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    真央りんか

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    真央りんか

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    神在月+ナギリ+三木。三木視点。クワさんもいるよ

     神在月のアシスタントとしての三木の仕事はいくつかある。まず第一に、作画作業。そして食事配分。本人が食べたがらないし、食べると眠くなる危険もあるが、脱水やエネルギー切れを気にかけなくてはいけない。一番難しいのが、奇行への対応。すぐに手が止まって他の行動をしだす神在月をどうにか作業に戻し、お狂いになってる時はある程度付き合って気分を乗らせる。
    「三木くんおると、先生が正気に戻るの早くて助かるわ」
     締切は今日ではないのだが、ネームがところどころ不安ということでクワバラも来ていた。描けるとこから埋めていかないと間に合わないのだが、悩む神在月がすぐにおかしくなるので、作画もなかなか進まない。
     とりあえず、三木に作業を回してる間に考えるよう宥めすかして、手を動かすように叱咤する。泣きながらそれでも描き進める神在月が、天啓を得たように顔を上げた。いきなり立ち上がって玄関に向かってダッシュする。まさか逃亡かと三木は焦る。今までにないパターンでとにかく後を追うと、ドアを開けた神在月は、両膝をついて叫んだ。
    「ありがとう!!!」
    「何も言ってないだろうが、このカスが!」
    「カスです!プリーズヘルプカス!」
     玄関前に現れたコート姿の大柄な男と、口の悪いアホなやり取りをしている。ひとまず逃亡ではないとわかって、神在月が招き入れたその男と共に三木は部屋に戻った。
    「お? こないだはおおきに。今週も入ってたんか、よろしゅうお願いしますわ」
     クワバラも顔見知りらしい。最近たまに臨時のアシが入っているのは聞いていた。この男のことらしい。
    「ミッキー、辻田さん、ヘルプアシさん。トーン処理と背景おまかせできる人。辻田さん、ミッキー、だいたいなんでもおまかせできる人」
     どうも…と互いに会釈だけする。机を譲って、三木は座卓のクワバラの隣に移動した。一旦手が止まったことで、ペンを持たずにぐにゃりとなった神在月を、途端に辻田が叱り飛ばした。三木より早い。その後も的確に締め上げてくれるので、三木はいつになく楽だった。
     辻田は随分口が悪いが、泣いていようが神在月はまったく堪えてない。ツッコミ続けて辻田の息が切れそうなときは、三木がサポートして、狂ったり逃避する隙をつぶしていく。おかげで、作画は順調に進んだ。しかし、煮詰まってない部分のアイデアが全く出てこなくなった。描ける部分がなくなって手が空いてしまい、三木は辻田に声をかける。
    「休憩にしましょう。メシくいました?」
    「いや…いや、いい」
     三木の世話焼きセンサーが働く。部屋に入っても脱がない辻田のコートは、裾や袖口が擦り切れている。三木は返事に構わず冷蔵庫を開けた。
    「あいつ食わない時期でも買い込むから、賞味期限の管理が怪しいんですよ。あ…これ、食っちゃいましょう。クワバラさん、どうします?」
    「もっとガツンとしたもん食いたいわ」
     そう言いながらも食べるというので、ヨーグルトを三つ取りだして、辻田とクワバラに渡す。蓋を開けたところで辻田と自分の分にシリアルを振りかけた。
     ふとデスクを見ると、キメラがいた。半裸の人体に頭部が馬で、蛇のおもちゃが尾のように紐で取り付けてある。手は猫の手の手袋をつけている。
     辻田が怒鳴りつけようとするのを、三木は止めた。
    「アイデア出しだから、ちょっと待ってあげて」
     イライラした様子の辻田の側に立つと、三木と体躯はかわらない。身長はやや辻田が高い。たぶんこの人強いと思った。
     今日は他のアシが来ることを聞いてなかった。クワバラも知らなかったようだ。それどころか、神在月も知らなかったのではないか。中途半端な時刻に、三木も忍者のクワバラも気付かない来訪の気配に反応した神在月。
    ——辻田さん、吸血鬼なのか
     神在月の能力が発揮されるところなど、長い付き合いでもほぼ見たことがない。金色の目と牙以外、これといってらしさのないダンピール。あいつもダンピールなんだな、と改めて思いだした。
     そのダンピールが奇声を発しだした。ヒィヒィ鳴いているのは、馬というより怪鳥だ。
    「いつまでやらせておけばいいんだ」
     辻田は苛立ちながらも呆れた様子だ。テンションが最高潮になってきたので神在月の調子は良さそうだが、このままだと体力が持たない。三木はなぜかこの家にある大弓を持ってくると、矢をつがえたふりで思い切り引く。
    「南無八幡大菩薩!」
     手を放してビンと弓が鳴ると、ひときわ大きな奇声をあげて神在月は倒れた。ノッてやる三木も三木だが、本当に怪異を倒した気になる。キメラ、もとい、鵺、もとい漫画家はガバッと起き上がると、
    「雷…ラクライ…月…丸……満漢全席だ!」
     叫んで机に取りついた。閃いたようで良かったが、「え、その作画を今からかよ」と三木は正直思った。そこに辻田が食って掛かる
    「丸ってことはマルだろうが! 丸を出せ!」
    「ふえええええん!……回転テーブルを回し車のごとく駆け抜けることで電撃パワーが…いける!」
     新たなアイデアと共に、机にかじりつきだしたので、三木は安堵した。こうなると神在月の手は早いので、そろそろ出番かと食べた片付けをして三木も戻る。直接下描きに入って、空いてる部分を埋めた途端に横たわろうとした神在月を、辻田が叱咤する。奇行と怒鳴り声など構わぬ様子で、原稿を見たクワバラが頷いている。

     連絡のない来訪。擦り切れた袖や裾。気になることがなくはない。
     ただ、クワバラに続いての相性良さげな存在に、安定して来てもらえないかなと思案する三木だった。
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