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    ちょこ

    主に企画参加の交流小説、絵など投稿してます
    よその子さん多め

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    ちょこ

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    エガキナ

    よその子さんお借りしてます
    (※名前のあるモブが出てます)

    ##エガキナ

    星になった日 相手を見た時、なんて細い人なのだろ、とジュードは思った。先ほど居たはずの草原から、どこかの部屋の中に居たのだ。そして、目の前に見知らぬ人。その人は、ジュードを見て驚いた表情をして、傍らに置かれていた本のタイトル、絵を見てジュードは顔色を変る。その絵には、自分が描かれていたのだ。
     相手は、やや顔色の悪い顔をくしゃり、と笑って、嬉しそうに口を開く。
    「え、ジュード……? ジュードだ……! あぁ、自己紹介しなきゃ……おっ、とと」
     その時相手がふらつき、ジュードは思わず相手を受け止めた。その時の相手の軽さに思わず固まる。掴んだ腕も、細くて折れそうだったのだ。男の腕とは思えないほどに。ジュードはすぐに気づいた、この男は何かしらの病気を抱えているのではないかと。相手は慌てて謝る。

    「あ、ごめんね……。えと、僕は星……星っていいます。今から話すこと、信じられないかもしれないけれど聞いてね。……僕は、君を書いた作者です」
    「……作者……?」
     聞き慣れない単語に首を傾げる、星と言った相手はジュードに色んな話をした。それは信じられない事だったが、現に自分はここにいる。そう考えると、信ぴょう性は深まっていた。
     それにしても、そんな体で没とかいう敵と戦うのか、とジュードは思う。それを言うと、星は笑う。その笑顔は、どこか無理をしてるようにも見えた。
    「大丈夫、大丈夫! 仕方ないことだしね、創務に居ようが、認可にいようが、免許を持つのなら討伐しなきゃいけない」
    「……」
     まだ出会ってそんな時間が経っていないというのに、ジュードはどこか胸をざわつかせた。この気持ちはなんだろうか、と思いつつ星に連れられて部屋を後にした。

     星と過ごすようになって、楽しい事もあったのだが、日に日に体調が悪くなるのをジュードは感じ取っていた。星に言っても大丈夫、の一点張り。おそらく、自分の事を心配させないようにとの気持ちだろう。けれど、ある日洗面所で血を吐いてるのを見てしまった。
    「星……!」
    「げほっ……!」
     ジュードは慌てて背中をさする。また痩せた、と触ってすぐに分かる。もしかしたら、今回血を吐くのは初めてではないのでは、と思った。星の事だ、隠れて吐いていた可能性もある。

    「なんでここまで無理をした……! 病院に……!」
     その時、星のスマートフォンが震える。没が出たとの連絡だ、それを見た時、星がふらふらと行こうとしているのを見て、慌てて腕を掴む。
    「星! 討伐なら他のツクリテに……! そんな身体で行けるわけないだろ!」
    「大丈夫……、これが終わったら病院に、行くから……」
    「……そこまでして行くものなのか」
     ジュードは分からなかった、身体を壊して、血を吐いて、そこまでして行かなきゃ行けないのものか、分からなかった。星の身体のことを知っているはずなのに、創務と認可が何も対応しない事に嫌悪感を募らせた。ジュードの言葉に、力なく笑う。

    「……作品を守りたいからね」
     そう笑って言う星に、眉を顰めた。
     没討伐の後、星はそのまま倒れた。病院に運ばれ、もう手遅れの状態だと話を聞かされた。ジュードは、元々星が持病を持っていたのは知っていた、本人から話を聞いていたから。けれど、それでもジュードが知らない事も言われた。わざと、星が言わなかったのをジュードは察する。
     病室に入ると、点滴を打たれながら星が寝ていた。顔色は相変わらず悪い、自分がもっと早く気づいて、無理やりにでも病院に連れて行けてたら、未来は変わっていたのだろうか。
    「……俺は……。……作品より……───」
     お前を守りたい、そんな言葉は寝ている星しか聞かなかった。

