都岸灯夜 夜岸と共に漫画家を目指すことになった灯都、学校の授業が終わると夜岸を連れて使われていない空き教室へと入る。誰にも邪魔されずに話をしたかったからだ。椅子に座るとノートを開いて夜岸に話す。
「まぁ、夜岸と組むことになったんだけど……」
「今でも夢かなって思っちゃってるよ……」
「俺が夜岸の絵に惚れてること夢って思われたくないんだけど」
「なんでそんな恥ずかしい事サラリと言えるのかな……」
恥ずかしげもなく言った灯都の言葉に頬をかきながら恥ずかしそうにする夜岸、事実を言ったまでなのだが、と灯都は思いつつもシャーペンを手に持つ。
「まぁ、まだお互いの事をあまり知らないし……僕の作品を元に描くとして……。……」
「灯都?」
黙り込んでしまった灯都を心配そうに見る夜岸、灯都は少し黙った後、どこか照れくさそうに口をとがらせる、その仕草はいつもどこか大人っぽい灯都がするようには見えず、年相応に見えた。そして、灯都は話す。
「……俺も人と一緒に作品を作るってのしたこと無かったから……何したらいいか少し迷った」
「……灯都もそんなこと言うんだ」
「ちょっと、どういう意味」
「えっ! い、いや! ほらいつもどこか……大人っぽいというか……冷静に見えたから……」
「……そう見えてたの? 俺自分で言うのもあれだけど、俺ってとっつきにくいし」
そう言って照れくささを隠すようにそっぽを向いてしまう灯都、どこか頬が赤く見えた。やはりその態度は年相応に見え、夜岸は思わず笑う。
すると、夜岸はシャーペンを取り出しノートに何か書いた。灯都は筆跡音に思わずノートを見た。ノートには【都岸灯夜】と四文字の漢字が書かれていた
「……? とぎし……とうや? って読むの?」
「うん、ペンネームにどうかな。僕と灯都の名前を合わせたんだけど」
「……」
夜岸が言ったそばで灯都はそっと、なぞるように文字の上に指を滑らせた。
黙って何も答えない灯都に夜岸は思わず冷や汗を流す、もしかしてダメだっただろうか、なんて思い始めた時、灯都がどこか嬉しそうな声でポツポツと話す。
「……綺麗な文字だな、まるで都の岸から、夜の都の灯りが見える。……やっぱあの絵を描く夜岸だ、文字だけで俺の頭の中には、そんな風景を描いたイメージが湧いたよ」
「……そ、そこまで?」
「うん、俺、このペンネームがいい。俺と夜岸、二人で一つって感じだし」
灯都はそう笑って夜岸を見た、灯都の嬉しそうな顔を見て夜岸も釣られて笑った。灯都はまた、書かれた文字を見る。あぁ、本当に自分は目の前の相手と一緒に作品が作れるのだ、と。そんな嬉しさを胸に抱えた。