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    NARUHA

    推し関係でいろいろ
    エリオス・ビリーワイズ(フェイビリ、グレビリ、他)
    ドリミ・新兎千里(獅子新)
    RKRN・鉢尾(尾浜関係)

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    NARUHA

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    一応これで完結してもよい。
    死ネタだけど死ネタじゃない死ネタ、とその続き。
    書ければ続きも書きたい。
    バッドエンドだけど続けばハピエンです。
    フェイビリのつもりだけど多分普通にベスティ。

    #エリオスR
    eliosR.
    #ベスティ
    besty

    夜の海(仮題)暗がりにいた。
    エリオスタワーにも一応消灯時間みたいなものはあって、いつもは賑やかで煌々と明るい談話室も深夜を過ぎてほどなくすると深い闇に沈んでいく。
    そんな時間にも関わらず、暗い談話室でスマートフォンを片手にソファへと体を沈めていた。
    しばらくするとフェイス・ビームスがふらふらとやってきてつい笑ってしまう。まるで夢遊病みたい、と言えばムッとして顔を背けられた。顔良し、スタイル良しの、均整のとれた男が近付いてきて、目の前の椅子に腰掛ける。以前は隣に座ってきていたけれど、どうしてか最近はそれをしない。
    僕ちん何かしたっけ?と首を傾げるけれど、心当たりは大いにある。とはいえ指摘するほどのことでもなし。
    話したいことがある日も、特別何か用事がない日でも、DJはここ最近ずっと深夜に談話室へと現れる。今日は特に何もないみたいで、ただじっと黙り込んでこっちを見ているだけ。そんなに見られたら照れちゃうヨ。
    時々何かを言おうとしては口を閉ざす彼を、オイラは申し訳ない気持ちで見ている。きっと眉毛は下がりきってて、情けない顔になってるはず。
    分かってる、言いたいことは知ってる。でもそれを口にしちゃうのは怖いよね。オレっちも、そう。

    もう数日も、この暗い場所にひとりでいる。
    ずっとずっと、ここにいる。
    多分サブスタンスの影響だと思うんだけど、DJ以外と会ってないから何が起きたのかは分からない。
    DJの様子からするに、何が起きているのかは彼の方が理解しているんだろうな。でも、それを話せないって結構大変な事態なんだろうな。
    でも、そろそろ聞かなきゃ。

    「DJ、そんなに言いづらいことがあるの?」
    「……」

    そう聞けば、DJはぎゅっと眉間に皺を寄せて、震える唇でこう言った。

    「きみは、もういないんだって」
    「え?」
    「死んだって、言われた、」

    くちびると同じように喉を震わせながら、DJはそう言った。
    なんだ、なるほど。それならナットクだ。
    でも最期にお父さんに会えなかったのがザンネンだったな。オイラはなぜかここから出られないし。

    「そうだったんだ」

    DJは黙ったまま俯いて、コクリと頷いた。小さく肩が揺れていることには気付かないフリをする。
    中途半端に会えてしまう結果になった今の方が、きっと辛いだろうな。オレがDJの中でどれくらいの割合を占めていたかは分かんないけど、泣いてくれるくらいには大事に思われていたのなら嬉しい。不謹慎かもだけどね。

    深い闇がずっとずっと、沈み込むように談話室を染めている。まるで深海へと下りていくような暗いあおの中で、彼が溺れてしまわないようにと手を伸ばした。

    その手は彼をすり抜けてしまうだけだったけれど。


    ◇◇


    月の明るい晩のことだった。
    何となく眠れない日々が続いていたフェイスは、スマホで時間を確認し部屋を出る。明日は朝からトレーニングがあるから早々に眠ってしまいたい。そう思ってタワー内を少しだけ散歩するかと出てきたのだ。
    まだ日付が変わってそれほど経ってはいない。三十分程度ふらふらして、自販機でホットショコラでも買って帰ろうとそう考えたのだ。