     星は病室で震える手をなんとか優しく撫でながら、ペンを持って手紙を書いていた。今回のことでジュードに申し訳な気持ちが募る、そして、自分の死期も近い事を察していた。
     手紙の相手は、幼なじみである古金映李───エリーに宛てて。針生途傘───メリーや、炎珠羽紅の顔が脳裏を過ぎったが、今回のことで、認可や創務に対する気持ちが、嫌悪に変わってしまったジュードにはダメだと星は目を閉じる。エリーなら、ジュードの事を任せられる。星は手紙を書き始める。

     久しぶりに書く手紙が、こんな事になるなんて。星は涙を流しつつ、時間をかけて手紙を書き終えた。どうやって手紙を出すか、星はそっと、自分の影に手紙を置いた。
    「……サクリ、いますか」
     サクリがいるかは賭けだった。もし居なかったら、その時はその時、エリーの親友に頼もうと思った。手紙をみつつ、星は言葉を漏らす。
    「……君に辛いお願い事をしちゃうね。……これを、エリーに……。……もう、話が出来ないの、悲しいなぁ……。……げほっ……!」
     血を吐いた、咄嗟に手で口を押さえたため、手紙に血はつかなかったが、真っ白な掛け布団が血に染る。ひゅー、ひゅーと息が乱れるが深呼吸をした。その時、手紙が影の中に消えた。あぁ、渡してくれるのかと星は泣きそうになった。そして、意識が遠のく。

     ジュードは星の手を優しく握っていた、もう皮と骨と言ってもいい手を。星は呼吸を乱しつつ、ジュードに向けて笑う。
    「……不甲斐ないツクリテで……ごめん」
    「……そんなことはない。……俺が、もっと早く……」
    「……」
     その言葉に星は笑う。元から病弱な身体だ、遅かれ早かれ、こうなっていた。寿命を削ったのはジュードのせいではない、自分の行いの末路だ。エリーに手紙はきちんと渡ったのか、分からない。自分が死んだあとのジュードの行く末が心配だった。だから、エリーに手紙を書いたのだ。
     段々瞼が重く感じる、どうやら時間は待ってくれないらしい。

    「……ジュード、ジュード……。……僕は、君に……会えて嬉しかったなぁ……」
    「……俺もだ」
     ジュードの言葉に嬉しそうに笑う。ジュードもまた、笑顔を向ける。星のその笑顔は、ジュードが顕現した時の笑顔にそっくりだった、そして、ゆっくりと瞼は閉じ、手に力が抜けた。
    「……」
     星は、空に逝ったんだな、とジュードは感じた。星はよく話していた。人というものは、死ぬと空に逝くと。自分の名前は、夜空に綺麗に光る星という文字からだ、と。まだ温もりが残る手を握る。誰か人を呼ばないといけない。けれど、呼びたくない。

     その時、病室の扉が開いた。ジュードは後ろをむく。開けた人物は看護師でも、主治医でもない。長身の男だった。男の顔を見てジュードはすぐに気づく、よく星が話してくれた相手だと。
     男は息を切らし、手にはなにやら手紙らしきものを握っていた。男の後ろには、黒髪の男性がいた。男は病室に入り、ジュードと星の顔を見る。
    「……遅れちまってすまねぇな……」
    「……あんた、エリー……だろ」

     エリーと呼ばれた男は返事をした。エリーとは初対面だったが、星が見せてくれた写真ですぐに分かった。エリーはジュードを見る。
    「こいつにお前さんのこと頼まれてたんだよ」
    「……最期まで、俺の心配……」
     いつもそうだ、自分よりジュードの心配をして、身体もきつかったはずなのに、それすら見せようとしなかった。最期まで優しくて、自分の事を愛してくれたツクリテだった、と星の手に優しく唇を重ねる。
    「うちに来な、うちにもたくさんニジゲンいるから」
    「……」

