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    百合菜

    遙かやアンジェで字書きをしています。
    ときどきスタマイ。
    キャラクター紹介ひとりめのキャラにはまりがち。

    こちらでは、完成した話のほか、書きかけの話、連載途中の話、供養の話、進捗なども掲載しております。
    少しでもお楽しみいただけると幸いです。

    ※カップリング・話ごとにタグをつけていますので、よろしければご利用ください

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    百合菜

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    #はるななエンディング後の幸せな風景
    に参加させていただいたときの作品です。

    現代の東京で幸村と過ごす七緒。
    顔馴染みの果物屋さんには幸村との関係を冷やかされる日々。
    そんな中、クリスマスイブに幸村と行ったディナーで七緒が言われたこととは?

    ##幸七
    ##遙か7
    #幸七
    #遙か7
    far7
    #遙かなる時空の中で7
    harukanaruTokiNoNakade7

    「七緒ちゃん、今日はりんごが安いよ!」

    東京来て二度目の冬。
    新しい年まで数日となったその日、コートにくるまれながら七緒はマンションまでの道を歩く。去年の冬に幸村と一緒に買ったものだが、もこもこした感触が気に入っていて、それを着るだけで寒さが吹き飛ぶような気がする。
    そして、商店街を歩いていると、すっかり顔なじみとなった果物屋の店員に話しかけられる。

    「りんごか……」

    幸村の出身である信濃はりんごの産地として有名だが、幸村が過ごした時期はまだりんごの栽培がされていなかったらしい。
    そのため、こちらの世界でりんごを口にしたときはその甘さと酸っぱさが混ざった味に目を白黒させていた。
    でも、それは最初だけのこと。その後、りんごは幸村の好物のひとつに加わった。

    「七緒ちゃんのところの旦那さん、よく食べているよね?」
    「旦那って、私たちまだそんな関係じゃないですよ」

    照れ隠しもあり思わずそんなことを言ってしまう。だけど、その答えは想定内だったのだろう。若い店員は面白がってさらに話しかけてくる。

    「この間も仲良くこの店の前を手をつないで歩いていたじゃない。ふたりとも嬉しそうにしながら。それに左手の薬指についているそれ、気になるな~」

    店員の言葉に七緒はドキリとする。
    隠しているつもりはなかったけど、だからといってそのことを聞かれると恥ずかしいものがある。
    そして、七緒は数日前のクリスマスイブに起きたことを思い出す。


    その日、幸村がディナーとして連れてきてくれたのは都内のレストランであった。
    いつもカジュアルな店に行くことが多かったがそれよりも遙かに格が高いことが伝わってきたため、七緒は下ろし立てのワンピースを着ることにした。ベロア生地に花柄が浮かび上がるようなデザインは少し大人っぽい気もしたが、その日はそれが着たい気分であった。

    「素敵ですね……」

    電車の中で幸村がほんのり頬を染めながらそう言ってくれたのが嬉しかった。
    そして、幸村も普段のラフな格好ではなく、スーツを着ている。異世界で過ごしてきた彼にとってはあまり着ない類いのものであろうが、少なくとも七緒の目には着こなしているように見えた。

    「素敵なお店ですね……」
    「ええ、せっかく二十歳になったのですから、一緒にワインを楽しみたいと思いまして」

    その言葉を聞いて七緒は思い出す。
    幸村が現代に来てから毎年クリスマスはともに過ごしているが、自分は未成年のためアルコールを楽しむことがせず、幸村が楽しそうにワインを飲む様子を近くから眺めていた。

    『あなたが二十歳になったら、一緒にお酒を嗜みましょうね』

    その言葉を覚えていたのだろう。些細と言われればそれっきりだけど、そのときの約束を七緒の胸がトクンと音を立てるのを感じる。

    食事は粛々と進んでいく。
    ドレッシングが味を引き立てる前菜、丁寧に作られたスープ絶妙な焼き加減とソースによるハーモニーを引き出すメイン、そして食後のコーヒーなどなど。
    どれもが絶品で、さらに初めて飲むワインも七緒にとって飲みやすいものであった。
    そして、気分がすっかり高揚した頃、幸村が神妙な面持ちで七緒を見つめてきた。

