理由「なー、琥珀」
「なに」
遊びに来ていた創は、リビングのソファに座っている時琥珀に聞いた。琥珀は丁度キッチンで作り置きを作っていた、琥珀やフレイ達が食べる用とは別に、大きめのタッパーが置かれていた。それがエリーに渡すものなのは創は分かりきっていた。
「何でエリーさんに作り置き渡してるわけ?」
「……お前が関係あるのか?」
「関係ないけどぉ! 羨ましいのー! ちぇ」
口を尖らせて、不貞腐れるようにソファにもたれ掛かる創。なんでエリーに、と創はどこか納得してなかった。そんな創の表情を見てか、琥珀はため息を吐いて話し始めた。
いつだったが、家で執筆中の時、ちょっとした事で部屋を出たのだ。すぐに要件は終わり、琥珀が部屋に入るといつの間にかサクリが本を読んでいた。時折、こうしてサクリは琥珀の部屋に来て本を読む。最初は驚いていたが、何度も来るとそれも慣れる。それに、サクリは騒がないため、追い出す気にもならなかった。
琥珀は何も言わずに椅子に座り直し、執筆の続きを始めた。どのくらい時間が経ったのか、窓をふと見るといつの間にか暗かった。時間を見るとあれから相当時間が経ったのか分かる。琥珀は今日はここまでにしよう、と保存をしてから後ろを向き、サクリに聞いた。
「ご飯、食べていくか」
「食べるわ、あっちにいてもまともに飯を食えねぇからな」
「……」
サクリの言葉を聞いて少し引っかかった。もしかしてエリーは食べれてないのだろうか、と。自分より体格もいい、自分と同じように創作をするなら、どれだけ体力を使うのかは分かる。
食事が終わったあと、サクリが帰ろうとした時琥珀は引き止めた。サクリが振り向くと、琥珀がなにやら紙袋を渡してきた。
「……なんだよ、これ」
「エリーさんのご飯、どうせ明日買い物行く予定だったし、冷蔵庫の余り物で作ったからあまり量はないけど」
「お人好しかよ」
サクリはそう言って紙袋の中を見た、余り物で作った割には数が多い。恐らく中身はおひたしと、きんぴらと、今日の晩御飯の肉じゃがまで入っている。そしてなぜか市販のお菓子まで入っている。その菓子が、よく琥珀が合間でつまんでいる金平糖だと分かった。
「……甘いもんは必要だろ」
「ここまでお人好しは中々いないな」
「エリーさんによろしく」
「はいはい」
そう言って琥珀の影の中に消えていったサクリ、味が合えばいいが、なんて思いながら。
「……てなわけで」
「……いや、いろいろツッコミどころあるんだけど……」
創は顔をひきつらせながら、どこか呆れてしまった。自分の親友はここまでお人好しだったか? と頭を抱えそうになる。けれど、どこか琥珀らしいな、と笑ってしまった。