君の香り 手に、触れる感覚がある。優しく持ち上げられている。布越しに感じる体温が心地いい。それを握る。あたたかい。
思考が重くて瞼が上がらなかった。少し首が痛いけれど、気にするのも惜しい。
……まだ、もう少しこのままでいていいだろうか。もしくは、再び眠りに落ちてしまいたい。香る芳香のように甘い誘惑と本能に従って。
徹夜の翌朝よりは軽いけれど、それでも覚えのある感覚だ。クッションが効いた椅子は、なぜこうも落ち着くのだろうか。包み込まれるのが好きなのだろうか。
意識を腰掛けている椅子に沈めるように落としていく。それを肯定するように、頭を撫でられる。気持ちが良くて、ずるずると温かいまどろみに引き摺られてゆく。
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