人伝に聞いた話 誰から聞いたかは覚えていない、人が話してるのを小耳に挟んだだけだから。けれど、その話は思わず琥珀の動きをとめた。その内容は、古金映李───エリーの家でたまに会うようになった連理が、無免連所属という話だ。
無免、なるほど。認可や創務で会わないはずだ、と琥珀は思わず納得する。一般人という考えは、この前の遭遇で消えていた。もしかしたらムジルシ、と思っていた琥珀にとっては、無免という事に驚きもある。けれど、戦闘時の目の据わりようは、無免と言われてもおかしくない。
けれど、あくまで人伝だ。本人からそれを聞いた訳では無い。聞いてもいいのかまよった、自分だって、相手に認可だと隠している身だ。相手だけ聞いて自分は隠すのはいささか卑怯ではないか、けれど、必ずしもエリーらのように、認可でも関係なく接する輩だけではない事を知っていた。
自衛のために隠している、法律というものがあるから、こうなる。あぁ、もどかしいな、なんて琥珀は深く息を吐いた。丁度、またエリーの家で作り置きを作る日がある。もし、その日に連理がいるのなら……聞いてみようと思った。
後日、エリーの家に行くと丁度連理と遭遇した。連理は相変わらずの笑顔で琥珀に駆け寄る。琥珀は挨拶をしつつ、周りに人がいないかをさりげなく確認して、口を開く。
「……連理さん、あの、人伝で聞いたのですが。……無免、なんですか」
「ん、うん。そう」
琥珀の問にあっさり答えた連理。あまりにもあっさり言うものだから、琥珀は思わず拍子抜けをする。もしかして、自分の所属バレてないだろうかと思わず心配する。
「え、あ、そうですか……」
「認可って間違われることはあるけどねぇ、意外だった?」
「……えぇ、少し」
琥珀はぎこちなく笑う。やはり連理は無免だった、けれど、連理は琥珀に対しての態度を変えてる様子は見られなかった。そういう人ではないから。もし自分が今ここで、認可と言っても、それでも態度を変えないのだろう。現に、今無免と聞いても、琥珀はいつも通り話せている。
話せているけど、自分が認可だとは言えなかった。
「琥珀くん、作り置きつくるんでしょ。お邪魔していい?」
「いいですよ、また連理さんの分を分けておきますから」
「ほんと? うれしいなぁ」
話すタイミングを失ってしまった、いつかバレる日が来るかもしれない。その時は、その時だ、と琥珀は目を伏せつつ、キッチンに着くまで、連理と話す。
なお、方角が変わっていて、少し迷子になったのはここだけの話。