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    ailout2

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    2度目の二人 少女漫画です🤦‍♀️

    #WT

    Shall We?沢山の人で賑わう御屋敷。
    煌びやかに着飾った人達。あまりに現実味がなくて時間よりも早く着いたにも関わらず少し離れてその光景を眺めている。

    幼い頃はこういう場所にも連れてこられたものだけど、そんな世界から離れて随分と経つ。
    何より、昔は幼さで許されていたが今はもう大人になってしまった。
    社交界の振る舞いなんて、ちゃんと学ぶ前に縁がなくなってしまったのだから尻込みしてしまうのは仕方ないと言うもの。

    どうして俺がこんな場所にいるのかと言うのは先日の話…
    たまたま条件がよく受けた依頼がリムサの富豪の護衛というもので、それはもう、予想以上に大変な仕事だったのだけど何とか遂行する事が出来、報酬の他にお礼をしたいとパーティに呼ばれた、という、まぁ分かりやすい理由だ。

    美味しいもの食べれるかも!とひとつ返事で招待を受けてしまった自分の浅はかさを恨む。

    着るものだって何がいいのかさっぱりわからなかった。冒険者仲間から情報を集めたところ、その富豪はどうやら東方文化に興味があるそうで陶磁器や骨董品を貿易しているらしかった。

    真っ向から着飾ったところで自分なんて服に着られるだけだと思い、今日の為に奮発して東方雅人装備を用意した。
    この肌の色に東方の服は些かどうなのかと思ったけれど、自分で言うのも何だが悪くないと思う…いや、そう思っていた。今日この場に来るまでは…

    (フリルにリボン、燕尾服…)

    金のアクセサリーや色とりどりの宝石を主体として着飾るウルダハのパーティとは違い、リムサのパーティはまるで絵本の世界だった。

    (場違い……今の俺以上にこの言葉が当てはまる人間は居ないんじゃないかな…このまま帰ってしまおうか…いや、でも行くって言っちゃったし…)

    「はぁ、仕方ない、笑われるならそれでもいいや…食べるだけ食べて帰ろう…!」

    意を決して屋敷の門をくぐり美しい庭を進む。
    案の定、周りの人間の目が集まりヒソヒソ声全てが自分の話をしているように思えてしまう。

    (う…そんなにおかしいかな…)

    急ぎ足で庭を抜け屋敷に入ると件の富豪が来賓者に挨拶回りをしている。次は自分の番だ。目が合い彼がこちらへ向かってくる。

    「ご、ごきげんよう、先日はありがとうございました!本日はお招き頂き感謝します…」
    「君は確か冒険者の…見違えたな、素敵なお召し物だ、東方の物だね。今日は招待を受けてくれてありがとう、ゆっくりしていってください。」
    「あ、はい!」

    (褒められた…)

    先日護衛した時も感じのいい人だとは思ったけど、流石と言ったところだ。
    とりあえず挨拶が終わったことで安堵する。後はもう隅っこで飲み食いしていればどうってことない。

    ……ところがその思いは叶わず、社交界で見慣れない顔だからか、東方の装備のせいか、次から次へと人が話し掛けてくる。大抵は金のない冒険者だ、と言うと波のように引いて行ったが、時には逆に興味を引いてしまうこともあり、一人のミッドランダー族の女性があれやこれやと話しかけてきた。

    (参ったな…何話したらいいかわかんないんだけど…)

    グイグイとくる女性に戸惑っていると突然照明が暗くなり、音楽が変わる。

    「あら、ダンスタイムですわね、一曲お相手してくださる?」
    「えっ!?そんな、俺困ります…!」

    (聞いてない、踊るなんて、そんなのした事ない…!)
    女性に強引に手を取られ、思わず手を後ろに引いて抵抗すると反動でバランスを崩し後ろに倒れそうになる。

    「…あっ!」
    「おっと、大丈夫かテッド。」
    「…へっ!?だ、誰!?」

    そのまま倒れて恥をかくかと思ったら不意に後ろから支えられ、更に名前を呼ばれたものだから驚いて振り返ると知っている顔……そう、確かこの男…

    「う、ウェド・ディアス!?」
    「覚えていてくれたとは嬉しいね。」
    「あんた…なんでここに…」

    正直、ウェドは俺と同じくこんな場所には縁のない冒険者だと思っていた。
    しかし今のウェドは肩まである長めの灰茶の髪をひとつに結んでスラリとした品のいいスーツに身を包み、どうみても社交界に現れた高嶺の紳士と言った風貌だった。

    「あら!素敵なお方…ワタクシと一曲踊って下さらない?」

    さっきまで俺に夢中に話しかけていた女性もウェドが現れた途端、彼女の目にはウェドしか映っていなかった。

    (そりゃそうだよな…でもこれで踊らなくてすむ…)

    ウェドはひらりと俺の前に出ると女性の手を取り手の甲にそっと唇を寄せる。手馴れた無駄のない完璧な動作だ。

    「光栄ですレディ。…しかし、貴女の手は随分汚れてしまっているようだ。」
    「なんですって?」
    「失礼ながら、調べさせて頂きました。貴女が若い男を買い漁り、弄んだ後妖異の血を飲ませていると言うことを…」
    「…貴様!」
    「先日この屋敷の彼を狙ったのも貴女ですね。…おっと、この場で騒がない方がいいぜ。俺一人だなんて思わないことだ。さ、レディ。お手をどうぞ。」
    「…ぐっ…!」

