Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    ほしいも

    @20kmtg

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 138

    ほしいも

    ☆quiet follow

    ■現パロ ■廃れてる二人、薬物の描写あります。苦手な方は避けてください。

    猗窩煉ワンドロ「注射」「ネクタイ」「至高の領域」 潮風の香る町。
    日光から逃げるように閉ざされたカーテンの向こう側、錆び付いた転落防止柵が覗き見える。隙間から射す明かりに顔をしかめた青年が、苛立ちをぶつけるようにカーテンを引く。「壊れるぞ」と嗜めるような声に返事はしない。

    「縛ったほうがいいんじゃないか?」
    「そうか?誰もそんな事していないぞ」
    「病院でゴムバンドみたいなのされるだろう」
    「医者にかかったことがないな」
    「そうか、君はゴリラだったな」

     室内灯を付けても、外の明るさに負けてしまって薄暗い。
    テーブルに並べられる細々とした小物のひとつひとつが、どれも彼らの所得を吸い取って、貪っているというのに、宝のように扱おうという気配はない。
     空気よりも重たい紫煙が二人の顔の近くに漂って、軽口の度に呼吸の軌跡を知らせるようにして右へ左へと揺れ、散って、空気の中へ溶けていく。

    「ネクタイ」
    「は?」
    「ネクタイで縛れるんじゃないか」
    「なるほど!」
    「ほら、さっさとしろ」
    「君は賢いな」
    「こんな賢い男を掴まえて、ゴリラだなんだとほざいていたな」
    「優秀なゴリラだ」
    「はいはい」

     咥えた煙草を灰皿代わりの食器へ押し付け、視線の先にある草臥れたスーツへ這って向かう。ポケットから皺の付いたネクタイを取り出すと、満足そうに笑い合った。

    ・・・

    「どうだ?」
    「どうもこうも…」
    「……おい」
    「ははっ、杏寿郎!手が利くうちにお前にもやってやる」
    「そうしてくれ、縛れるか?」
    「無理かもな、自分で出来るか」
    「君はいつも自分勝手だ!」
    「そういうな、これは随分と気分がいいぞ」
    「飛ぶ前にさっさと打ってくれ」
    「お前もこの至高の領域に連れてってやろう」
    「至高の領域ね」

     体の中に、異質なものを足し合う。
    血管を通って、冷たさが駆け巡るのは思い込みからくるイメージだろう。何度か瞬きを繰り返し、細かな血管まで意識を巡らせて効果を待つ。細やかなイメージが霞みがかって、みるみる頭の回転が鈍っていくのが分かる。
     レールを擦って、勢いよく閉ざされるカーテンのイメージ。隙間から射しこむ日光が、さっきまで責め立ていたというのに、包み込むように温かい。
     部屋に漂う埃がきらきらと煌めいて、世界が祝福に満ちて見える。

    「あはは、なるほどな」
    「これは地獄だ」
    「天国だろう」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💉💘😍❤❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works