    自販機の傍には談話室がある。ホットショコラを買って、もうすっかり暗くなったそこに足を踏み入れれば、見慣れた人影が目に入る。
    ビリーだ、とほんの少しの面倒さと嬉しさが湧き上がって、気軽に声を掛けた。ビリーもフェイスに気付いていたようで「どうしたのDJ」と明るく声をかけてくる。消灯されているとはいえ、月の明るい夜なのにひどく暗く見えるのは気のせいだろうか。

    「眠れないから軽く散歩してたとこ」
    「なるほど」
    「ビリーは何してるの?」
    「似たような感じかな、多分」
    「多分って、なにそれ」

    笑いながら、フェイスはビリーに近付いていく。いつものようにここでお喋りするのもいいけれど、何せ明日は朝から用事があるのだ。ヒーローになりたての頃ならば気にもせず平気で夜更かしをしていたが、ここ最近はなるべくヒーローという仕事に力を入れるようにしている。
    なかなか座らないフェイスを不思議に思ったのか、ビリーは小首を傾げながら「座らないの?」と訊ねてきた。

    「今日はもう戻るよ。明日早いんだ」
    「ンッフフ、真面目になっちゃって」
    「うるさいな。ビリーこそ、早く戻りなよ。グレイたちが心配するんじゃない?」
    「ソウダネ。もうちょっとしたら戻るよ」

    「おやすみDJ」と手を振られる。何だか急かされているような気がして、ちょっとだけ不審に思ったけれど、しつこく絡まれるよりは余程いい。フェイスは少しだけ間を空けてから「おやすみ、ビリー」と返した。

    やっぱり月は明るいのに、どうしてかそこだけ暗く感じてしまう。訳の分からない違和感に薄ら寒い恐怖を覚えたのは気のせいだと思いたい。


    翌朝のことだ。思いのほかよく眠れたらしく、スマホの目覚ましも通り越して同室のジュニアに叩き起された。
    なぜだか鳴らなかった目覚ましを不思議に思いながら、支度を済ませる。共有スペースへと向かえば、キースとディノが深刻そうな顔をして二人を出迎えた。

    「あ、フェイス……」

    こちらが声をかける前に、ディノが気まずそうにフェイスを呼ぶ。どうかしたのだろうか。朝の挨拶もすっ飛ばすなんで珍しいことだ。言いかけた言葉はキースに止められて、二人はフェイスとジュニアに朝のトレーニングが中止になったと告げる。

    「中止?なんでだよ」
    「いや、まぁ。なんつーか……とりあえずブリーフィングルームで、話があるから。行くぞ」
    「何か緊急事態?それにしては何の通信も入ってないけど」

    フェイスは言いながらジュニアにも視線を向ける。ジュニアも「さぁ?」とばかりに肩をすくめるだけだ。

    「行けばわかる」

    それしか言わないキースと、やけにフェイスを気遣うそぶりを見せるディノに疑問は募るばかりだ。
    そうして着いたブリーフィングルームには、各セクターの研修チームが揃っていた。
    ――イーストセクターの面々、以外は。

    「揃ったか」

    メンターリーダーであるブラッドの声が響く。各チームが何かしら良くない気配を察知しているらしい。あのアキラですら静かに耳を傾けている。いや、もしかしてもう既に何事かを聞いているのかもしれない。

    「結論から言おう。昨日、ビリーが殉職した。原因は、サブスタンスだ」
    「……え?」

    思わず声が出た。誰よりも先に。メンターたちは聞かされていたようで、悲しそうな、人によってはバツの悪そうな表情を浮かべているが、ルーキーたちは信じられないという顔で、ただただ絶句していた。
    けれどもフェイスは解せない。なぜならフェイスは昨晩、殉職したというビリー・ワイズに出会っている。深夜、いつもの談話室で。

    「それって昨日のいつ……」
    「昼過ぎだ。パトロール中の事故だったと聞いている。あまり、詳しいことは現時点では言えない。友人だったお前には辛い話だが……」

    かつてそうせざるを得なかったディノのことを考えているのかもしれない。悲痛そうな表情のブラッドを珍しいと思う余裕はフェイスにはなかった。
    黙っているフェイスに、ブラッドは「すまない」と誰が悪いわけでもないのに謝った。
    いや、そんな事を言ってほしいわけではないのだ。今の段階では、フェイスの頭はそういう話にまでたどり着いていないのである。