    「今日は折り入って話がありまして……」

    なんだろ。
    一瞬、不安な気持ちが横切るが、クリスマスイブにこのような場で食事をともにしているのだから、悪い話ではないはず。
    むしろ……
    つい期待の気持ちが大きくなるのを七緒は感じる。

    「あなたがまだ学生という立場であることは理解しているのですが……」

    そう前置きをし、七緒の瞳を真っ直ぐ見つめてくる。出会った頃から変わりがない澄んだ瞳で。

    「私と結婚していただけませんか?」

    七緒は歓喜の気持ちで胸がいっぱいになる。
    異世界にいたときから抱えていた幸村と一緒にいたいという気持ち。
    戦国時代では自分の年頃の女性の結婚は珍しくないが、一方、現代でその年頃で結婚する人はほとんどいない。彼との先行きの長さを考えてため息を吐いたことも一度二度ではない。

    「卒業後で構いませんが、こうして言葉にしないとあなたは魅力的ですので、他の男性に取られそうで……」

    不安げに幸村はそう語る。
    その言葉を聞いて七緒はぶんぶんと首を横に振る。
    時空を越えて巡り合い、想いを交わし、そうして結ばれた男性。それ以外の人に目移りすることがあるわけない。むしろ令和の世に適応していくに従い、幸村が自分から離れていくのではないかと不安に気持ちすらあるのに。

    「嬉しいです。一緒にいたいのは私も同じだったから」

    その言葉を聞いて幸村は安心したらしい。
    ポケットから何かを差し出してくる。

    「少し早いですが、お約束の品として用意させていただきました」

    七緒の目の前にあるのはラッピングがほどこされた小さな箱。
    話の展開から何が入っているかは想像に難くない。

    「開けてもいいですか?」
    「もちろんですとも」

    七緒はそっと箱に掛けられていたリボンを外す。そして、包装紙を丹念に開く。
    箱の中から出てきたのは指輪だった。学生の自分でも普段使いできるシンプルなデザインの。

    「さっそくつけさせていただきますね……」

    そう言いながら指輪をはめる。まるで幸村が傍で守ってくれるような安心感。それに包まれているような気がした。


    「七緒ちゃん、その様子だといいことがあったみたいだね」

    記憶を呼び起こしていたら自分の世界に入っていたらしい。果物屋の前でりんごを見つめながら固まっていたことに七緒は気がつく。
    詳しいことを話さなくても店員は何かを察したのだろう。
    りんごの袋をつかんだ七緒に「よかったね」、左手の薬指を見ながらそれだけを話してくる。
    そして、りんごを受け取った七緒は歩を進める。きっと愛しい人が待っているマンションへ。

    冬の東京の風は冷たかったが、そんなことを気にしないくらい温かい気持ちになりながら七緒はマンションまでの道を歩いた。
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    百合菜

    DOODLE地蔵の姿での任務を終えたほたるを待っていたのは、あきれ果てて自分を見つめる光秀の姿であった。
    しかし、それには意外な理由があり!?

    お糸さんや蘭丸も登場しつつ、ほたるちゃんが安土の危険から守るために奮闘するお話です。

    ※イベント直前に体調を崩したため、加筆修正の時間が取れず一部説明が欠ける箇所がございます。
    申し訳ございませんが脳内補完をお願いします🙏
    1.

    「まったく君って言う人は……」

    任務に出ていた私を待っていたのはあきれ果てた瞳で私を見つめる光秀さまの姿。
    私が手にしているのは抱えきれないほどの花に、饅頭や団子などの甘味に酒、さらにはよだれかけや頭巾の数々。

    「地蔵の姿になって山道で立つように、と命じたのは確かに私だけど、だからってここまでお供え物を持って帰るとは思わないじゃない」

    光秀さまのおっしゃることは一理ある。
    私が命じられたのは京から安土へとつながる山道を通るものの中で不審な人物がいないか見張ること。
    最近、安土では奇行に走る男女が増えてきている。
    見たものの話によれば何かを求めているようだが、言語が明瞭ではないため求めているものが何であるかわからず、また原因も特定できないとのことだった。
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    百合菜

    MAIKING遙か4・風千
    「雲居の空」第3章

    風早ED後の話。
    豊葦原で平和に暮らす千尋と風早。
    姉の一ノ姫の婚姻が近づいており、自分も似たような幸せを求めるが、二ノ姫である以上、それは難しくて……

    アシュヴィンとの顔合わせも終わり、ふたりは中つ国へ帰ることに。
    道中、ふたりは寄り道をして蛍の光を鑑賞する。
    すると、風早が衝撃的な言葉を口にする……。
    「雲居の空」第3章~蛍3.