    目の前の出来事が思いもしない展開をみせ、呆気に取られているとウェドがウインクをして目配せをしてきた。

    「え、あ…」
    「悪いな、テッド。また後で話そう。」

    ウェドは女性の腰に手を回し、如何にもお持ち帰りをする色男のように女性を連れて屋敷を出て行った。恐らく外にはイエロージャケットが待機しているのだろう。

    「なん…なんだよ…!」

    先日の護衛任務は確かにおかしかった。護衛なんてのは大抵チンピラから護るよくある仕事なのに、突然見慣れない妖異が現れてそれはもう大変だった。
    そんな物に襲われる富豪ってなんなんだ、と富豪の彼を疑いもしたが、彼の人の良さを信用する事にしたのだ。
    恐らく彼が富豪かどうかというのは関係なく、単純にあの女の好みだったのだろう…

    そしてあの日の依頼の裏にはウェドが居たのだ。出会った日もウェドは俺たちと同じ任務を受けているように見えて、本当は水面下でもっと大きな仕事を請け負っていた。

    (またウェドに美味しいところ持っていかれたってわけか…)

    その時は報酬も全部俺たちの手取りになってしまい、むしろ美味しいのは俺たちの方ではあったのだけど…こうも仕事の差を見せつけられると不甲斐なくて嫌になる。

    女性に気に入られ、ウェドが現れなければもしかしたら自分も恐ろしい目にあっていたかもしれないが、女性が俺に話しかけてきた事すらもウェドの計算のうちなのではないかと言う気がしてくる。

    ダンスタイムが終わり照明が明るくなる。フロアに人の流れが戻ると人波をくぐり俺は外に出た。
    満天の星空を見上げ潮風が鼻をくすぐる。すぅ、と息を吸い込んで視線を戻すと豪華な庭に鮮やかな東方の藤の花とガゼボがある一角でウェドが煙をふかしていた。

    「…仕事は済んだの?」
    「…ああ、テッド。お陰さまでな。君が引き付けていてくれて助かったよ。」
    「……俺はまたあんたの"お手伝い"をしたってわけだ。」

    思わず嫌味が出てしまう。

    「すまない、今日この場に君がいる事は俺も知らなかったんだ。知っていたら直接協力を仰いだんだが…」
    「……そう」

    ああもう、こんな事が言いたいわけじゃないのに!引っ込みがつかなくなりひねくれた態度をとってしまう。

    「…言いそびれていたが…テッド、似合っているよ、それ。白に君の瞳の色がよく映える。」
    「えっ」

    もう格好のことなんて忘れかけていたのに不意に褒められて頬が熱くなる。

    「そ、そういうウェドこそ、なんか板についてるって感じ…」
    「そうかい?嬉しいね」

    ウェドも忘れていた、と言うように結んだ髪を解き大胆に前髪をかきあげると軽く頭を振る。

    (……そんな仕草すら絵になるんだからな)

    「…テッド、こっちにおいで。」
    「えっ、うん…?」

    ウェドに呼ばれ藤の花の下まで行くと、エスコートするようにウェドは手を差し伸べてきた。

    「さっきは折角のダンスを邪魔してしまったからな。俺でよければ踊ってくれないか?」
    「えっ!いやあれは…!俺踊りなんて…っ」
    「大丈夫、ここには俺と君しかいない。手を取って、俺に任せて…」

    真っ青な瞳に真っ直ぐ見つめられ、抗う術なく吸い込まれるようにウェドの手を取ってしまった。
    その途端、くんっと体を引かれ腰を支えられる。

    「あっ、えっと…!ステップは…!」
    「大丈夫、細かいことは気にするな!」

    ウェドはニッと笑うと勢いよく体をひねり、その反動で釣られてくるりと体が回る。東方雅人装備の裾がひらりと揺れる。

    「そうだ、上手だ!」

    屋敷の中から微かに聞こえてくる音楽に合わせ、ウェドにリードされながらひらりひらりと裾を舞わせる。
    ふかふかの芝生の上、藤の花びらが舞い散る中男二人で踊っている姿がなんだかおかしくて、思わず笑い声がこぼれる。

    「ウェド、もういいって!ふふ、これ以上は目が回るよ!」
    「はは!君があまりに軽やかで、つい、ね」

    くるくると回る足を止め、ウェドの手を離し一歩距離をとる。

    「…その、ウェド…ごめん」
    「ん?」
    「俺、また一人何も知らずに呑気に過ごしてたのが悔しくて、さっきはあんたに当たってしまった。感じ悪い態度とってごめん。ウェドのお陰でここにいる人達はなんにも知らず、怖い思いもせず無事に家に帰れるんだ。…ありがと」
    「…君はやっぱり眩しいな。気にする事なんて何も無いというのに。」
    「またそれ?よくわかんないんだけど」

    眩しいなんて、少し照れくさくて視線を落とす。

    「…風が冷えてきたな…じゃあな、テッド。またな」
    「今日は"また"って言ってくれるんだ」
    「ああ、君はそう望んでくれると思ったが、違ったかい?」
    「…ううん、違わないよ!ウェド、またね!」

    また一緒に仕事して、次はきっとちゃんと肩を並べて活躍して、その報酬でウェドに酒を奢ろう。そうしてもっと話をして─

    久しく無かった目標が出来て、今なら何でも出来そうな気がした。潮風が優しい。
    連れてこられるようにして移り住んだ街だったけど、案外悪くないかもな。なんて独りごちて軽い足取りで屋敷を後にした。
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