How to【オル相】 目の前の男はずっと言い訳をしている。
俺は眠気とムラムラの間を彷徨いながら、戦利品みたいに勝ち取った男の手のひらに自分の手を重ね、指と指を触れ合わせては指紋が擦れてじりりと立つ音を聞いてはひとり悦に入った。いっとう長い中指を、テレビで見ていたあの頃はソーセージみてえだなって思ってた今はそれよりはシュッとした端くれだった指を、何かを模した風に指の腹でゆっくりと擦り上げては、深爪気味の白いところがほとんどない爪の微かな引っ掛かりの辺りをしつこく撫でた。
「あ、相澤くん」
「なんですか」
「……君、酔うといつもこうなの」
「あなたこそ、酔っ払いを持ち帰るのが趣味ですか」
「だからそれはその、君が酔っ払ってるから部屋にちゃんと帰れるか心配で」
「心配して、部屋に連れ込んで?ナニするんです?」
酒はだいぶ俺の頭をイカれさせている。
鍵が壊れて俺が俺の秘密をぺろりと見せつけちまう前に理性を取り戻さなきゃいけないのに、オールマイトの手をいいように弄べる時間があまりにも魅力的で。
(この指で、俺ン中を)
掻き回してくんねえかな。
「……どうしていいか、わからないんだ」
ズリネタにしようと手の造形を脳裏に焼き付けていた俺の耳にオールマイトの声が届いた。視線だけで声の主を追う。
熱が、伝染って、いる。
「今の君を誰にも見せたくない。私はどうしたらいい?」
眉を下げて泣きそうに訴えるオールマイト。
そんな顔をされたら、俺こそどうしたらいい。
「キスでもしてみますか」
指を絡めて握り込む。オールマイトはそっとそれに応えた。
ああ、誰が想像できるかよ。
この人がキスの最中に息をしていいことも知らないなんて。