。

    「うん。説明するより、実際に見てもらった方がいいと思うから、使ってみようか」

    そう言って七緒は冷凍室から冷凍ピザを取り出す。
    そして、慣れた手つきで袋を開け、さらにピザを乗せていく。
    数分後、軽快な電子音が鳴り響き、そしてレンジの扉を開くとトマトソース匂いが台所に広がっていく。

    「ほお、相変わらず神子殿の世界にあるものは興味深いね」
    「そうですね、兼続殿」

    そこに現れたのは兼続と幸村のふたり。

    「三人だけに任せるのも気が引けたので来てみたのだが、何やら面白いものがあるらしいね」

    そう言うが早いか兼続はレンジの扉を開けたり閉めたり、はたまたボタンを押したりして、機能を試そうとしている。
    五月が兼続に説明しているのを眺めていると、幸村が七緒に話しかけてくる。

    「姫の世界は食べ物を保存出来たり、素早く調理できる道具があって素晴らしいですね」

    その言葉は、一見感嘆しているように聞こえたが、声の奥には幸村の切実なる想いが含まれていることに七緒は気がつく。
    令和の世とは異なり、食物の保存が難しい時代。
    冬場の食糧確保はどこでも重要課題であり、また保存食も内容に優れているとは言い難いため温かい食べ物の存在のありがたみを実感するようになった。

    「そうですね。うちは両親が長期不在になることもあるので、冷蔵庫と電子レンジにはお世話になりっぱなしです」
    「そうなのですね。それにしても、この『ぴざ』というのでしたっけ? 美味しそうですね」

    幸村との何気ない会話。
    そのときは、目先のことすら見通しがきかず、ましてや幸村には淡い気持ちを抱いていたものの関係が深まる可能性はないのではとすら思っていた。
    そのため、それ以上、そこで会話は終わってしまった。

    ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

    「幸村さん、待ちましたか!?」

    戦乱の世で五行の乱れを正してから早数年。
    幸村は七緒とともに令和の世へとやってきた。
    そして、七緒の大学進学を機に、東京で一緒に暮らしている。
    七緒の帰宅に合わせて、幸村とは駅で待ち合わせをし、帰りにスーパーへ寄るのがすっかり日課となっていた。

    その日もいつもの日のように野菜コーナーからまわり、肉・魚とまわろうとしていた。
    しかし、買い物かごを持った幸村は野菜コーナーを素通りし、さらには肉も魚にも目を向けず、冷凍食品のコーナーへと一目散に向かった。

    「幸村さん!?」

    七緒は幸村の意図に気がつき、思わず大きな声を上げそうになる。
    なんとかボリュームを抑えたものの、その分、しっかりと瞳はキリっと幸村を見据えている。

    「ここ、冷凍食品売り場ですよね?」
    「ええ」

    あちらの世でもよく見たような一見穏やかそうな、でも内心は意思を崩す気のない笑みを幸村は見せる。
    でも、それに負けじと七緒も応戦する。

    「幸村さんに美味しいものを食べさせたいのに!!」

    すると、幸村は周りをきょろきょろと見渡してから七緒の瞳をまっすぐ見て話す。

    「姫、それはどうしても『手作り』じゃないといけないものなのでしょうか?」

    手作り、とのことにアクセントが込められていることに七緒は気がつく。
    何かに気づきそうになったところに、幸村は畳みかけるように話しかける。

    「確かに、姫が私のために心を込めて炊事をしていただけるのはありがたいです。ですが、そのためにあなたが疲れては本末転倒ですし、調理の手間を省いて時間を生み出すことも時には必要かと思います」

    そう言われてここ最近のことを思い出す。
    幸村のためにと思い、毎日バランスの良い食事のメニューを考え買い物に向かい、台所に立っていた。ときには前日の余り物で済ませることもあるが、ほぼ毎日とのことともなれば神経が疲れているのも事実であった。
    幸村は気がついていたのかもしれない。七緒は知らず知らずのうちに無理をしていたことに。
    そして、彼女がつぶれる前に他の選択肢を見出したかったのかもしれない。

