花火(プロット)【オル相】『花火』(付き合ってない)
敷地内は許可された場所以外は火気厳禁である。
つまり、許可を受けていれば良いということだ。
オールマイトがスポンサーからの貰い物だと大量に持って来た季節遅れの花火は、夏休みらしい夏休みを過ごせなかった生徒たちにとっては天からの贈り物思えたらしい。
寮から遠く延焼の可能性の少ない演習場を借りて大量の花火に興じるクラスメイトたち。
監督は居なければならない。
相澤はそれを遠巻きに見ていた。
「参加しないのかい、相澤先生」
わざと敬称をつけて呼んでくるのは皮肉か気紛れか。
貰い物とは言えこの花火大会の大スポンサー様であるオールマイトが瓦礫の石に腰掛けて青春の一ページを眺めている相澤の隣に立つ。
「騒がしいのは嫌いです。火薬の臭いもね」
「夏って感じしないかい?海辺やキャンプ場に行けば夏はみんなこんな臭いがする」
「そうかもしれませんね」
暫し沈黙。
煌めいて燃え上がっては消える花火に照らされる生徒達の横顔。
それを眺める相澤の、穏やかな顔つき。
「……騒がしくないところで見る花火は好き?」
「まあ。嫌いではないです」
「じゃあ来年、うちにおいでよ。マンションの窓から花火大会の打ち上げ花火が綺麗に見えるよ。たくさん料理を作るから、それを食べながら一緒に見ようよ」
未来の約束をしたがらないオールマイトが唐突に紡いだ言葉に、どこか違和感を覚える。
それは多分気のせいではない。
「来年の夏、あんたはここに居ますか」
見上げたオールマイトは、相澤の方を見ずただ口元に笑みを湛えて生徒達を見ていた。
(約束じゃなくて、願いか)
「……来年の夏まで、お邪魔してはいけませんか」
そちらが届かぬところに人参を飾るなら、こちらにはもう少し直接的な手段がある。
イエスとノーの間でどちらともなくゆらゆらと付かず離れずを繰り返して探り合う腹に飽きた。
相澤が再びオールマイトを見上げる。
返答に窮したオールマイトの後ろでロケット花火が連続して打ち上がる。
夜空に真っ直ぐ走る光のように、今この人の胸に飛び込めたのなら簡単なのに、と相澤は思った。