流砂迷宮「も〜!やだぁブーツに砂が……あ、待って!……ねぇアルダシア。こんなところになんの用があるの?」
薄い空色の長い髪をふわりと揺らしながらサリアがアルダシアへ駆け寄る。
ここは中央ザナラーン、ブラックブッシュの北部にある洞窟のひとつ。中は上にも横にも穴が連なり至る所で流砂が渦巻いている。
日差しとともに降り注いでくる砂が髪にまとわりつき、サリアは忙しなく手で髪を梳く。
相変わらず騒がしい女だ。着いてこいと命じた覚えはないというのにこんな所まで着いてくる。それでいて砂がどう、蟻がどうなどとどうでもいい事で喚く。それなりに使える駒で無ければとうに斬り捨てている。
イラついた様子でアルダシアはサリアを睨む。まさか己でもこの地へ足を踏み入れる事になるとは思わなかった。柄にもなく精神がザワつくのを感じ砂を強く踏み付けた。
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