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    ちょこ

    主に企画参加の交流小説、絵など投稿してます
    よその子さん多め

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    ちょこ

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    エガキナ

    よその子さんお借りしました

    ##エガキナ

    その青はとても綺麗に「あ、あの……」
     リヒトはアトリエをこっそりと覗き、そこで絵を描いていた鈴鹿に小さな声で声をかけた。声は小さかったが、鈴鹿の耳には届いたらしく、沢山の絵の具が着いて落ちなくなっていた絵筆を置き、振り返った。
    「リヒト? どうした?」
     鈴鹿が声をかけると、おそるおそるとリヒトはゆっくりとアトリエの中に入る。何か言いたいらしく、指をもじもじと動かしつつチラリと鈴鹿を見る。引っ込み思案な性格からか、中々言いたいことを言うのは緊張するらしい。あと、相当な人見知りからか、鈴鹿とも話すのが緊張していた。最初の頃と比べると、幾分か目を合わせられるようにはなっている。鈴鹿は急かすことなく、リヒトを見る。どのくらい時間が経っただろうか、リヒトは口をどもらせつつ、言葉を紡ぐ。
    「あ、あの、その……。……僕に絵を教えてくだ、しゃい……」
    「……俺に?」
     あまりに緊張したからか、最後は言葉を噛んでしまっていたが、リヒトは鈴鹿に絵を教えて欲しいと頼んだ。言い終わった後、また鈴鹿を見る。鈴鹿は少し手を口元に置いて考える仕草を見せたあと、リヒトの頭を撫でた。
    「なら絵筆とか買いに行かないとな、俺のは絵の具とかついてるし。持ち方から教える」
    「……え、あ、は、はい!」
     そう言って鈴鹿の後ろをついて行くリヒト。鈴鹿がいつも通っている画材屋に行き、店員と話しながら画材を選ぶのを眺めるリヒト。何を話しているのか自分にはよく分からず、詳しい鈴鹿と店員に任せていた。時折、絵筆をリヒトに持たせては、持ちやすいかどうかを聞きながら選ぶ。
     画材らを買った後、また鈴鹿のアトリエへと戻った。そして、鈴鹿はリヒトの方へ振り向くと口を開く。
    「リヒトはどんな絵を描きたいんだ」
    「え?」
    「基本的なのは教えるけど、描きたいイメージはあるんだろ」
    「え、えと……」
     相当恥ずかしいのか、少し顔を赤らめてしまったリヒト。鈴鹿と一緒に画材の説明を聞きながら、買ってもらったばかりの新品の絵筆をそっと握り、口を開いた。
    「そ、その、イメージはあります。……けど、あの、完成してから見せていいですか」
    「……それも面白そうだな、待ってる」
    「ひゃ、ひゃい」
     また言葉を噛んでしまっているリヒトに笑う鈴鹿、真っ白なキャンバスに、色の置き方、塗り方、どう物を描いたらいいのか、を教えていく。鈴鹿が仕事が落ち着いている時間を見つけては教えて貰っていた。
     日にちを通して分かったことだが、リヒトは作品内では頭が良い。その設定が反映されているのか、はたまた元から器用なのもあるからなのか、上達するのが早いのだ。リヒトも、上手くかけるのが楽しいのか、笑顔を見せて楽しそうに描いていた。それもあって、鈴鹿ともだいぶ打ち解けてるようにも見える、少なくとも、緊張した様子はだいぶ消えていた。
     リヒトに絵を教えてどのくらい時間が経ったのか、ある日、リヒトが小さなキャンバスを片手に鈴鹿に話しかけた。
    「鈴鹿さん、あの、前言ってた話……。イメージしてたの、描いてきました。……見て、欲しいです」
    「お、描いてきたんだ。なら見る」
     リヒトはそっと鈴鹿にキャンバスを渡した。そして、キャンバスに描かれた絵を見て、鈴鹿はほんの少しだけ目を見開く。
     その絵は、綺麗な澄み渡った青空だった。一言に青空と言っても、色んな色の青が散りばめられていたのだ。それはバランスを損なうことなく、誰が見ても一目を引くだろう。鈴鹿はそっとキャンバスを手でなぞったかと思えば、口を開く。
    「……すごく綺麗だな、教えてた期間短かったのに、よく描けてる。……ひとつ聞いていいか? 何で青空を描こうって、思った?」
    「……僕にとって大切な色だからです」
    「……大切な色」
     リヒトはキャンバスに描かれた青空を見て、笑って話す。
    「本の世界から引っ張ってくれた色だから。……僕を引っ張ってくれたのは、この青空と、フレイの目の色だから。……だから、描きたいなって思ったんです」
     リヒトとフレイの初めての出会いの話をしているのか、と鈴鹿はすぐに分かる。物語では、リヒトは家にとじこもり、本の世界から抜け出そうと出来なかった。けれどある日、旅に出たばかりのフレイがリヒトのところまで行き、そのままリヒトを引っ張ったのだ。世界は怖い、そう思っていたリヒトの耳に、フレイの言葉が入ったのだ。

