SHHis(緋田美琴と七草にちか):否定の道を踏んで:ライブ後に二人で反省会をする話(――すごいな……!)
初めてのSHHisのステージから一晩明けてから調べると、SNSは絶賛の声で埋め尽くされていた。
『ラスサビ鳥肌立ちっぱなしだった』
『にちかちゃん歌うま! 美琴ちゃんダンスやば!』
連なる称賛にプロデューサーの興奮は募る。二人にも早く伝えたいと思いながら足早に事務所へ向かうと、二人は既にソファに腰掛けていた。
「おう、お疲れ!」
「お疲れ様、プロデューサー」
「……お疲れ様ですー」
美琴の端正な声ににちかが続く。ステージの翌日でも美琴の面差しに高揚はなく、にちかの頬にも自然な赤みがあるのみだ。
「――改めて、昨日のステージはお疲れ様」
言いながらスマートフォンと手帳、ペンを机上へ置く。流れるようにスマートフォンに手をかざすと、ロックが解除されたスマートフォンはSNSに投稿されたSHHisの感想を映し出していた。
「感想、すごくいいことばかり言ってもらえてるぞ!」
「――」
「そうだね。参考になった」
冷ややかにも聞こえる美琴の声が彼女の常温だと、プロデューサーも理解はしていた。
でも。
「ラスサビ以外の部分があまり盛り上がれなかったのかもしれない」
「――っ」
「私の課題は歌、にちかちゃんはダンス。……レッスン、増やしてもらえる?」
「…………」
にちかの円い目に厳しい色があった。
「――美琴。ファンは評価してくれてるんだ」
「え? うん」
美琴の瞳はどこまでも変わらない。
「評価されなかった部分は全部悪いってことだから」
「……はい」
「――二人とも――――」
「……他に何かある? なければレッスンに行くけど」
声は虚空から響くかのよう。
彼女に何を伝えれば良いのかも分からないまま、プロデューサーは二人を見つめるばかりだった。