手伝い「本当に大丈夫だな?」
「大丈夫だって!」
ある朝、CQ×2が念を押すように創にそう言った。創は心配性だな、と思いつつ笑顔で答えつつCQ×2を見た。今日は約束したとおり、CQ×2の手伝いをするのだ。流石に医療行為は出来ないが、薬品や備品を持ってきたりは出来る。少しでも、助けてくれた目の前にいるニジゲンであるCQ×2にお礼がしたかった。
怪我の後遺症で記憶が無いというのに、CQ×2の住んでいる診療所に今もこうして住まわせてもらっている。記憶が無いのは不安がまとわりつくが、焦らなくていい、というCQ×2の言葉にほんの少しだけその不安が消えるのだ。
すると、CQ×2が部屋を出たあとすぐに戻ってきた。手にはなにやら白い上着のようなものを持って。
「汚れないようにな、ほれ、白衣」
「え、ありがとう」
白い上着だと思っていたのは白衣だった。白衣なんて着るのは初めてだ、と袖を通す。サイズは不思議な事にピッタリだった。自分は身長が高いので、もしかして小さいのかもしれないと思ったが、その心配はしなくてもよかった。
「ほーん、似合うな」
CQ×2の声が聞こえなかった、創はこの白衣を着た時、何か違和感を覚えたような気がした。自分は、白衣じゃないにしろ、何か、羽織っていたような気がするのだ。けれど、ここではなにも上着を見ていない。ならなんでそう思ったのか。もしかして、どこかで脱いだのだろうか。ならどこで───?
「……」
「……おーい? どうした?」
「……え、いやなんでもないや」
気のせいかな、と創は考えるのをやめた、そしてCQ×2に向かって笑う。
「へへ、よろしく頼みますよ、センセ」
「普通に呼べ、んじゃ行くぞ」
CQ×2がそう言って歩くため創は慌ててついて行く、どうやら訪問診察の時間らしい。あ、とCQ×2は立ち止まり何やら取り出して創に渡した。それは眼鏡だった。黒縁のよくあるような眼鏡、度は入ってなさそうにみえるが、なぜ眼鏡を渡されたのか分からなかった。
「……メガネ?」
「あー、えっとな、お前さんその素顔で行くとちと不味いのよ。なんなら俺の薬品飲んで変装しても」
「め、メガネかける!」
創は慌てて眼鏡をかけた。なんで眼鏡をかけなければならないのか、それは分からなかったが、CQ×2から外に出る時は必ずそれをするようにと言われた。
創には言っていないことだが、CQ×2は地上では彼───江波戸創は生存不明という扱いになっていた。そんな相手がここにいるなんて発覚したら、面倒くさい事になるのは目に見えていた。それゆえの、対応だった。
「それじゃ、まず外出て診察とか回ってから、一旦戻ってそこから薬品の場所とか覚えてもらうからな!」
「わかった!」
みんなが知っている創は腰まで髪を伸ばしていたが、今の創は髪が短くなっている。それに眼鏡をかけたことによりイメージも変わっていた。相当な熱狂的ファンじゃなければパッと見は分からないだろう、とCQ×2がそう思ってるなんて知らない創は、先に歩いたCQ×2の後を着いていくのであった。