    「そんなはずないでしょ……」
    「お、おい、フェイス?」

    ぽつりと零れたのは否定の言葉だ。キースが困惑して名前を呼ぶ。だが、そんなキースにフェイスはもう一度言った。
    「そんなはずはない」のだと。

    「だって俺、昨日の夜にビリーに会ったよ。談話室で」

    ビクッと肩を跳ねさせたのは誰だったか。隣にいる金髪の少年かもしれない。

    「眠れなくて、少し散歩をしてて。談話室に行ったら居たんだ。いつも通り元気に俺の事呼んで、話もした。やけに暗いなとは思ったけど、確かにあれはビリーだった」

    それぞれが顔を見合せて、ざわざわと空気が波打ち始める。どういうことなのか、ユウレイでも見たというのか。
    それでもブラッドはため息ひとつでその空気を払った。
    ビリーの遺体は回収され、タワー内に安置されていると。
    サブスタンスの影響であるから今はその原因を調べているところであると。
    そして、確かに身体の活動が停止していることを確認している、と。

    「人間の定義では死亡で間違いない」
    「そんなわけ……」
    「興味深いです。少々お話を伺っても?」
    「ヴィクター!」

    割り込んできたヴィクターに、マリオンが制止の声を掛ける。だが、ヴィクターは構わずに続けた。

    「確かにビリーは死亡した、というのが正しい。けれど何のサブスタンスであるかはまだハッキリとしていないのです。もしかしたら蘇生、あるいは――」
    「出来るか分からないことを言うのはやめろ!」
    「……失礼。確かにその通りです。すみません、私が浅慮でした」

    サブスタンスへの興味と、死んだ人間とその周囲の人々への配慮。かつて大事な人を失ったことのあるヴィクターは、その両方を持ち合わせている。今は少し精神のバランスが取れていないのだろう。マリオンに言われて素直にフェイスへと頭を下げた様子に、けれどもフェイスはどういうことかと食い下がった。

    「その話、どういう、」
    「話はここまでだ。朝の忙しい時間に集まってもらってすまなかった。まだ気持ちの整理がつかないだろうが、できるだけ日常に戻れるよう努めてくれ」

    解散、という言葉を放って、ブラッドは追求するなとばかりに足早く部屋を出ていく。その後を一歩遅れてアキラが追いかけて行ったから、恐らく問いつめに行くのだろう。
    フェイスはただその場で呆然と立っているだけだった。まさかそんなはずはないと、信じられない気持ちしかない。
    部屋を出る際に、誰もがフェイスを気遣ってそして去っていく。促されても、足が思うように動かない。とうとう部屋にひとり残されて、フェイスはその場にへたりこんだ。
    きっとイーストはビリーの遺体と対面しているのだろう。あとで、話を聞きに行こう。実際に会えば、信じられるかもしれない。信じたくは、ないけれど。


    相変わらず明るい月の晩だった。
    フェイスは昨夜と同じ時間に、再び談話室へと向かう。
    いる。
    ひやり、と心臓が冷えるような心地がした。怖いわけではない。いや、やけに暗いそこに浮かび上がる人影は怖いかもしれない。けれど確かにそれはビリーだった。

    「DJ!」
    「やぁビリー。今日もいたんだ?」
    「まぁね。ヒマすぎてェ~」

    幽霊っぽさなんて微塵も感じさせない、いつも通りの明るい声だ。フェイスはいつもと違って、ビリーの目の前の椅子に腰を下ろす。不思議そうなビリーをよく見れば、座っているのにソファの沈みがない。
    やはり、実体は無いのだろう。フェイスは心が苦しくなったことに驚いて、立ち上がった。「明日も早いから」と言いおいて。