    「蛍…… 綺麗だね」

    常世の国から帰るころには夏の夜とはいえ、すっかり暗くなっていた。帰り道はずっと言葉を交わさないでいたが、宮殿が近づいたころ、あえて千尋は風早とふたりっきりになることにした。さすがにここまで来れば安全だろう、そう思って。

    短い命を輝かせるかのように光を放つ蛍が自分たちの周りを飛び交っている。明かりが灯ったり消えたりするのを見ながら、千尋はアシュヴィンとの会話を風早に話した。

    「そんなことを言ったのですか、アシュヴィンは」

    半分は穏やかな瞳で受け止めているが、半分は苦笑しているようだ。
    苦笑いの理由がわからず、千尋は風早の顔を見つめる。

    「『昔』、あなたが嫁いだとき、全然相手にしてもらえず、あなたはアシュヴィンに文句を言ったのですけどね」
    1381

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    百合菜

    DONE2021年2月7日に開催された天野七緒中心WEBオンリーで実施した「エアスケブ」で書いたものです。
    遅刻となってしまい、申し訳ございません。
    リクエスト内容は、「空を見る二人」。

    5章をイメージして書きました。では、どうぞ。

    ※ゲームを見返すエネルギーがないため、取り急ぎ「荘園」という言葉を使いました。
    後日見返して訂正します。
    「若様、姫様、そろそろ休んだらどうだい?」

    その日、七緒は幸村とともに真田家の荘園の見回ることとなった。
    富士で呪詛返しを受けたため、現在、七緒は信濃でゆっくりと療養している。幸い身体の調子は戻ってきており、再度の富士登山に向けて体制を整えているところであった。

    見回りと言っても幸村はただ視察するだけではなく、農作業に加わる。
    故郷を離れていた時期が長いため、民とともに田畑の手入れを行うことが何よりの喜びだと話す様子が七緒には印象的だった。
    幸村には「姫は木陰で休んでいてください」と言われるが、周りのものがあくせく働いているのを見ると申し訳ない気持ちになる。それに幸村が生まれた土地のために汗水を流しているのだから、少しでもいいから力になりたい。
    そう思って七緒もともに身体を動かしていたのだが、思っていた以上に時間が経ったらしい。
    太陽はいつの間にか空の一番高いところまで上り、強い日差しが七緒と幸村を照らしていた。
    「せめてものお礼に」と言われて差し出されたおむすびを七緒は口に頬張る。
    塩でシンプルに味付けされたものだが、空腹の身にはそれが却っておいしく感じる。

    ふと何気なく七緒は 1602

    百合菜

    DONE2021年2月7日に開催された天野七緒中心WEBオンリーで実施した「エアスケブ」で書いたものです。
    リクエスト内容は、「はっさくを食べる二人」。

    本当は、「探索の間に、幸村と七緒が茶屋でかわいくはっさくを食べる」話を書きたかったのですが、実際に仕上がったのは夏の真田の庄で熱中症になりかかる七緒ちゃんの話でした^^;

    ※スケブなので、無理やり終わらせた感があります
    「暑い……」

    七緒の口から思わずそんな言葉が出てきた。
    富士に登ったものの、呪詛返しに遭い、療養することを強いられた夏。
    無理ができない歯がゆさと戦いつつも、少しずつ体調を整えるため、その日、七緒は幸村の案内で真田の庄をまわっていた。

    秋の収穫を待ちながら田畑の手入れを怠らないものたちを見ていると、七緒は心が落ち着くのを感じる。
    幸村を育んだ土地というだけに穏やかな空気が流れているのだろうか。ここにはいつまでも滞在してしまいたくなる安心感がある。

