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    hina_labo

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    今冬発行予定の新志の冒頭部分。
    後ろ向きな理由で結婚することになった2人が徐々に夫婦になっていくお話。

    #新志
    xinzhi

    プロローグ 組織は無事壊滅した。薬の情報も入手し完成した解毒剤で二人とも元の姿に戻って無事ハッピーエンド。とはいかないのが人生だ。

    宮野志保は未成年であったこと、毒薬は偶然の産物で彼女自身に毒を作る意志はなかったことから保護観察処分となった。とはいえ、彼女を引き取ってくれたのは灰原哀の頃からお世話になっている阿笠博士。実質無罪放免と言ってもいい状況だ。自由な生活と引き換えに志保に与えられた条件は三つ。

    『今後一切薬の開発に携わらないこと』
     これは当然だろう。科学者は好奇心の塊だ。たとえ悪意はなくても時にその異常なまでの探求心が厄介なものを生み出してしまうこともある。

    『携わる業務、または研究内容について定期的に報告をすること』
     これも当然のこと。むしろ定期報告が必要なのは仕事内容だけでプライベートなことは一切聞かれないのだからラッキーなくらいだ。
     志保が選んだのは医療機器の開発。医学や薬学の知識だけでなくIT技術にも長けていた彼女にとっては就職先を見つけるのはさほど難しいことではなかった。何より公安からのお達しである薬の開発には一切関わらないのでその点気が楽でいい。IT分野であれば公安にとってもお得意の分野。彼女の仕事ぶりを見張るにはちょうどいいのだろう。定期報告で一度も小言を言われることはなかった。

    問題は三つ目だった。問題とは言っても宮野志保にとっては大した問題ではない。だって宮野志保は生涯一人で生きていくつもりだったから。博士が一緒にいてくれればそれで充分。問題は彼の方だ。志保にとって三つ目の条件であり、工藤新一に与えられた唯一の条件。

    『宮野志保と工藤新一は子孫を残してはならない』

     志保が両親の研究資料を元に復活させたAPTX4869、及びその解毒剤の情報は全て公安が最高機密として厳重に管理されることになり、その神秘的な毒薬は多くの国民が存在すら知ることのないまま永久にこの世から葬り去られた。
     志保にとっては未練も執着もない。公安が管理することで人生を狂わされる人が二度と出ないのならと、志保は全てのデータを放棄した。問題は巻き込んでしまった彼だ。幼馴染の彼女とようやく両想いになれた少年にとってこれ以上残酷な事実はないだろうと、どこか他人事のように公安が告げるのを聞いていた。
     その後も二人の付き合いは順調に続いていたようで正直ほっとしていたが、表面には見えないところで二人の間には徐々に埋められない溝が生じていたようだ。
     大学を卒業して間もなく二人は分かれた。あの条件を知らなければ生活の変化によるすれ違いとしか思わなかっただろう。
     一度だけ珍しく酔った彼が深夜に博士の家を訪れたことがあった。
    「蘭を、抱けないんだ」
    「別に焦らなくていいんじゃない? 二人ともまだ学生なんだし」
     新一の深刻そうな表情には気付かないふりをして志保は軽く返した。学生とはいえ二人とも二十歳を過ぎている。避妊さえちゃんと気をつければそういう関係になってもおかしくない。むしろ二人の関係を考えれば遅いくらいだ。
    「そう……だな。わりぃな、こんな時間に押しかけて」
    「たまにならいいわ。おやすみなさい、工藤君」
    「サンキュ、宮野。おやすみ」
     後に志保はこの時弱っていた新一に優しい言葉をかけるんじゃなかったと後悔した。

    「よう、宮野。おかえり」
    「工藤君、あなたね……」
     仕事から帰って来た志保を当たり前のように出迎えてくれたのは博士ではなく新一だった。江戸川コナンの時と何ら変わらぬ遠慮のない態度に志保は軽くため息をつく。彼にとっては幼い頃からずっとお隣さんだから我が家も同然なのだろう。しかも厄介なのが彼の探偵という職業柄、勤務時間の決まっているサラリーマンと違って暇さえあれば博士の家に入り浸っている。
    「しょうがないだろ、フリーなんだから」
     そのセリフを言われては互いの事情を知っている志保は黙認するしかなかった。子供を残せない新一にとって、ここが一番楽なのだろう。そう思うと正直悪い気はしなかった。例え消去法だとしても志保が暮らしているこの空間が新一にとって一番心穏やかでいられるのは彼の態度からも明らかだ。
     蘭と別れてから新一はプライベートで新しい人間関係を作らないようになった。たまに飲みに行くことはあるけれど、あくまでも仕事上の付き合いだけ。結婚は禁止されていないが、新一が子供を作れない理由は国の最高機密だ。まだ薬に副作用による身体的な理由ならいくらでも嘘を付けただろうに。結局彼は「結婚しない」選択を選ばざるを得なかった。
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