ララロア 冬へ向かう風が肩口まで伸びた金の髪を弄ぶ。日は既に山の陰、まだ明るい空をちょっと仰いで、野の草が好き勝手に繁る坂道を下った。
草を踏みしめて進む足もしっかりして、シェラハの背はすこし伸びてきた。悲しいことにエルゴとの差は縮まっていない。彼は先に、乳母の背を越してしまった。
剣の師が送られてきて、修練が始まると、大人の体との差をひときわ感じるようになった。エルゴくらい上背も厚みも、力もあれば、できることはもっとあるのにと思う。
もちろん、いずれはそうなるはずだ。焦る必要はないと言う人々の言葉通りに。そこではなくて、体の成熟は充分なエルゴが剣術の修練を受けられないことが、気になったのはいつだったのか。
主人の授業の間、エルゴは彼自身の勉強があると聞いたことがある。だから授業の間はいないが、終わる頃になると、ひっそりと佇んでいて、次の支度なりなんなりを手伝うために影のように付き添った。
まだ互いに未熟だが、主従のかたち。
けれども、森に分け入って二人きりになれば、そうではない。