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    ちょこ

    主に企画参加の交流小説、絵など投稿してます
    よその子さん多め

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    ちょこ

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    エガキナ

    琥珀と親友の昔の話

    一生残った後悔「おーい、琥珀」
     没討伐のため目的地まで走っていた琥珀のは声をかけられて後ろをむく、声の主は琥珀にとってはもう聞き慣れており、後ろでは手を振る人物が。陽に当たって綺麗に輝く金髪に新緑のような目、こちらをみてニカッと笑う。
     琥珀の親友だ、親友の名前は創。創と書いて「つくる」と呼ぶ。まさに自分達みたいに作品を作る人にピッタリな名前だ。
    「創」
    「お前も討伐行くんだろ? 俺にも来たから同じ没退治だろうな」
    「なるほど」
     創が来るなら心強い、自分のマキナである万年筆を構えておく。なお、創のマキナも偶然か自分と同じ万年筆である。違うところといえば自分は片手剣に変化するが、創はレイピアに変化するところだ。創がいるなら今日もすぐに討伐は終わるだろうとこの時の琥珀は楽観的に、簡単に考えていた。

    「うわ、ひでーな……」
     現場に着いた琥珀と創は目の前の現状に顔をしかめる。土煙はまっており、あちらこちらに穴が。ほのかに血の匂いがするため誰かが襲われたのは分かった。没はどこだと二人で見回すと土煙が晴れていき、大きな、大きな何か──没を見た時琥珀は固まってしまった。固まってしまい、無意識に震えが止まらなくなっていた。
     ──その没を一目見た時、母親の姿を思い出したからだ。
     その没は女型だった、女型と言っても二人の身長をゆうに越しており、髪らしいものは地面にまで垂れている。目らしきものはギラギラとこちらを見てなんとも言えない雄叫びをあげ、地響きのように周りを揺らす。創は体勢を整えつつ、琥珀の方を向いて様子のおかしい事に気づいた。
    「なんつーデカい没だよ……!  おい大丈夫か琥珀!  …………琥珀?」
    「……っ、ひゅっ……!  はっ……!」
    「琥珀!?」
     胸を押えて呼吸がままなっていない琥珀を見て驚いて駆け寄る創。手はガタガタと震えており目の焦点も合っていない、目もどこか震えてるように見えた。
     震える手で胸を押えて小さな子供みたいに震え上がっている琥珀。琥珀が女性が苦手なのを創は知っていた、確かに女型の没は珍しくなかったし、その度に嫌な顔をする琥珀もいたが、今までにこんな反応を見たことがなく、創も戸惑っていた。だが、没は容赦なく攻撃を仕掛けてくる。
    「おっと!」
     創はマキナであるレイピアで何とか攻撃を受け流す。手から伝わる痺れに顔をしかめる。琥珀を立たせて没から逃れるように攻撃で出来た瓦礫の片隅に隠れる。
    「おい!  琥珀どうした!  大丈夫か?  俺の声聞こえてるか!?」
    「ごほっ……!  げほっ……!  ……っ!」
     琥珀は顔を青白くさせながらもズボンのポケットから何かを探していた、その様子を見て同じように琥珀のポケットに手を突っ込む創。
     何か小さいものがあたりそれを取り出すとそれは薬だった。この薬は知っていた、発作時に飲むものだと。没は消えた二人を探してるのだろう、闇雲に周りに攻撃をしていた。
    「見つけた!  ほら琥珀飲め……」
    「……っ。……」
     震える手でそれを受け取り飲み込む琥珀。飲んで落ち着いたからか呼吸が落ち着いたように見えたが、手は相変わらず震えていた。琥珀は小さな声で、申し訳なさそうに言う。
    「……ごめん、もう大丈夫……」
    「謝るならアイツをゴミにしてから言え」
     創はレイピアを構える、琥珀もまたマキナである片手剣を構えるが、震えで剣先がブレる。没は二人を見つけ容赦なく攻撃をしていく。
    「なんつー攻撃だよ!  髪っぽいやつ邪魔!」
    「……っ」
     創がやんやと言っている横で斬るように攻撃を受け流す琥珀。どうやら没の髪といえる部分は斬ると修復されずに短くなるらしい。なら斬り続ければ近づける?  と琥珀は考えた、考えたのだが、先程の発作や手の震えのせいでいつもの様に力が出ない。受け流すだけで精一杯だった。
     じわりじわりと、二人の状況は悪くなる。その時二人の後方から誰かが来るのが分かった、応援に来たツクリテだろうか。
    「おいアンタら大丈夫か! 応援に来た!」
     それを聞いた琥珀は創に一旦体勢を整えよう、と言おうとした時、突然創が琥珀の首根っこを掴み応援に来たツクリテにぶん投げた。突然の事で訳の分からない琥珀と、慌てて受け取ったからか倒れそうになったツクリテ。
    「アンタ丁度いいや、そいつ連れて一旦退避してくれよ」
    「は!?  お前一人で討伐する気か!?」
    「創!  何言って……!」
    「言っておくけど、さっきから手の震えてる奴みたいな足でまといは困るわけ。お前、まだ発作落ち着いてねーだろ」
    「俺はまだ戦え……」
    「いいから逃げろって言ってんだよ!  これ以上俺に言わせんな!」
     創の剣幕に何も言えなくなった琥珀、創はツクリテのそばで耳打ちする。
    「コイツを無事に逃がしてくれ、俺のたった一人の大事な親友なんだ。……出会ったばかりのアンタに頼むことじゃないのかもしれないけれど……頼む」
    「………。……分かった」
    「おい勝手に決めんな!  創!  やめろ!  降ろせ、降ろせって!」
     じたばたと暴れだした琥珀を何とかおぶって退避するツクリテを見る創。いつの間にか創のそばにニジゲンが立っていた。創と組んでいるニジゲンだ。そのニジケンは騎士風な格好で、大きな帽子をかぶり直しながら創に聞く。
    「……よかったのか」
    「お前こそ、お前も逃げてよかったんだけど」
    「……創が一人だと寂しいかと思って」
    「全く素直じゃないやつ〜」
     ケラケラと笑いつつ創は没を見る。相変わらず闇雲に攻撃をしている、創は着ていたコートを脱ぎ出した。
     琥珀が無事に逃げれるように時間を稼げばいい、恐らく応援も来るだろう。それまでなんとか、耐えればいい。
    「あー、全くこのコート、重くてかなわないな。……ペンは剣より強いっての、分からせてやるよ」

