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    ちょこ

    主に企画参加の交流小説、絵など投稿してます
    よその子さん多め

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    ちょこ

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    エガキナ
    よその子さんお借りしてます
    モブがでてます

    もう二度と失わぬように その日はいつも通りに終わるはずだった、凪はいつものように出勤をし、自分の尊敬する先輩を後ろから驚かすように挨拶をし、それに相手が頭をわしわしと撫でる。凪は相手の事を尊敬し、敬愛していた。
    自分と身長はあまり変わらず、明るく、結婚しており綺麗な奥さんと可愛らしい子供がいて、よく家事や子育ても一緒にしているという理想的な父親の姿も見せていた。
    「先輩〜! 頭痛いですよ」
    「凪〜! 今日も元気だったなぁ!」
    凪は相手の嬉しそうな顔を見て笑う、凪は相手からこの仕事についてのイロハを新人の頃から叩き込まれていた。厳しかったが決して見捨てるような真似をせず、褒める時はこれでもかと言うくらい褒める。凪は相手のような先輩になりたい、と常々おもっていた。その時、部署中にアラームが鳴り響く。このアラームは没が出た時になるものだ、凪と相手は瞬時に部屋を飛び出し端末を見る。
    「どこで出た!」
    「ここから三キロ離れた街中です! ルイス!」
    ルイスと呼ばれた時、凪の隣にいつの間にかおり一緒に走っていた。ルイスは凪のニジゲンであり、顕現してからずっと凪と一緒に没討伐をしていた。
    「お呼びか? ナギ」
    「没が出た! 想像力くれ! 先輩にも!」
    「オッケー!」
    ルイスは懐から拳銃を取り出すとおもむろに二人の頭を撃つ、だが二人に血が流れるような様子はない。ルイスが撃ったのは空気砲だったのだ、その空気は目にも止まらぬ速さで二人を包む。痛さはなく見た目とは違って優しい空気が周りを漂っていた。
    「ほら、やったぞ」
    「ありがと!」
    「ルイス、恩に着る」
    そう言って凪は懐からボールペンを取り出しペン先をだす、するとあっという間に刀に変化した。凪のマキナは刀だ、普段はボールペンにして持ち歩いている。一見普通の刀だが、刃先に触れると何故か熱い。そんな刀だ、凪は刀を握りしめ現場へと急いだ。
    現場に着くと目の前の光景に思わず凪は顔を歪ませた、没が多すぎるのだ。端末で見た情報とあまりに違いすぎる。血の匂いがしてここで戦っていたツクリテは皆、と刀を強く握りしめる。
    「凪、飛ばすなよ」
    「……わかってます」
    「サポートは任せな、二人とも」
    凪は鞘から刀を抜く、そして走り出した。まず片付けられそうな没から斬っていった、相手が言った通り、どうやら凪は戦闘に没頭しすぎる傾向にあるらしい。そのせいでよく周りが見えない時があった、その時はルイスや相手が上手くサポートしてくれていた。そう、その油断が生まれていた。
    「……! おいナギ!」
    「……しまっ!」
    いつの間にか没の一体が凪の後ろにいたのだ、反応が遅れてしまったため、避けようにも避けきれない。ルイスの声に先輩も反応していたが、遠くにいたため凪の元に行くのは間に合わない。そうしているうちに没の攻撃が凪一直線に走った……はずだった。
    「……! ルイス!」
    「が、はっ……」
    凪は目の前でルイスが体を貫かれている光景を見ていた、ルイスの体からは血が溢れており、それでもルイスは凪に攻撃が向かないよう、没を突き飛ばす。突き飛ばされた反動で貫かれていた物が取り除かれ、さらに血が溢れた。
    「ルイス! ルイス! おい誰か! 救護班いないのか!」
    「……ナ、ギ……。っ……はな、れろ……」
    「ルイス喋るな! 血が止まらない……このままじゃ……!」
    「おい! 大丈夫か!」
    慌ててやってきた相手の声に返事をすることなく、凪は上着を脱いでルイスの体に大きく空いてしまった穴の血を止めようとした。だが上着を赤黒く染めるだけで止まらない、ニジゲンが【死亡】したら没になる、何度もその場面に出会ったことがある。でも、まさか、自分のニジゲンがそうなるなんて思ってもみなかった。
    「おい、凪離れろ! もう……」
    「先輩は黙ってろ! ルイス、ルイス……!」
    「が、ァ……」
    ルイスの体がどんどんと原型を留めなくなっていった、それを見て相手は凪を離そうと手を引っ張る。すると、ルイスだったものが、ドロドロとした【没】へと変わってしまった、ルイスが【死亡】したのだ。
    「ル、イス……」
    ルイスだった没は言葉にもならない言葉を叫び続けると拳銃らしきものを取り出したか思うと凪に容赦なく撃つ、没になったショックで動けずにいた凪を相手が咄嗟に庇った。そして、どさりと凪に覆い被さるように倒れた。
    「……せん、ぱい……?」
    「ははっ……痛いなぁ……」
    「せ、先輩……!」
    凪は慌てて相手を受け止めた、相手は胸あたりが真っ赤に染まっているところをそっと撫でる。撫でた手には赤い血が付着しており、凪はぞっと顔を青くさせた。早く相手を病院につれていかないと、だが手が震えてしまう。すると相手が凪の腕を掴んだ。
    「凪……こんな不甲斐ない先輩でごめん、な……」
    「先輩喋らないで、先輩、先輩……」
    「はは……。……でも、お前、と会えて……。……嫁に、よろしく、言ってくれ……」
    「そんなこと言うな! 言うな……!」
    それ以上相手は何も喋らなくなった。相手の呼吸が荒くなっていき、目の焦点が合わなくなっている。死が近づいていることに凪は身体中の温度が氷のように冷えていく感覚に陥った。どうすればいい、どうしたら、と考えていたからだろう。没の攻撃が凪に来ていることに反応が遅れてしまった。気づいた時には、凪の左目を覆っていた。
    「あ……ぅあ……!」
    左目が痛い、目に激痛が走る。没の攻撃が左目を直撃したのだ。左目を開けることが出来ない。手で押さえ、凪は震える手で相手をゆっくり寝かせる、相手はもう呼吸をしていなかった。凪は相手の死に顔を見て、没を見る。もうルイスではない没、自分の尊敬していた相手を殺した没。
    「……ルイス……」
    凪はそう呟くと、没目掛けて刀を奮った。