    「先人たちの育んだ知恵を存分に使うのも、決して悪くないと思います」

    そう言いながら幸村が買い物かごに突っ込んだのは冷凍ピザ。
    武蔵にレンジの使い方を教えるために解凍したときのことを七緒は思い出す。
    あのとき、幸村はピザの匂いに惹かれており、そのあと実はピザをたらい上げ、さらにもう一枚解凍したという裏話まである。

    「幸村さん、本当はピザを食べたいだけじゃないんですか?」
    「あ、バレましたか?」

    幸村はケロッとした表情を七緒に見せる。
    でも、その晴れやかな表情を見ていると、手作りにこだわっていた自分がちょっとだけバカらしく思えてくる。

    「では、今日はこのピザに合う総菜と飲み物を買っていきましょうか」

    そう言いながら、かごを持っていない方の手を七緒の手とつないでくる。
    この人には勝てない、絶対に。
    そう思いながら七緒は幸村について混雑しているスーパーの売り場をまわる。
    つながっている手が力強く、それでいて温かいのが印象的であった。
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    百合菜

    DOODLE地蔵の姿での任務を終えたほたるを待っていたのは、あきれ果てて自分を見つめる光秀の姿であった。
    しかし、それには意外な理由があり!?

    お糸さんや蘭丸も登場しつつ、ほたるちゃんが安土の危険から守るために奮闘するお話です。

    ※イベント直前に体調を崩したため、加筆修正の時間が取れず一部説明が欠ける箇所がございます。
    申し訳ございませんが脳内補完をお願いします🙏
    1.

    「まったく君って言う人は……」

    任務に出ていた私を待っていたのはあきれ果てた瞳で私を見つめる光秀さまの姿。
    私が手にしているのは抱えきれないほどの花に、饅頭や団子などの甘味に酒、さらにはよだれかけや頭巾の数々。

    「地蔵の姿になって山道で立つように、と命じたのは確かに私だけど、だからってここまでお供え物を持って帰るとは思わないじゃない」

    光秀さまのおっしゃることは一理ある。
    私が命じられたのは京から安土へとつながる山道を通るものの中で不審な人物がいないか見張ること。
    最近、安土では奇行に走る男女が増えてきている。
    見たものの話によれば何かを求めているようだが、言語が明瞭ではないため求めているものが何であるかわからず、また原因も特定できないとのことだった。
    6326

    百合菜

    MAIKING遙か4・風千
    「雲居の空」第3章

    風早ED後の話。
    豊葦原で平和に暮らす千尋と風早。
    姉の一ノ姫の婚姻が近づいており、自分も似たような幸せを求めるが、二ノ姫である以上、それは難しくて……

    アシュヴィンとの顔合わせも終わり、ふたりは中つ国へ帰ることに。
    道中、ふたりは寄り道をして蛍の光を鑑賞する。
    すると、風早が衝撃的な言葉を口にする……。
    「雲居の空」第3章~蛍3.

    「蛍…… 綺麗だね」

    常世の国から帰るころには夏の夜とはいえ、すっかり暗くなっていた。帰り道はずっと言葉を交わさないでいたが、宮殿が近づいたころ、あえて千尋は風早とふたりっきりになることにした。さすがにここまで来れば安全だろう、そう思って。

    短い命を輝かせるかのように光を放つ蛍が自分たちの周りを飛び交っている。明かりが灯ったり消えたりするのを見ながら、千尋はアシュヴィンとの会話を風早に話した。

    「そんなことを言ったのですか、アシュヴィンは」

    半分は穏やかな瞳で受け止めているが、半分は苦笑しているようだ。
    苦笑いの理由がわからず、千尋は風早の顔を見つめる。

    「『昔』、あなたが嫁いだとき、全然相手にしてもらえず、あなたはアシュヴィンに文句を言ったのですけどね」
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