恋と呼ぶには、青すぎたあいつはいつの間には、私の傍にいた。最初は多分互いに警察学校でたまたま同じクラスになったクラスメイトだった。お互いに警察になるために切磋琢磨するのに丁度いい人だった。
同じくらいの温度感で、同じくらいの成績で、ライバルという言葉がこれ以上に似合う相手はいなかった。だからだろうか、互いになんとなく意識してた気がする。どちらが先になんて、もう覚えてないけれど何かをきっかけに話す様になって仲良くなった。お互いの行きつけの店に行ったり、勉強や体術の訓練をしたり。
周りから見てもきっといいライバルだったと思うし、その結果二人とも捜査一課という警察の花形となる部署に所属することができた。
私はなんとなく幼いころから持っている正義感に突き動かされるがままこの職を目指した。あとは、公務員として生きていれば安定した給料で困ることがない……ということぐらいだろうか?他の人に比べれば、あまりにもちっぽけで、陳腐で、どうしようもない動機だった。
でも、恭雅は……どうだったのだろうか?あんたは、何を思ってこの職についたの?
心ちゃんを守りたかったの?それとも、他の誰か?それとも私と同じような理由?
あんなにも長い間、一緒だったはずなのに本当に何も知らない自分に嫌気がさす。
「恭雅、私さきっとあんたのこと好きだったよ」
スパロー内に用意された自室に戻る前にそっとしまったティアベルをまた取り出して、今度は部屋の照明に当ててみる。さっきも、今も特別何かが変わる事なんてないのに、ちょっとした変化があるんじゃないかとどこかで期待してしまう。
「おかしいよね。私……よく考えたら、なんにもあんたのこと知らかったんだよ」
「なのに、好きだったんだっていう思いが確かにあるの」
「恋ってこんな感じだったのかなって思えるの」
「ただあんたが居なくなったことが辛いからそう思うのかな」
「…………否定も肯定もできないことなんてわかってるのに、どうしてこう独り言が止まらないのかな?」
ねぇ、お願いだから嘘だって言ってよ。
またどこかのテレビにでも映ってよ。俺は生きてるって私に教えてよ。
そして、笑ってよ。バカだなって。そんなの勘違いだって。否定してよ。
お前は、俺の相棒だって言ってよ。それ以上の関係なんてなかったって言ってよ。
ミラの目を通して、私を見てないでもっと早く会いに来て欲しかったよ。
我が儘なのは分かってるけどさ、あんたは私の我が儘に散々付き合ってくれてたのに。
最後の我が儘は、ダメなの?独り言を言うだけ言って、私が断わらないの知ってるくせに狡いよ。あんたからの言葉じゃ、憎めないじゃない。
警察としての仕事、あんたの代わりに生きてる限り全うしようと思ってたのに。もうできないし、スパローも任せられたけどあんたみたいに上手くまとめれる自身なんてないし。
「私は……適任なんかじゃないよ」
「遺言なんて聞きたくなかった」
「まだ、一緒に居たかった」
吐き出しても、吐き出しても無尽蔵に彼への言葉が湧き出す。それは花火の様に瞬く間に現れて消えた彼への恨み言。だけど、決してそれだけじゃなくて知らぬ間に根付いた得体の知れない想いと一緒に。
「恋って呼ぶには、青すぎたのかな?ねぇ、教えてよ恭雅」