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    kirche_is_dcst

    @kirche_is_dcst

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    千ゲ生産業。左右相手完全固定。千左固定。カプ固定だけど主人公総攻めの民なので千は全宇宙抱けるとは思ってる。逆はアレルギーなので自衛。
    基本フェチ強めのラブイチャ。ワンクッション置いてるけど時々カオスなものも飛び出します。
    受けの先天性・後天性にょた、にょたゆり、パラレル、年齢操作やWパロもあり。みさくら、♡喘ぎ多め。たまにゲがかわいそうなことに。(要注意案件はキャプションに書いてます)
    最近小説AIと遊んでます。
    一時期特殊性癖チャレンジをしてた関係で触手とかなんか色々アレなやつもあります。

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    千ゲ十○国記パロ8

    #現パロ千ゲ(パラレル)
    genparoSenge
    #十○国記パロ

    ぴたり。
    前を行く千空の足が止まって、思わず身構える。不安を余所に、千空からはクク、と押し殺した笑声がこぼれた。
    「 ……なるほどこりゃあ、おありがてぇ。ご親切なこった 」
    怪訝に思って一歩踏み出すと、即座に言葉の意味を知る。
    ── 何か、電流のようなものが足元から脳裏に駆け抜けた。それをきっかけに、膨大な情報が流れ込んでくる。
    一歩進むごと、天地の成り立ち、国の成り立ち、制度の成り立ち。歴史、天子の責務と役割、宰相の責務と役割。天の定めた規範。
    ── 太綱の一に曰く、王は仁道を以って国を治むるべし。
    蓬蘆宮の書庫でも目にした一節だ。
    民は慈しまねばならぬ。虐げてはならぬ。民を売り買いしてはならぬ。奢侈暴虐に耽ってはならぬ。税を重くし、令を重くしてはならぬ。公地を蓄えてはならぬ。それを売り買いしてはならぬ。国政を蔑ろにしてはならぬ。徒らに戦を嗜んではならぬ。仁道と礼を以って国を治めよ。
    王として、台輔としてなすべきこと。なすべからざること。仁道とは何か。礼とは何か。
    目まぐるしい量の情報が、恐ろしいスピードで脳に直接書き込まれていく。

    憑かれたように階を登り、気がつくと滄海が眼下に広がっていた。
    雲の、海。
    「 ……雲海 」
    「 あ"ぁ、こりゃ絶景だな 」
    遠くを見はるかしながら、いつの間にか隣に立っていた千空が感嘆の声を漏らす。

     式典を終えた王と麒麟は、これから廟に入り、天帝と西王母に進香を行い、そこで千空が道を守り民に徳を施すと誓いを立てる。
    そうすると、北方を司る聖獣である玄武が現れ、その背に主従を乗せてこの雲海を渡り、生国……実際に彼らが生まれたのは蓬萊だが、魂の在処という意味でそう呼ぶそうだ……へ降る。

    つまり───────

    ここまでの流れが即位の儀のすべてで、何某かの罰が下されると覚悟していた式典は、何の罰も妨害もなくあっさりと完了してしまったのだ。
     それが、彼の王に天意があったゆえか、それともこの先に何か恐ろしいことが起こるのか、今の彼には判断がつかなかった。
     けれど、階で刻まれた無数の情報……あまりに重い、王の責務。この世界の王は、彼が元いた世界とは異なり、国を統治するだけではなく、王の存在そのものが国を守る要となる。すでに、千空に救われた折、彼が目にした通りだ。
    王は一国の陰陽を調え、八卦を律する。
    つまるところ、王とは国なのだ。
    その存在そのものが国家を鎮護し、百姓を安寧せしめる。国が国として機能するために欠くことのできないメインシステム。
    ……では、もしこの即位が天意に背いていたとしたなら、この国はどうなってしまうのか。
     天意により選ばれた王に永く国を守らせるため、王と麒麟、その側近や州侯は即位、着任と共に神籍あるいは仙籍に叙される。
    加齢も、それと共に止まる。老いも病もなく、丈夫で傷にも強く、滅多なことで死ぬようなことはない。所謂不老不死となるのだ。
    けれどただひとつ。
    王が天意に背いた時にだけ、麒麟は病に罹る。この病を、失道と言う。
    王が前非を悔い、民に徳を施せば、病は去り、また王としての責務を果たすことを許される。しかし、それでも王が非を改めぬ場合は、麒麟が死に、王が死に、国が死ぬ。
     この期に及んでも、選定を後悔はしていない。彼にとっての王は、千空ひとりだった。出会った日から今まで、それは間違いない。
     だが、それが天にとって間違いだったなら。何が起こるのだろう。
    王と麒麟として、主従の命は繋がってしまった。彼に罰が降り、もし万が一命を落とすようなことがあれば、ゲンは自分自身のみならず、彼の王と民を殺すことになる。
    その事実の重みに、身震いがした。
     ……絶対に、それだけは阻止しなければならない。

     千空は冷静で視野が広く、柔軟で、根気強く、情け深い王だ。
    生半なことで天綱に触れることはないだろう。
    彼は人の話を能く聴き、思考し、最適解を手繰り寄せ、それを周囲に納得させるだけの知識と見識、行動力がある。
     実際に、登極当初、先進的な王に諸官は反発や戸惑いを示していたが、今ではすっかり打ち解け、国は上手く機能し始めていた。
    妖魔、妖獣の出没する国境や港の防衛の強化、官庫から民への食糧の供出や水利、田畑の整備、春に向けた穀物の種を天帝より賜り、官民を挙げて植え付けを行ったりもした。
    同時に、先帝の遺した華美豪奢な建造物の数々を解体し、当面の輸入物資確保の財源とした。
     この国は海に面した北国であるため、農耕には今ひとつ不向きであったが、それを補う資源として豊富な玉泉があった。
    玉泉とは文字通り、鉱石、宝石が湧き出る泉であり、種となる石を植えておくことで自動的に鉱石が生成される。悪評高い先帝はその恵みを独占し、己の権勢を示すために根こそぎ掘り尽くしたのだと言う。
    そのために泉は枯れ、建築費用として民に重税が課された。これにより、天意を失った王は、己の宰輔をも失い、最期は失意のまま首を打たれた。……二〇年と少し前の話だ。
    ほどなくして蓬山の捨身木に黄金色の卵果が実ったが、それも突如蓬山を襲った蝕により流され、その行方は杳として分からなくなってしまった。
     この国を襲った一連の不運は最早災害と言ってよかった。民には、長く不遇が続いた。
    それで、未だ新しい王に猜疑の目を向ける者もいる。事情を鑑みれば致し方のないこととはいえ、切なかった。
     千空の治世に対する不安は彼にはない。
    少なくとも、奢侈享楽に溺れ亡んだ先帝と同様の問題は発生しない。
    けれど、まだ登極して間もない若き王に対して一枚岩になるには、時間が足りていないのも確かなのだろう。
    新王がもたらす、未知の技術への漠然とした不安などもあるに違いない。
    それを一つずつ、丁寧に拾い上げ、解消していくのが宰輔たる自分の仕事だ。
     天網恢々、疎にして漏らさず。
    蓬萊でも用いられていたその言葉の通り、天の網の目に不用意に絡め取られぬよう、彼はいつも目を光らせている必要があった。
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