    「そう、おやすみDJ」
    「うん、おやすみビリー」

    声は震えていなかっただろうか。
    いつも通りに振る舞えていただろうか。
    もしビリーが気付いていないのなら、教えてあげなければならない。
    いつまでもここにいてはいけないだろう。
    けれどもし、教えてしまったら。気付いてしまったら。ビリーはここからいなくなってしまうだろう。
    そう思うと、とてもではないけれど言えそうになかった。
    今は、まだ。


    数日、そんな日が続いた。毎晩毎晩ふらふらと部屋を出ていくフェイスを不審に思わないわけがない。キースに「夢遊病みたいになってんぞ」と言われて、フェイスはあからさまに嫌な顔をした。キースだって、フェイスの心境はわかる。かつてディノが死んだと聞かされた時の自分のようで見ていられなかった。
    それでもフェイスは談話室へと向かって、まるでそこにビリーがいるかのように話をしている。
    誰もいない、その場所で。
    心配になってあとをつけたキースの負けだった。自分には手に負えないと、そう思うほどに。

    「なぁ、いつまでそうしてるつもりだよ。オレが言えたことじゃないかもしれねぇけど」
    「そうだね」
    「ビリーだって望んでないと思うぜ」
    「ビリーも?」

    ビリーの何がわかる、と跳ね除けるのは簡単だった。けれどフェイスだって分かっている。これは自分のエゴなのだと。
    まだ、大事なトモダチに近くにいて欲しいだけなのだと、こどもじみた、それでも人間らしい願いなのだと。

    「……分かってるよ、そんなこと」
    「フェイス、」

    言って、フェイスは部屋を出た。談話室へ向かえばビリーがいる。月明かりのほとんどない暗い夜だった。
    確かにそこにいるビリーの目の前、指定席みたいになったそこに腰を下ろして、フェイスは言う。

    「きみはもう、いないんだって、」

    今まで詰まっていたものが溢れ出すかのように、声が水に溺れた。
    短い呼吸を、ビリーに聞こえないように繰り返す。
    まるで深海にいるようだ。ふかくくらい闇のなかで、瞳に張った水の膜がゆらゆらと視界を海へと変える。
    少し顔を上げれば、心配したビリーの手がフェイスに向かって伸ばされるのが見えた。けれどその手はフェイスに触れることはない。

    ああ、そうか。
    ――オレは今、深い海の底で溺れるように呼吸をしている。
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    😭😭
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    れんこん

    DONEアカデミー時代ベスティ
    出会い捏造のお話です。
    『こんなことも出来ないのか?お兄さんのブラッドはー…』

    『フェイスくん、カッコいい、全部好き!』

    『…ー兄弟なら、お前も優秀なはずじゃねーの?』

    『ねぇ、私と付き合ってよ、』



    頭の中に交互に響くのは自分への否定と肯定の言葉。いろんなものがごちゃ混ぜになった地面のない世界のど真ん中に放り出されたみたいな心地がして、びくりと体を震わせて目が覚める。
    ……うたた寝ってろくな夢を見ない。
    なんとなく蒸し暑くなってきたから、校舎の隅の木陰で横になっていたけれど、失敗した。
    陰で水分を含んだ芝が制服を湿っぽくして、まるで今の俺の状態を仲間と認めて誘ってくるような。……やだな。
    でもそれでもサボっていた授業に戻ろうなんて気も起きなくて。かといって自分と違ってやる気のあるヒーロー志望の子と同室の寮に戻る気だって起きない。
    好きと嫌いの感情のマーブルチョコは今は受け付けられなくて、女の子に会って気晴らしをしようという気にもならない。
    この無駄にただイライラと……いや、しゅんと落ち込んでいくような気持ちを抱いている時間が無駄だというのはわかっている。

    ……こういう時には音楽を聴くのが良い。
    4895

    れんこん

    DONE第14回ベスティ♡ワンドロ用
    お題「契約」
    フェイビリ風味です
    こ難しく短い眉を寄せたり、緩く特徴的なカーブを描く唇に当てられた手袋越しの指がトントンとそこを叩いて、何かに悩むような考えてるような素振り。スマホを何度かスクロールして、なにかを見つけたのか、寄せられていた眉が緩んで、口角も緩んだ。
    同じような光景は今まで視界の隅で何度も見てきたような気がするけれど、改めてその様子をまじまじと見つめると、なるほど、ゴーグルをして謎めいてわからない印象を抱いていたけれど、案外その表情も、醸し出す空気すら、わりと豊か。

