Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    kadukimocha

    北渉/夏つむ
    ドラマティカ関連(PaiR、西悠奇ほか)も取り扱いあり
    リクエストは可能な範囲で対応するのでお気軽にどうぞ

    ☆quiet follow Yell with Emoji 👏 👓 🍋 💖
    POIPOI 4

    kadukimocha

    ☆quiet follow

    8/21に出す歩哲新刊の表紙です!H-32b/ブレイクタイムです。イラストは津之田さん(@unknown_06_09)におねだりしました♡

    #北渉
    northAfrica
    #歩哲
    walkingPhilosophy
    #劇団ドラマティカ
    dramaticaTheaterCompany
    #PaIR

    Tap to full screen (size:8599x6071).Repost is prohibited
    💖❤💖💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    m_matane_

    PROGRESS
    2

     あの頃。僕らが生まれたてみたいに何も知らなくて、それでも赤ん坊とは呼べない程度には傷まみれだった頃。
     17歳の燐音くんはいつだって怒っていた。知識や常識がない故に納得できない事象が多く、それにぶつかるたびに怒った。周りにも、ものを知らなさすぎる自分に対しても。野菜の値段に怒り、電車の優先席に座る若者に怒り、ポイ捨てされているゴミに対して怒った。自分の常識と世間の常識の中でぐらぐらと揺れながら、プライドをすり減らしながら、それでも声を上げた。
     怒るといっても声を荒げて暴れまわるわけではなかった。かたちのいい目をしっかり開いて、青いくらいにひかる白目にぎらっと怒りを宿して、理解の範疇外の対象を見つめた。その様子を見るたびに僕は、彼の心に小さな傷がついていく音が聞こえたような気分になった。失望して、怒って、それでも赦したくて立ち上がり続ける燐音くんに、「きれいごとだけじゃ世の中は回らないっすよ」と言ってあげられたらどれほど良かったんだろう。とはいえ、そんな残酷なことを誰も言えやしなかったに違いない。少なくとも僕には到底無理だった。背筋を伸ばして、透き通った眼で物事を見る彼を曇らせたくなかった。
    7002