琥珀はカナタとリインの暮らしているアパートまでやって来ていた。泊まりに来たわけではないが、ここ最近カナタの原稿が切羽詰まっているらしく、大丈夫だろうかという心配で来たのだ。呼び鈴を鳴らすとドタバタ、と足音が聞こえたかと思うと勢いよく扉が開いた。
「あ! 琥珀!」
「リイン、カナタさん大丈夫か?」
「まだ部屋から出てない!」
なるほど、と家にあがりながら琥珀は心配していた一つをリインに聞く。それは食事の事だった、一度ずっとカレーが続いたと聞いたことがあり、それからというものカナタが原稿が大変だと聞く度に心配をしていた。それを聞くとリインは誇らしげな顔をしてキッズスマホを琥珀に見せた。
「ふっふっふ! これで肉じゃが検索してつくったぞ!」
「……リインすごいな、偉い」
琥珀はリインの笑顔に微笑みつつ頭を優しく撫でた、琥珀から撫でられてつられて笑うリイン。琥珀はコートを脱いでそのままエプロンを着た。
「今日は俺が作るから、なにがいい?」
「肉!」
そう元気よく答えたリインに笑いつつ、ここに来る前に買い物してよかったと思いながら持っていた買い物袋から食材を取り出していく。
「何作るんだー?」
「からあげ、味も二種類作るから」
「やったー! カナタに伝えてくる!」
そう言って走っていったリインの背中を見て笑いつつ味をつけるために準備をした。すぐにリインが戻ってきたため、リインには野菜を洗うようにお願いした。味を染みませるため冷蔵庫に肉を置いたあと、味噌汁の準備や和え物の準備をする。
味をつけた肉をあげていると少しふらつきながらカナタがやってきた。ぐぅ、とカナタから腹の虫がなり思わず琥珀は笑う。
「カナタさん、お邪魔してます」
「琥珀ごめんね……いい匂いする……」
「カナター! 座るんだぞ! ほらほら」
「分かったから、リイン引っ張らないで」
リインがカナタを座らせるとそのまま琥珀がつくった和え物や味噌汁、炊きたてのご飯を装って持ってきた。そして揚げたばかりの出来たての唐揚げを机の上に置いた。
「それじゃ」
「いただきます!」
リインの元気な声と一緒に三人の晩御飯の時間が始まった。