    「ふ〜……、って、なぁにDJ〜〜!?こないだからオイラの顔見過ぎじゃな〜い?……さては〜、今更俺っちに惚れちゃった!?」
    「まさか。……アハ、もしそうだったらどうするの。」
    「エ〜!?絶世のイケメンに言われちゃ考えちゃうナ〜♡」
    「はいはいっと。せめてゴーグル外してから言ったら?」
    「ンッフッフ、ゴーグルの下はベスティ♡にはトクベツ価格でご案内シマース♡」
    「……アハ。」

    ビリーは、変わった。
    今見ていたのもただただ金を巻き上げるためだけの情報でなく、誰かを喜ばせる為の下調べ。おおよそ……、前話していたジェイの子供のことだろうか。謎の胡 3408

    れんこん

    DONE第二回ベスティ♡ワンライ
    カプ無しベスティ小話
    お題「同級生」
    「はぁ……。」
    「んんん? DJどうしたの?なんだかお疲れじゃない?」

    いつもの談話室でいつも以上に気怠そうにしている色男と出会う。その装いは私服で、この深夜帯……多分つい先ほどまで遊び歩いていたんだろう。その点を揶揄うように指摘すると、自分も同じようなもんでしょ、とため息をつかれて、さすがベスティ!とお決まりのような合言葉を返す。
    今日は情報収集は少し早めに切り上げて帰ってきたつもりが、日付の変わる頃になってしまった。
    別に目の前のベスティと同じ時間帯に鉢合わせるように狙ったつもりは特に無かったけれど、こういう風にタイミングがかち合うのは実は結構昔からのこと。

    「うわ、なんだかお酒くさい?」
    「……やっぱり解る?目の前で女の子達が喧嘩しちゃって……。」
    「それでお酒ひっかけられちゃったの?災難だったネ〜。」

    本当に。迷惑だよね、なんて心底面倒そうに言う男は、実は自分がそのもっともな元凶になる行動や発言をしてしまっているというのに気づいてるのかいないのか。気怠げな風でいて、いつ見ても端正なその容姿と思わせぶりな態度はいつだって人を惹きつけてしまう。
    どうも、愚痴のようにこぼされる 2767

    れんこん

    DONE第7回ベスティワンドロ用
    バレンタインイベ、カドスト等を踏まえたお話。
    not カプ
    ハッピーバースデー&バレンタイン

     ここ数日で山のように贈られたその言葉と気持ちに、珍しくちょっと流されてうわついて。

    「……。」

     なんとなく目が覚めてふわふわと浮くような腹のあたりを触る。
    むず痒いような、でも嫌じゃない感覚に、なんとなく高揚させられているのも混じっている。
     ……いろんなことがあったから、かな。

     まだ、日付の変わる手前の時間。
    LOMからの外出続き、祝われ倒しのパーティ続きでさすがに疲れ果てて、帰り着いた途端眠っていたらしい。同室のおチビちゃんはもうおねむの時間だから、隣からすやすやと気持ちよさそうな寝息が聞こえてくる。

     ……いつもガミガミと口うるさいのは変わらないのに、なんだかんだパーティでは生演奏を披露してくれた。パーティのための準備もみんなで考え尽くしたらしい。その時のことを思い出すとまた胃のあたりがふわりとして、ふふ、と口元につい笑みが浮かぶ。……こんな感覚は初めてかも。らしくないけど、たまにはいいよね。
     自分が上機嫌なのを客観的に感じて面白くなっていく。

     ……でも、なんとなく何か変な感じがする。
    ふわふわの中にお腹が空いたような変な感 5277

    れんこん

    DONE第13回ベスティワンドロ用
    お題「祈り」「未来」
    未来捏造のベスティ(notカプ)のお話。
     まるで絵の具をこぼしたみたいな真っ青に塗り込められた雲ひとつない空に、正反対のオレンジ色が映える。
     そこそこ強い風にその髪の毛が煽られて、太陽の光を受けてきらりきらりと光った。


