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    ankounabeuktk

    @ankounabeuktk

    あんこうです。オル相を投げて行く場所

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    ミリメートルさんの誕生日によせて。

    暗黙の了解【オル相】 相澤には、深く深く掘り下げれば理由や原因のひとつやふたつあるのかもしれないが、なんとなく、で済ませていることがある。
     寮の階段で、上と下にすれ違うその瞬間。
     誰も見ていない大浴場の脱衣所。
     ミーティングルームの内側。
     場所もタイミングも限られていたけれど、少なくとも察知できる範囲に他の誰もいない時にオールマイトと唇を触れ合わせる。
     始まりがどこだったのか考えてみると思い出せないのは多分酔っ払った自分が仕掛けた悪戯だったのだろう。オールマイトは条件が発動するととてとてと相澤のところに寄って来て、ふに、と唇を押し付けてまた去っていく。
     淫靡さのかけらもないキスは、情報を交換する動物の接触に似ていた。
     いつまでやるんですかとか。
     なんでやるんですかとか。
     喉元まで迫り上がった疑問をいつも飲み下して、狙っているわけじゃない条件が整うのを本当は待っているなんて。
    「相澤くん、ちょうど良かった。今いい?」
     部屋に向かう廊下で背後から呼び止められた。オールマイトは資料を片手に駆け寄って、ここがちょっとわからなくて、と相澤の内側の微かな逡巡に気付かず呑気に質問を始める。
    「あー。ちょっと説明しづらいんで、図でも描きます。中へどうぞ」
     ぺたぺたと体を触りペンがないことを悟り、相澤は自室のドアを指した。
     ドアが開いて、相澤に続きオールマイトが中に入る。ぱたんとドアが閉まる音に、ふと相澤は気付いた。
    (条件)
     それはただの暗黙の了解。
     寮の建物の内側、周囲に人がいない或いは視線を断絶できる環境。真正面にあるひとつだけの窓には夜ということもあり、きちんと遮光カーテンが引かれていて。
    (……いや。さすがに)
     これが質問を装った、条件達成のためのオールマイトの企みのはずがない。
     相澤は引き出しからもう使わなそうな紙とペンを掴んで振り返る。
    「お待たせしました、それは」
     くん、と視界が他人の力によって上向いた。
     驚く間も無くオールマイトの顔が迫って、唇が触れる。言葉を失い瞬きを繰り返す相澤を硬直させておきながら、オールマイトは次の瞬間には資料を広げてテーブルに向かった。
    「相澤くん?」
    「……いえ」
     気を取り直して相澤も腰を下ろし、テーブルの上で図を描きながら説明をする。いくつか質問を繰り返しオールマイトはやがて納得したように頷いた。
    「ありがとう!」
    「ひとつだけ聞いていいですか」
    「ん?」
    「あんた、ここに何しに来たんです」
     なんとなくで済ませていたことには踏み込まないと決めていたのに、そんな言葉が溢れてしまったのはどうしてだろう。
     オールマイトは誤魔化すように笑った。
     その顔が赤かったから、本当に嘘の吐けない人だと思いながら相澤は今度は自分からキスをした。
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     だがしかし。

    「……」
    「……」
    「……」

     春のすがすがしい夜風が流れる大広間では、少しも晴れやかでない男達が三人、円卓に向かって座していた。

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