ツリーのてっぺん 朝日奈を先導に、よいしょよいしょと三人がかりで運ばれてきた大きな緑色がにょきっとラウンジに生えた。菩提樹寮の倉庫は某四次元ポケットみたいに色々なものが詰まっているらしい。
「それにしてもでっかいツリーだな!」
「何年か前の先輩たちが主催したクリスマスコンサートの時に、ロビーに飾ってたツリーらしいですよ。お客さんに好きな楽器を飾り付けてもらうって趣向で」
確かに一緒に持ってきた箱の中には、楽器の形をしたオーナメントがぎっしり詰まっていた。キラキラと輝く管楽器だけでなく、ヴァイオリンを始めとする弦楽器といくつかの打楽器に加えてピアノやハープまである。
「へえ。もしかしてこれ全部飾ったらオーケストラができるんじゃないか」
「お、面白そうだな。やるかコンミス!」
どんな編成にしようか、まずは曲を決めないと、などとワイワイ言いながらオーナメントを箱から出して並べていく。全部出し終えたところで、成宮が作業の手を止めて立ち上がった。そろそろバイトに出かける時間が迫ってきたらしい。
「最後まで手伝いたかったなぁ」
名残惜しそうな成宮を見送って間もなく、今度は笹塚に着信がありそのまま出て行ってしまった。話の流れで急に思いついたことなので、朝日奈と惟世の二人だけではツリーを運ぶのも一苦労だった。通りすがりに力仕事を引き受けてもらえただけで大助かりだ。ふたりが戻ってくる頃までには完成させてビックリさせよう。
まずはカラフルな電飾を手分けしてぐるぐると巻き付け、楽器のオーナメントを朝日奈の指示に合わせて配置していく。最後に雪に見立てた綿をバランス良く乗せると、立派なモミの木が出来上がった。
「なあコンミス、楽器の位置これでいいのか?」
「だって一番高いところが指揮者だもん。ほら、てっぺんの星ってピカピカしてる一番星だから惟世さんみたいでしょ」