蒼い陽炎それはふと視界の端に現れる蒼い陽炎だった。
兄者の長い緋色の髪が揺れるその合間。それは立っていた。
「ーーーっ」
思わず出そうになった声を飲み込む。
けれど記憶の中にあるその陽炎に、ああ、と声が漏れる。
そうか。そこにいたのか。貴方の場所は確かにそこだった。
暫くして理解する。
どうやらその見覚えある陽炎は俺にしか見えないらしい。
その事実に、胸が締め付けられる。
トワ様を優しい瞳で見つめるその頬に。
俺達に笑いかけるその眼差しに。
愛おしげに触れるその褐色の指を。嬉しそうに緩む紫の瞳を。
兄者が見つめる日は来ないのだ。
それでも彼は、兄者の傍らにあり続けるのだろう。
永遠に。