Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    真央りんか

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 41

    真央りんか

    ☆quiet follow

    タビコvsクラージィ とヴェントルー

    クラさんは人間相手なので、ドーンためらい。
    匂い設定捏造。
    タビコは征服感で興奮するので、ピヨちゃんが心配してる間に飽きる。

    拮抗していたかに見えた路地裏の勝負は、案外早い展開を見せた。
    攻撃の意志が薄く防御に回っていた吸血鬼は、地面に膝をついて頽れた。
    その足には片方だけ靴下がない。

    「なかなかやるけど、足元がおろそかだったな」
    人間・靴下コレクションことタビコの手に、奪い取った脱ぎたて靴下が握られている。
    タビコは勝利宣言の代わりに戦利品を鼻に押し当て、思い切り吸い込んだ。
    「ん~~~~~~~…ん?」
    堪能していた表情に怪訝の色が混じる。
    「おまえ、吸血鬼だよな?」
    奇妙な問いを口にして見やれば、相手は半ば立ち上がっていた。
    「おお?」
    「…クツシタ…ヘンタイ…」
    ぶつぶつつぶやいて、吸血鬼は残る靴下を自ら脱いだ。完全に立ち上がると、靴下を掌に載せまっすぐに差し出す。

    「この身の何一つ、私のものではない。あなたがこれを必要とするならば、持っていきなさい」

    発せられた声はしっかりしていた。異国の言葉で内容はタビコにはわからない。
    靴下を差し出す手に揺るぎはなかった。
    「クツシタ ドウゾ」
    疑いようもなく示された意志に、タビコは一瞬目を細め
    「出されたら普通にもらう」
    と相手の手から素早く靴下を奪うと、ビルの壁を蹴り上げて跳び、夜空の狭間へ消えていった。
    そこへドタバタと退治人たちがやってくる。通報を受けたのだろう。
    「あの変態、またやりやがった!」
    悔しそうな声をあげた退治人は、被害者の吸血鬼が裸足と気付くと、一転して気遣わし気な声になる。
    「モジャさん、大丈夫ですか、気分悪いとかないですか」

    靴下を差し出した吸血鬼、クラージィは、凛とした姿勢でタビコが消えた方向を見送っていたが、振り返ると満ち足りた表情で答えた。
    「ダイジョウブ、ワタシ、ゲンキデス」



    「タビコ、二度とあの男に手を出すな」
    タビコの帰宅早々、キッチンにいたヴェントルーは口を出す。
    買い出し帰りにヴェントルーはタビコとクラージィを見かけていた。
    ディックがYから聞き込んできて、古き血の間ではノースディンの血族のことはみな知っていた。タビコがクラージィにちょっかい出したのがノースディンに知れたら、文句を言ってくるに決まっている。
    「あいつはネチネチ言うんだ、鬱陶しくてかなわん」
    「あの男ってどれだ?」
    聞き流していたタビコが問うて、「両方靴下とったやつだ!モジャモジャの!」と返事をする。
    思い至ったタビコの顔に薄く笑みが浮かんだ。手早く取り出したのはクラージィの靴下だ。一足まとめて匂いを吸い込む。ヴェントルーは顔を引き攣らせた。
    何かを確信してタビコは上機嫌になった。
    「似ている奴はまあまあいるが、こんな奴は初めてだ」
    「どうした」
    つい聞き返してしまったヴェントルーの傍にタビコはやってきて、握った靴下を鼻先に突き出す。
    「血の匂いがまるでしない」
    「なに?」
    と思わず嗅ぎそうになり、ヴェントルーは慌てて留まる。その姿にタビコは軽く笑った。
    「なかなか貴重な靴下だ。あの男を狙い続けたら、いつかは血の匂いがするようになるのかな」
    「だから、あいつはダメだと言って…」
    だがもうタビコは聞いていなかった。
    靴下とともに隣の部屋へ消える。
    勝手さに憤りと諦念と日常の平穏がないまぜになって、ヴェントルーは「まったく…」と口の中でもごもご文句を言う。
    それはいつも通りのようで、

    あいつ、あんなにうっとりしてる中で血の匂いを感じてるのか。

    その事実に、ヴェントルーはぞくっとした。

    さっさとあの男に飽きさせよう。
    ノースディンに自分の身内をどうにかしろと言っておかねば。

    顔を顰めたのは、予想されるネチネチのせいだ。
    「食事はもうできるぞ、着替えたらとっとと来い」
    予定は胸の内にしまっておいて、ヴェントルーは出来る限り尊大に、食卓への誘いを口にしたのだった。

    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖👍💖👏😍💕💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works