    「……いいの?」

     その相変わらず若干細っこい背中に声をかける。
     すると、その肩が少しだけぴくりと動いて、でもこちらを振り返らずに、ただ青い空を見つめたままだった。

    「いいの。」

     ふ、と一息ついたかと思うと、ビリーの手からぽんぽんといつもみたいに花が溢れ出る。赤、青、黄、白、紫、橙……色とりどりの花には共通点もなんにもなくて、ただ持っていた全ての花をそのまますべて出したというのが正しいのかもしれない。
     その花は強い風に吹かれて花弁になって散っていく。その様は、きれいで、そして寂しい。

     彼と出会って何年経ったろう。
    アカデミーの頃まで含めると、多分最早腐れ縁だねと言えてしまうくらいの年月。
     それなのに噂だけでしか知らなかった彼の父親の葬儀に呼ばれたのは少し意外だった。
     元々重病だったのに、余命宣告よりもずっとずっと長生きしてくれたんだヨ、とぽつりぽつりと聞いたことないトーンでビリーが喋 3822

    れんこん

    DONE第16回ベスティ♡ワンドロ用
    お題「部屋」
    グレイから見たベスティのお話
    ※ビリー出てきません
     ちいさく、キラキラ光るガラス瓶。
    複雑な形にカットされたそれは、ハートの形状を形作っていて、その表面は光が反射しやすくなるようにさらに細工が入っている。
    蓋は黒くシンプルで、根本には濃いピンク色のリボンが巻かれていた。
     中に入っている液体は何色なんだろう。ガラス瓶の色なのか中身の色なのか、隣のスペースからは判別できない。

     わりとナチュラルなテイストで纏められたビリーくんの部屋には少しだけ不釣り合いに思えるような……というか、まるで女の子の持ち物のようなそれが、つい目に入ってくる。
     きっちりと本が並べられたデスクの上にちょん、と置いてあるそれの隣にはなにか小さな音楽プレーヤーみたいなもの。これも、濃いピンク色。ハッキリと存在を主張するそれになんだか動揺して、見なければいいのに目がチラチラとデスクの方に向く。……ううん、友達って……、難しい。


    「ビリー、いる?」
    「ヒィッ!?」
    「……っ!?」

     突然ぱしゅんと音がして部屋の扉が開いて、突然の訪問者にびくっと背中を震わせてしまった。
     なんとなく気になって仕事で留守にしているビリーくんの部屋を勝手に覗いていたから、そのやまし 4368

    れんこん

    DONEビリーが居なくなってしまった話。
    未来ごりごり捏造しています。
    すっかり慣れ親しんでしまったタワー。
    最早実家よりも馴染んでしまうくらいになったそこでの生活。
    パトロールが終わって、後は眠るだけの時間。
    ……今日は夜から出掛けるのはやめよう。

    昔程は毎日のように夜遊びという無茶はしない。
    まぁ頻度がほんの少し減っただけ。特に大きくも変わらない。相変わらず女の子からの連絡は沢山くるしね、むしろ昔よりさらに増えたくらい。
    理由と言えば、少しだけ明日のヒーロー活動のために睡眠を取らなきゃいけないかな、なんて思った時だけ眠るようにしている。
    今日の理由はほんのちょっと、違うけれど。


    最早見慣れてしまった街でパトロールをしていた。
    ただいつもと変わらないその日常で、今日は背景のひとつだったキャンディショップが目に入った。綺麗にまるで花束みたいにラッピングされたロリポップが明るいオレンジ色のリボンで纏められて。恐らく誰かへのプレゼント用か、ただのディスプレイなのか。わからないけど。
    あの時渡したそれにすごく似ていたな、なんて思ったらぽっかり空いていた穴みたいなものに久しぶりに引き摺り込まれてしまったような感覚に陥った。ずっと、その気持ちにわざと知らぬフリ 4821

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