    しかし、そのとき七緒はひとつの違和感を覚えた。
    呪詛とか怨霊の類ではない。もっと自分の根本に関わるようなもの。
    おそらくこれは熱中症の前触れ。
    他の土地よりは高地にあるため幾分和らいでいるとはいえ、やはり暑いことには変わりない。
    七緒の変化に幸村も気づいたのだろう。
    手を引かれたかと思うと、あっという間に日陰に連れていかれる。
    そして、横たえられたかと思ったその瞬間、七緒は意識を失っていた。


    水が冷たい。
    そう思いながら七緒が目を開けると、そこには幸村のアップの顔があった。
    「姫、大丈夫ですか?」
    そう言いながら自分を見つめる紫の瞳 1386

    百合菜

    DONE2021年2月7日に開催された天野七緒中心WEBオンリーで実施した「エアスケブ」で書いたものです。

    リクエストは「炊事をする幸七」です。
    ……が、実はこれは没案の方です。
    (それを先に書く私も私ですが^^;)

    そもそも「炊事」とは何なのかとか、買い物で終わっているじゃない!という突っ込みはあるかと思いますが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
    「姫様、こちらは何ですか?」

    何度目になるかわからない八葉たちによる令和の世の天野家の訪問。
    さすがに慣れてきたのか、八葉の者たちは早速手洗いを利用したり、リビングでソファに座りながらテレビを見たりするなど、思い思いのくつろぎ方を見出すようになった。
    その中で、七緒と五月、そして武蔵の三人は八葉に茶と軽い食事を出すために台所へいた。

    「これは、電子レンジって言うんだ」
    「でんし…れん……じ、ですか?」

    水道水の出し方や冷蔵庫の扱いには慣れてきた武蔵であったが、台所の片隅にある電子レンジの存在は使ったことがないこともあり認識していなかったらしい。
    七緒もそのことに気がつき、武蔵に説明する。

    「うん。説明するより、実際に見てもらった方がいいと思うから、使ってみようか」

    そう言って七緒は冷凍室から冷凍ピザを取り出す。
    そして、慣れた手つきで袋を開け、さらにピザを乗せていく。
    数分後、軽快な電子音が鳴り響き、そしてレンジの扉を開くとトマトソース匂いが台所に広がっていく。

    「ほお、相変わらず神子殿の世界にあるものは興味深いね」
    「そうですね、兼続殿」

    そこに現れたのは兼続と幸村のふ 2359

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    百合菜

    PAST遙か6・有梓
    「恋心は雨にかき消されて」

    2019年有馬誕生日創作。
    私が遙か6にはまったのは、猛暑の2018年のため、創作ではいつも「暑い暑い」と言っている有馬と梓。
    この年は気分を変えて雨を降らせてみることにしました。
    おそらくタイトル詐欺の話。
    先ほどまでのうだるような暑さはどこへやら、浅草の空は気がつくと真っ黒な雲が浮かび上がっていた。

    「雨が降りそうね」

    横にいる千代がそう呟く。
    そして、一歩後ろを歩いていた有馬も頷く。

    「ああ、このままだと雨が降るかもしれない。今日の探索は切り上げよう」

    その言葉に従い、梓と千代は足早に軍邸に戻る。
    ドアを開け、建物の中に入った途端、大粒の雨が地面を叩きつける。
    有馬の判断に感謝しながら、梓は靴を脱いだ。

    「有馬さんはこのあと、どうされるのですか?」
    「俺は両国橋付近の様子が気になるから、様子を見てくる」
    「こんな雨の中ですか!?」

    彼らしい答えに納得しつつも、やはり驚く。
    普通の人なら外出を避ける天気。そこを自ら出向くのは軍人としての役目もあるのだろうが、おそらく有馬自身も責任感が強いことに由来するのだろう。

    「もうすぐ市民が楽しみにしている催しがある。被害がないか確かめるのも大切な役目だ」

    悪天候を気にする素振りも見せず、いつも通り感情が読み取りにくい表情で淡々と話す。
    そう、これが有馬さん。黒龍の神子とはいえ、踏み入れられない・踏み入れさせてくれない領域。
    自らの任 1947