     横目でエリーを見る。ついて行くか迷った、星が死んだら認知を得ずに消えようかと思っていたから。ここの世界では自分のようなニジゲンには、人権がない。
     だからこそ、ひっそりと消えようかと思っていたのに、それを先読みしたかのような星の最期の行動にジュードは目を伏せる。こんな自分に、まだ消えるなと言うのだろうか。
    「……星の遺品を持って行っていいのなら、あんたについて行く」

     星の埋葬は、エリーの後ろにいた男───ニジゲンの柩夜がしてくれた。綺麗に埋葬されていく様子に、本当に夜空の星のようだ、なんて思う。涙を流さないジュードに、エリーは言う。
    「泣いてもいいんだぜ」
    「……」
     ジュードは黙って手を振った、すると晴れていた空がどんよりと曇り、雨が降る。小雨のような雨、その雨がどこか、ジュードが泣いているように思えた。ジュードは、じっと埋葬されていく星を見ているだけだった。
    「……ありがとう」
     綺麗に埋葬してくれた柩夜に、消えるような、泣いた声でジュードはお礼を言った。正面で見ていた柩夜には見えていた。ジュードが眼帯で隠していない方の目から涙が溢れているのを。


    『エリーへ
     
     突然の手紙、失礼します。手紙を書くのは何年ぶりかな、元気にしてる? 体はこわしてないかな。ごめんね、あまりきれいにかけないし、ひらがなが多いけれど、ゆるしてほしい。
     先日、ぼくの作品にニジゲンが現れたよ。ジュード。エリーが前、好きだと言ってくれた作品の主人公。とてもうれしかった、とてもやさしい子だよ。
     エリー、今からきみに、おねがいをかきます。ぼくは、もう長くない。こんなことをたのめるのは、エリーしかいない。もし、ぼくがしんだら、ジュードをおねがいしたい。かってなことを書いているのはわかってる、ぼくのさいごのおねがい、聞いてほしいな。
     かってな、おさななじみでごめん。

                    ほしより』

    「……はは、漢字すら、まともに書けなくなってるや……」
     星は力なく笑う、震えてるせいで漢字もかけない、字も所々歪んでしまい、ひらがなすらまともに書けていない。けれど、エリーなら、エリーなら自分の願いを聞いてくれる、なんて思っていた。
     どうせなら、まだ元気だった頃にもっと幼なじみであるエリーやメリー、羽紅に会いたかった。
    「……よし」
     なんとか便箋を封筒にいれて、星は影の上に置いた。
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    ちょこ

    DONEダミアさんお誕生日小説
    ダミアさんお借りしました!お誕生日おめでとうございます!
    モンブラン「ダミア、お誕生日おめでとうございます」
    「おー! ありがとな!」
     レイフが借りている拠点と言っていい住まいにダミアを呼び、目の前にケーキを出す。ダミアと前もって連絡を取っていたため、こうして呼べたのだ。ケーキはレイフの手作りだ。本当なら、料理も出そうかと言ったのだが、間髪入れずに断られてしまった。今度こそ上手く作れるような気がしたのにな、とレイフは残念そうに思いながらも、ダミアを見た。
    「このケーキ……モンブランか?」
    「そうです、アマロンを使ってます」
    「へー! 王様って呼ばれてるやつじゃん!」
     ダミアは感心したようにケーキを眺めた。アマロン、様々な栗の中で特段に甘い栗の事だ。身も大きいのだが、育てるのが難しく、しかも、大きく育てようと魔力を使うと、すぐに枯れるという性質を持っていた。なので、完全な手作業、時間をかけてゆっくりと育てる。そのため、栗の中の王様、という意味で【アマロン】と呼ばれるのだ。一粒だけでも驚くほどの高額で取引される。その高額さに、一時期偽物のアマロンが出回るほどだった。偽物のアマロンと区別を測るための道具すら開発されるほどに。
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