    ───世界は怖くない!

     その言葉で、リヒトを目を開けた。目を開けた時、鮮やかで、澄み切った青空と、その青空を閉じ込めたような青い目のフレイと目が合ったのだ。

     これがリヒトとフレイの初めての話の簡単な流れだ、リヒトはニジゲンになってこの世界に来ても、あの青さが自分の心に強く残っていたのだ。あの青空をどうしても描きたくて、実際に作品の作画担当をしていたメリーの所まで行き、あの青空は何を参考に描いたのか、まで聞いたのだ。
     メリーから聞き、自分を執筆した琥珀にも聞き、話を聞いた上で、自分の思った"青"で塗ったのだ。
    「……まだ拙い絵かもしれませんけど、青は僕の大事な色です。大好きな色です」
    「……そっか。……なぁリヒト。お前の絵は、人を救えるよ」
    「……え?」
     鈴鹿がそう呟く、鈴鹿の言葉の意味がわかってないリヒトを横目に、アトリエの壁にリヒトの絵を飾り始める。いきなり飾った鈴鹿に対し、ぎょっとした顔でリヒトは慌て出す。
    「えっ、なん、なんでっ」
    「そりゃ、一番弟子の絵だからな。飾るのは当たり前だろ」
    「い、一番弟子!? は、はわ……恥ずかしい……」
    「恥ずかしがらなくていいのにな」
     そう言ってリヒトの頭を大きく撫でるように、わしゃわしゃとする鈴鹿。
     アトリエの一部分に、鮮やかな青が飾られた。
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    ちょこ

    DONEダミアさんお誕生日小説
    ダミアさんお借りしました!お誕生日おめでとうございます!
    モンブラン「ダミア、お誕生日おめでとうございます」
    「おー! ありがとな!」
     レイフが借りている拠点と言っていい住まいにダミアを呼び、目の前にケーキを出す。ダミアと前もって連絡を取っていたため、こうして呼べたのだ。ケーキはレイフの手作りだ。本当なら、料理も出そうかと言ったのだが、間髪入れずに断られてしまった。今度こそ上手く作れるような気がしたのにな、とレイフは残念そうに思いながらも、ダミアを見た。
    「このケーキ……モンブランか?」
    「そうです、アマロンを使ってます」
    「へー! 王様って呼ばれてるやつじゃん!」
     ダミアは感心したようにケーキを眺めた。アマロン、様々な栗の中で特段に甘い栗の事だ。身も大きいのだが、育てるのが難しく、しかも、大きく育てようと魔力を使うと、すぐに枯れるという性質を持っていた。なので、完全な手作業、時間をかけてゆっくりと育てる。そのため、栗の中の王様、という意味で【アマロン】と呼ばれるのだ。一粒だけでも驚くほどの高額で取引される。その高額さに、一時期偽物のアマロンが出回るほどだった。偽物のアマロンと区別を測るための道具すら開発されるほどに。
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