    ──俺のニジゲンが、先輩を殺した。

    凪は目を覚ました、目の前には真っ白な天井と壁。白いカーテンに繋がれた点滴。そして薬品の匂いが鼻に嫌という程入ってきた、どうやらここは病院らしい。あの後の記憶が朧気になっており、あまり覚えていないが。相手の体温が失われていくあの感覚だけは嫌に覚えていた。
    先輩が死んだ、その事実が凪の頭を駆け巡る。凪は勝手に点滴を抜いた、ポタリ、ポタリと液が落ちるがそんなの気にせずにベッドから抜け出す。部屋に付属されていた鏡を見て顔半分を覆うように巻かれた包帯だらけの自分の顔を見た。
    「……ルイス……」
    自分のニジゲンが、没になった。そのニジゲンが、先輩を殺した。なんで、なんで。
    「……くそ、くそ、くそ……!」
    凪は病室の壁を思いっきり殴りつけた。悔しい、悔しくて悲しくてたまらない。手の甲から血が滲みだしたが、構わず殴る。どう考えても先輩を殺した原因は自分だった、あれほど尊敬していた先輩を、殺してしまった。
    「なんで……どうして……」
    凪はいつの間にか溢れ出ていた涙を拭うことなく蹲る、どう周りに顔向けしたらいいか分からなかった。すると、病室の扉が開いた。
    「うわ……!? ちょっと!? なんで起きてるんですか!?」
    凪は泣きながら声の主を見た、黒髪の自分より年上、丁度死んでしまった先輩と同じくらいの男だった。相手は困惑した様子で凪を見る、そして手を伸ばしてきた。凪は苛立ちが止まらずその手を強く払い除けた。
    「ちょっと……!」
    「うるさい! 触るな! ……もう、いやだ……くそ、くそ……!」
    「……」
    凪は泣いてる顔を相手に見られたくなくて下を向いた。下を向いても涙は止まらない、どうすればいいのかもう分からなかった。すると相手はしゃがんで凪に話しかけた。
    「……僕の名前は猫柳八重っていいます」
    「……やえ……?」
    耳に入った言葉にピタリ、と凪は反応した。猫柳八重、どこかで聞いたような名前だったからだ。どこだっただろうかと考えると、そう言えば先輩から一度話を聞いたことがあったのを思い出す。
    普段はサボってばかりの創務職員がいると、だが、たまに周りが驚くような没を討伐して数を上げているとの事。たしかその名前が猫柳八重、と聞いていたのだ。先輩とその八重という人物は知り合いらしく先輩は笑いながらその話をしていたのを凪は思い出していた。
    まさか、凪は勢いよく顔を上げた。八重はまっすぐと凪の顔を見ていた、同情するような表情でもなく、かといって無表情でもない。ただ、まっすぐと、真剣に凪を見ていた。
    「……君の上司とは仲良くしてて、君にもしもの事があったら頼むって言われてました」
    「……先輩が……?」
    「……ここから先は君が決めることですけど……僕の部下になりませんか」
    「……部下、に? 俺が……あんたの……?」
    まさか八重に任せると話をしていたのは知らなかった、そんな素振り見せなかったからだ。けれど、仕事上の事を考えると頼んだ可能性もあった。凪はまた顔を下に向けて悩んだ、このまま相手の部下になるか、どうするか。凪は手を強く握りしめる、こういう時ルイスがいてくれたら、なんて思ってしまう。ルイスがいたらなんて言うだろうか。凪は目を閉じた、自分はどうすればいいかを考える。
    八重は黙ったまま凪を見る、すると、凪は顔を上げた。先程の泣き顔ではなく、何かを決意した眼差しと、表情になって八重を見る。表情が変わった、と八重はそう思った。
    「……もう、もうあんな光景目にしたくない。自分の相棒が没になって、尊敬していた相手が死ぬのはもう見たくない。……だから、そんなこと二度と起きないように、俺は……! 俺は、全部斬る。守るために斬る。……だから、その話、受け取ります」
    「……うん、よく言った。……じゃあよろしくね? 凪くん」
    「……はい、猫柳さん」
    「八重でいいよ」
    「……八重さん」
    そうだ、もう自分のような状況を作らないようにすればいい、そのためには没を斬るしかない。それなら八重の部下になれば、八重の元にいれば、もっと強くなれるはず。凪はベットの脇に置かれている机の上に置かれていた自分のマキナであるボールペンを手にした。そのボールペンをもって胸に当てた、自分の決めた決意を忘れないように。

