『ベニマルに手首を掴まれるとアザが残ることがあるソウエイ。自分じゃどれだけ強く掴んでみても痕なんて残らないので、これはベニマルの想いの強さの表れかもしれないと思うとそら恐ろしくも嬉しくて胸が甘く疼く。』
だるい身体を何とか動かし身支度をしている時にそれに気付いた。
「…………」
手首をぐるりと囲むようについていたのは赤黒い痣だ。一瞬浮かんだ疑問は蘇った昨夜の記憶でかき消される。
『ソウエイ』
名前を呼びながら。
体の奥深くまで暴きながら。
あの男が寝台へと押さえ込んだ時についたそれだ。
自分とて貧弱な体格をしている訳ではない。それなのに男の手は同じ男である自分の手首をいともやすやすと掴むのだ。
(いつの間にこんなに差がついた)
体格だけではない。
こちらがどれだけあいつを掴もうとこんな痣は付きはしないのだ。
『ソウエイ』
焔を宿した瞳がこちらを射貫く。そこにあるのは他を許さぬ強さ。
「………はっ」
嘲笑ったのは、思い出しただけでふるりと震えた体か。それとも想いの丈でさえ勝てない己か。
ふるりと頭を振って、身支度を終えたソウエイは影の中へと沈んでいった。