    「降ろせ!  あんた降ろせよ!」
    「いてて!  バカ暴れんな!」
     一方、創の背中が遠のいていき、なんとか抜け出そうとするが出来なかった。力が入らないのだ、目の前が滲んで見える。涙が溢れていたがそんな事琥珀には関係なかった。
    「創!  つくる……!  降ろしてくれ、降ろして……俺の親友を一人にしないでくれ……」
    「……大丈夫、俺の他にも応援が来るって……言ってたから、大丈夫だ……」
     琥珀が泣きながら降ろせと言っているのを、出会ったばかりのツクリテは痛いほど琥珀の気持ちが伝わってしまいこちらまで泣きそうになった。けれど、創のあの時の言葉を聞いてしまった以上、もう自分はどうすればいいのか分からなかった。
     降ろして、降ろして泣きながらと戯言のように言う琥珀と逃げるしか無かった。その時琥珀が消えるような声で言った言葉がツクリテの耳に、嫌に入った。

    「……見殺しにさせないで」

     その後だが、応援が来た時にはそこには没はいなかった。状況を見て創が討伐したのだろうと思ったのだが、その創の姿も、ニジゲンの姿もなかったという。あったものといえば、没が討伐された証拠のシュレッダーゴミに、少し薄汚れて落ちていた創がいつも着ていたコートだけだったと言う。
     組合の見解としては、創は死亡した可能性が高いとされた。
     それを聞いて黙ってなかったのは琥珀だった。創が死んでるはずがない、と喚くことしか出来なかった。もし創が死んだとするならば、自分が見殺しにしたのも同じだ。自分が、発作なんて起こさなければ。病院のベッドの上で、シーツを強く掴んでやるせない怒りがどうしようもなく琥珀を蝕んだ。

     没討伐がおわり、没がちりちりとシュレッダーゴミとして散っていく。琥珀は周りを見る、周りには没が暴れた跡以外何も無い。
     何も無かったのを確認したあと、そのまま歩き出した。肩に羽織ってあるコートを少しだけ触ると、なんとも言えない顔をして目を数秒つぶった後、何か考え事をしつつ前を向いた。

     ──今日も、親友の手がかりはなにもない。
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    ちょこ

    DONEダミアさんお誕生日小説
    ダミアさんお借りしました!お誕生日おめでとうございます!
    モンブラン「ダミア、お誕生日おめでとうございます」
    「おー! ありがとな!」
     レイフが借りている拠点と言っていい住まいにダミアを呼び、目の前にケーキを出す。ダミアと前もって連絡を取っていたため、こうして呼べたのだ。ケーキはレイフの手作りだ。本当なら、料理も出そうかと言ったのだが、間髪入れずに断られてしまった。今度こそ上手く作れるような気がしたのにな、とレイフは残念そうに思いながらも、ダミアを見た。
    「このケーキ……モンブランか?」
    「そうです、アマロンを使ってます」
    「へー! 王様って呼ばれてるやつじゃん!」
     ダミアは感心したようにケーキを眺めた。アマロン、様々な栗の中で特段に甘い栗の事だ。身も大きいのだが、育てるのが難しく、しかも、大きく育てようと魔力を使うと、すぐに枯れるという性質を持っていた。なので、完全な手作業、時間をかけてゆっくりと育てる。そのため、栗の中の王様、という意味で【アマロン】と呼ばれるのだ。一粒だけでも驚くほどの高額で取引される。その高額さに、一時期偽物のアマロンが出回るほどだった。偽物のアマロンと区別を測るための道具すら開発されるほどに。
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