    「八重さ〜ん!」
    凪は八重の後ろ姿を見つけて声をかけた、八重は凪の声に後ろを向いて立ち止まった。
    「あれ凪くんどうしたの?」
    「あの来月休み欲しい日があって」
    「もしかしてお墓参り?」
    「……はい」
    あの決意した日からどのくらいの時が進んだだろうか。八重の部下になってから没討伐が増えた気がした、八重の部下になって正解だった。八重の教え方は先輩と違うところはあったが、あの頃より上手く立ち回れるような気がした、それでも我を忘れてしまう時はあるが。
    凪は毎月墓参りをしていた、どんなに忙しい日でも合間を縫って必ず行っており、その事は八重自身もよく知っていた。すると八重は少し笑う。
    「僕も一緒に行っていい?」
    「いいっすよ! 先輩喜びますね!」
    そう笑うと八重と一緒に歩き出す、凪はふと足を止め空を見た。空は真っ青な青空だった。
    「……」
    人は死んだら空の上で自分らを見守ると小さい頃教えられた、死んだ先輩も見守ってくれてるのだろうか、なんて思いながら空を見る。
    「凪くん?」
    「あぁすみません、今行きます!」
    八重に呼ばれた凪は走って八重の元へ走っていった。
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    Replies from the creator

    ちょこ

    DONEダミアさんお誕生日小説
    ダミアさんお借りしました!お誕生日おめでとうございます!
    モンブラン「ダミア、お誕生日おめでとうございます」
    「おー! ありがとな!」
     レイフが借りている拠点と言っていい住まいにダミアを呼び、目の前にケーキを出す。ダミアと前もって連絡を取っていたため、こうして呼べたのだ。ケーキはレイフの手作りだ。本当なら、料理も出そうかと言ったのだが、間髪入れずに断られてしまった。今度こそ上手く作れるような気がしたのにな、とレイフは残念そうに思いながらも、ダミアを見た。
    「このケーキ……モンブランか?」
    「そうです、アマロンを使ってます」
    「へー! 王様って呼ばれてるやつじゃん!」
     ダミアは感心したようにケーキを眺めた。アマロン、様々な栗の中で特段に甘い栗の事だ。身も大きいのだが、育てるのが難しく、しかも、大きく育てようと魔力を使うと、すぐに枯れるという性質を持っていた。なので、完全な手作業、時間をかけてゆっくりと育てる。そのため、栗の中の王様、という意味で【アマロン】と呼ばれるのだ。一粒だけでも驚くほどの高額で取引される。その高額さに、一時期偽物のアマロンが出回るほどだった。偽物のアマロンと区別を測るための道具すら開発されるほどに。
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